第1154話 カロルと一緒にタライ村へ
離陸後、ガドラガの周りを大回りで飛行した。
地上で歩いた街を空から眺めると色々な発見があって良いね。
やっぱりガドラガ教会はでかいなあとか、冒険者ギルドもでかいなとか。
敷地面積で解る事もあるね。
あと、ガドラガの街が迷宮入り口脇の池と川を中心にして大きくなっていったのが解る。
「空から見下ろすと綺麗な景色ね」
「地上を歩くと火山性の台地でほこりっぽいんだけどね」
操舵輪を回して、街に続く街道を確かめる。
メインの街道はつづら折りになって馬車道が標高を上げていく感じ。
街道の脇に一直線の徒歩道があって、歩荷さんが雨の中歩いているな。
ところどころ階段になっている歩荷道を下りて行くと深い渓谷に木造の細い橋が架かっている。
ボロいねえ。
対岸は東に抜ける谷沿いの脇街道が村に延びているね。
歩荷さんの流れを見ると、あの村が食糧の集積地みたいだ。
あの村からガドラガまで荷馬車を通そうとすると、やはりボロい橋を馬車が通れる広い橋にして、街道のつづら折りに接続する感じだな。
ボロ橋の近くでホバリングして観察する。
「石橋を渡すとなると、大変そうね」
「そうね、今回は教会がガドラガに迷惑を掛けたから費用の大部分は持たないとなあ」
「総本山に出して貰いなさいよ」
「そうだな、強奪に行くか」
あんまりビタリまで行くのは気が進まないのだが、冬休みに行ってみるかな。
人工聖女計画も気になるし。
「ちょっと村に下りてみる?」
「そうね、雰囲気を感じてみたいわ」
私は操舵輪を回して村の上まで蒼穹の覇者号を飛ばした。
村ではこちらを見つけて人々が右往左往してるね。
村の広場に着陸させた。
こういう時、垂直離着陸が出来る飛空艇は良いね。
前世のヘリコプター感覚だ。
船を下りようとしたら、ダルシーとアンヌさんが現れた。
「おろ?」
「ベルモントの手の者が潜んでいる恐れがございますので」
「あ、そういえばそうね」
「お守りいたします、マコトさま」
「おねがいねダルシー、アンヌさん」
タラップから下りると、村人が歓声を上げた。
「せ、聖女さまとお見受けいたします、タライ村に何か御用でしょうか」
村長さんらしいお爺さんが出迎えてくれた。
「ガドラガの歩荷の見直しをしているの、出発点である、この村を見に来たのよ」
「それはそれは、ありがとうございます。歩荷の冒険者たちも、まあ、元気な姿になりまして、村人一堂、聖女さまのご慈悲に心をうたれておりましたところでございますぞ」
「前任の司祭がご迷惑をおかけしましたね、教会として謹んで謝罪をいたします」
「いえいえ、その、障害のある冒険者にむごい行いとつねづね思っておりましたが、村は食糧取引で潤ってもおりましたので強く抗議も出来ず、我々も同罪であります。聖女さまが謝罪なさる事はありませんですじゃ」
ああ、やっぱりあの歩荷隊の有様は見ていて苦痛だったんだね。
あれを普通に出来るベルモント一味がおかしいんだよなあ。
「村を一通り見たいわ、案内してくれるかしら」
「喜んでご案内いたしますぞ、聖女さま」
村長さんが歩きだそうとしてよろけた。
足に持病がある感じだな。
『オプチカルアナライズ』
ピッ。
リウマチだね。
『キュアオール』
私は村長さんに治療魔法を掛けた。
「……、おおおっ! 足が、足が痛くないっ! せ、聖女さま、なにをなされましたかっ」
「歩きにくそうだったから。ついでに村の病人とか怪我人とかも見てあげるから、案内のついでに教えてくださいね」
「おおおおおおっ、何と言う慈悲深さでございますかっ!! あの哀れな冒険者達もお治しになったと聞きましたが、本当だったのですね」
ああ、爺ちゃん、濡れた地面にひざまずくな、土下座しなさんな。
汚れちゃうよ。
遠巻きに見ていた村人たちがどよめいた。
「ほ、本物の聖女さまだっ」
「ああ、なんと気負いも無く奇跡をなされるのかっ」
「なんというありがたさ、なんという気品」
「あっ、あっ、ひざまずくなっ、汚れるからっ、立礼で良いからっ」
私が慌てて言うと、みな一斉に良い笑顔を見せてくれた。
「気さくなお方だっ」
「これっぽっちも偉ぶらねえっ、なんてお人だっ」
「ありがたいありがたいっ」
うっは、お祈りモードになると長いから村長さんを急かせて村を回ろう。
「もう、立ちなさいよ、村長さん、あーあー、泥だらけじゃない」
ダルシーが出して来たタオルで村長さんの体を拭いた。
「あああ、ありがとうございます、なんというご恩を」
「村を案内してくださいね」
「ははっ、かしこまりましてございます」
村長さんに案内されて村を見て回った。
大きめの市場があって、この地域の農産物を集積したり、運び出したりしてるみたいね。
ガドラガという大きな消費地があるので、交易の村として発展していたようだ。
村と町の間ぐらいの規模だね。
流通は歩荷と馬車の二本立てだ。
生鮮食料品は歩荷で、小麦粉とか穀類、塩、砂糖などは馬車で二日かけてガドラガに上げている感じか。
商業ギルドの窓口もあるようだ。
わりと能率が良くて、どこかの商会が不正をして儲けている匂いはあまりないね。
ついでに村長の案内で病気の人や、怪我人を治療して回った。
大層喜ばれたのであった。
聖女の奇跡は得だねえ。
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