第1188話 なに、コリンヌさんを引きとれだと?
アントーン先生がやってきた。
「ちょっと良いかねキンボールさん」
「なんでしょうか、アントーン先生」
「蒼穹の覇者号の方に空き室は無いだろうか? コリンヌさんを黄金の暁号に泊めてあげたいのだけれど、その、従魔が多くてね」
「え?」
いや、空き室はあるよ、沢山、うん、だけど今晩はガドラガ実習最後の夜で、その、カロルと熱い夜を過ごす予定だったのだが。
「わーいわーいご主人さまと一緒にお泊まり~~」
ライ一郎もヤギ次郎もヘビ三郎もシンクロしてワーイワーイとやっておる。
え、もう泊まる事確定になってるの?
「ガ、ガドラガの街のホテルなどは、そのいかがかと」
「三匹もの従魔をまとめて泊められるホテルは無くてね、どうか一つ、おねがいばかりで心苦しいのだけれども」
アントーン先生に拝まれたぞ。
い、いや、その、そんな事を言いましても、最後のチャンスがですね。
今回は教皇様が泊まったり、ペペロンとグレーテが泊まったり、すやすや寝具で寝落ちしたりで、その、思うように行って無いのですよ、乾坤一擲の最後の晩なので、こう、頑張りたいと思っていたのですが。
「マコト、部屋はいっぱい空いてるじゃない、一晩だけだし、良いと思うわ」
い、いいのか、カロルは、そうですか。
「一緒のベッドで寝ましょう寝ましょう、ね、ご主人様っ」
「いやその」
ああ、いかんいかん、ここでにこやかに、はいよろこんでと言わないと、こやつは不埒な事を最後の晩にやるつもりのエロエロ聖女であるとイケナイ噂を立てられてしまい、薄い本になってしまう。
こまるこまるそれは困るのであって。
「わ、わかったわ、スイートが空いているから、そこに泊まってください、コリンヌさん」
ああ、顔はにこやかに笑っているのだが、内心は世界の理不尽に燃える怒りの炎でいっぱいですよ。
ぐぬぬう。
「わあいわあい、やったあっ」
「がうがーう」
「めめめーえ」
「しゃしゃしゃー」
さすがさっきまで同じ体を共有していたキメラ仲間だ、シンクロ率がパナイ。
可愛いけれど、なんかむかつく。
「すまないねキンボールさん、次回の実習旅行の時は大きめの部屋を予約して従魔たちも入れるから、今回だけお願いするよ」
ベロナ先輩にも頭を下げられた。
「いいなあ、蒼穹の覇者号、中は凄い豪華だって聞くしな」
「いいわねえ、よかったねコリンヌ」
「はあいっ」
コリンヌさんは満面の笑みである。
くっそーー。
和やかに会合は終わり、私とカロルは席を立った。
「晩ご飯食べたらそちらに行きますねえ、ご主人様~~」
「まってるわ」
ああ、やんぬるかなっ。
私は足取りも重く黄金の暁号を去った。
「まあまあ、そんなに気を落とさないで、マコト」
カロルはそう言って私の背中をやさしく押してくれた。
ああ、世の中とはままならない物だなあ。
しくしく。
蒼穹の覇者号に戻った。
「アンヌ、スイートの二号室のシーツを替えておいて」
「かしこまりました、お嬢様」
なんだか、どっと疲れがでたぞ、ベッドにのたりと私は横たわった。
「朝から大変だったからね、お疲れ様、マコト」
「人一人作り直すのは大変だった」
「マコトは良い事をしたのよ、誇っていいわ」
カロルが私が寝転がっているベッドに腰掛けて頭を撫でてくれる。
うん、気持ちがいいね。
寝ちゃいそう。
すやあ……。
「マコト、晩ご飯よ」
「お、あっ、寝てた」
「疲れていたのよ」
二時間ぐらい寝てたっぽい、船窓から見える空はもう暗いね。
ちょっと寝たら体が楽になったな。
ふわあああ。
「さ、行こう」
カロルが手を引いて起こしてくれた。
そのまま手を繋いでラウンジに上がる。
テーブルに向かい合って座ってダルシーの給仕を待つ。
マメちゃんが影から出て来てダルシーにご飯をねだっていた。
「カボチャのポタージュでございます」
良い匂いだな。
「いただきます」
「日々の粮を女神に感謝します」
パクリ、うんうん、アンヌさんはお料理が上手いね。
甘くてほっこりして美味しいポタージュだ。
ダルシーはマメちゃんに煮こごりをあげていた。
ワシワシ食べているな。
早く大きくなって欲しい気持ちと、このお手頃サイズのまま胸元に入れて歩きたい気持ちがせめぎ合うね。
「豚のローストでございます」
おお厚切りのローストポークにソースが掛かっている。
美味い美味い。
パンは丸パンのトーストだ。
幸せ。
サラダも付いていた。
シャキシャキしていて美味い美味い。
「明日でガドラガ実習も終わりね」
「教会のごたごたを片付けていたら終わっていたよ」
「お疲れ様、でも問題はビタリの総本山だから、解決はしてないわね」
「人工聖女計画とか、頭がおかしいとしか思えないよ」
「世界には権力を振るいたいお坊さんが一杯居るのね」
「馬鹿馬鹿しい話だね、死後私有財産が銀貨一枚でも見つかると墓を暴いてむち打たれ、野ざらしにされてしまうのが僧侶なんだけどね」
「そうなんだ」
「だから、教会の仕事に見せかけて贅沢をするんだよ。まあ、そのせいで修道院のワインとか、クッキーとか、お料理とかが発展する面もあるんだけどね」
「世俗も、信仰の場もあまり変わらないのね」
「人間のやる事だから」
まあ、売僧も多いんだけど、立派なお坊さんも沢山いるけどね。
信仰とは難しい物だ
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