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第114話 第二王子を守って、リックさんと無双するんだぜ

 リックさんがメイスを振り回すたびに、馬が倒れ、敵騎士は落馬する。

 落馬した敵騎士もメイスで叩かれて転がり、動かなくなる。

 彼は、なんだか人の形をした大嵐テンペストのようだ。


 ロイドちゃんが私の肩を抱いてきて、なんだよこいつと思ったのだが、手がプルプル震えている。

 ああ、そうか、ロイドちゃんも初陣で緊張してるのか。

 しょうが無いので、手を払ってから、ぎゅっと握ってあげる。

 手汗がすごいね。


「あ、ありがとう」

「大丈夫、リックさんを信じてあげよう」

「わ、わかった」


 リックさんは敵騎士団の初撃をしのぎきった。

 何発かランスでの攻撃が入ったようだが、甲冑のおかげで問題はなさそうだ。


 敵騎馬が大きく回り込むようにして、二撃目が始まる。

 リックさんは悠々とそれを受ける。

 横綱相撲のようであるよ。


 強いなあリックさん。

 王子の護衛に選ばれるだけの事はある。

 決して華麗な戦い方ではない。

 泥臭く防御力と膂力りょりょくにまかせた戦い方だ。

 重く鈍く、堅く地味で、そして強い。


 主に馬を狙う。

 馬の頭蓋を砕き、前足を折り、体当たりをして転がす。

 彼の回りに、何頭もの軍馬が倒れ伏す。


 重戦士の戦い方だ。

 戦車タンクのようであるなあ。


 メイスがガーンガーンと工事現場のような音を立てるたびに、血しぶきが夕空に高く上がる。


「いけないっ、新手ですっ!!」


 ライアンくんが悲鳴のように声を上げた。


 邸宅の東側の路地から、ポッティンジャー公爵家の騎士が二十騎ほど現れた。

 まっすぐこちらに突っ込んでくる。

 やばいっ。


「王子、ライアンっ、目をつぶってっ!」

「おうっ」

「はいっ!」


『ライト』


 私は光球を打ち出し、新手の騎士の前方で六倍で崩壊させるっ。


 パアンッ。


 閃光に包まれて、騎士たちが蛇行し、つぎつぎと落馬していく。

 けけけ、バルスバルス。

 効果は抜群だ。


「すっごいな、閃光魔法」

「残りの騎士っ、来ますっ!」


 前の騎士の影に隠れて閃光を受けなかった奴らが槍を振り上げてロイドちゃんを狙う。


 させるかよっ。


 バリンバリーン。


 私が無詠唱で張った障壁に槍が当たり方向をそらした。

 バランスを崩しながら騎士が通り過ぎる。


 馬の足下に小型の障壁!


 バリン!


 前転する勢いで馬は地面を転がり、騎士は振り落とされ遠くへ飛び出していった。


 お、これは使えるね。

 障壁はチートであるよ。


「マコトっち、強いなっ」

「まかせろっ」

「さすがは聖女さまですっ」


 さす聖いただきましたっ。


「くそっ! 少人数になんたる事だっ!! 王子だ、王子を討てっ!!」


 敵指揮官がいらだった声を上げた。

 いいのかあ、王子とか討つと政治的大問題になるぞ。

 内戦まった無しだぞ。

 戦争って、こうやって始まるんだろうなあ。

 とか、考えながら、私は閃光と障壁を生み出す機械となって、どんどん騎士たちを落馬させていく。


 新手の騎士たちと元の騎士団が合流した。

 リックさんが足をひょこひょこ引きずりながら帰ってくる。


「いやあ、さすがに五十騎はきついですなあ」

「いや、半分は地に伏している、さすがは僕のリックだ」

「へへへ、お褒めにあずかりうれしいですよ、王子」


 のんきだな、リックさんは。

 装甲を打ち抜いて、足に槍がぶっささっているというのになあ。


『ハイヒール』


 患部に手を当てて呪文を唱えると、槍の先が落ちて傷が塞がった。


「こりゃあ助かる、聖女さんと一緒なら何時までも戦えますなあ」

「無茶はやめてね、リックさん」


 肩にも傷があったので、そちらにもハイヒールを掛ける。


「全軍っ、突貫っ!! いくぞっ!!」


 敵指揮官が手を振り上げた。

 残りの騎兵が我々に向けて突撃してくる。


 リックさんに障壁を掛け直し、我々にも掛ける。


「よいこらせっ」


 リックさんがゆっくりと前に出て、メイスを構えた。


 半数は倒れたとはいえ、騎士団が一丸となって特攻してくる姿は威圧的だ。

 恐ろしい魔物のようにも思える。


 リックさんの障壁がバリンと割れて、ランスが彼の肩装甲を削る。

 横なぎに振ったメイスが、馬の首を折り転倒回転させて敵騎士を落馬させる。

 リックさんは騎士団の特攻を受け止めて砕いていく。


 さすがにここまで残った敵の騎士は老練な奴が多い。

 的確に、槍を、剣を、リックさんに当てていく。

 リックさんは最小限の動きでその攻撃を甲冑の堅い部分で受けて、メイスで反撃する。

 ガチャンガチャンと工事現場のような轟音が人と騎馬の間で鳴り響く。


 リックさんが倒れたら、身体強化魔法で担いで、障壁で空の上に逃げるかねえ。

 などと考えつつ、小障壁で騎馬へ嫌がらせをしていたら、ときの声があかね空に立ち上がった。


 何事、と見ると、新しい騎士団がこちらへ爆走してきていた。

 新手? と思ったが、紋章が違う。


「第三騎兵だっ! 助かったぞっ!!」


 第三騎兵団は走りながら槍を構え、敵騎士団の横腹を食い破った。

 ドゴゴンという鈍い音がして、敵騎士が槍に吹き飛ばされて飛んでいく。


 ダルシーが空中から、こちらへ降りてきた。


「おまたせしました、マコトさま」

「良いタイミングだわ、ダルシー」


 私は伸び上がってダルシーの頭をいいこいいことなでた。

 彼女は嬉しそうに目を細めた。

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ……録音魔法ほしいなあ!
[良い点] 『王子だ、王子を討てっ』 おやおやぁ? 建前はどこに行ったのかなぁ? いけませんね! ニヤニヤです!
[良い点] リックさん強いですね! マコトさんも相変わらず凄いです。 いや、そんなに公爵家騎士団という明確な身分を見せながら、正々堂々と王子を討ちとは、最早戦争を始まったじゃないでしょうか!? 両派閥…
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