第1150話 パスカル部長はケルピーをテイムする
ケルピーの回りに障壁を張る。
ガドラガに来てから障壁棺をあちこちで作りまくったので、大分慣れたな。
なんでも練習であるよ。
棺は悪漢を捕まえるのに便利だからな。
障壁は強い力を与えるとバリンと割れるのだけれど、普通の生物は硬化ガラスぐらい頑丈さの物を割る力を密着した所からは出せない。
力を使うにも助走というか、距離が要るんだよね。
ぴったりとした障壁の箱から首だけ出している感じに設置した。
障壁は透明だから解りにくいね。
雨粒とか付くと存在が解るんだけど。
色つきの障壁とか作れないかな。
私は手の中で、赤色だけを通す障壁を作ってみる。
音を通さない障壁が作れるのだから、スペクトルの赤だけ通すのは作れるよね。
えいや。
おお、赤い箱が出来た。
こんな感じか。
変化させてみよう、光を半分だけ通すと半透明にならない?
えいや。
おお、グレイの箱に変わった。
では、ケルピーを覆っている箱の性質を変える。
えいや。
「おお、磨りガラスみたいになったな、こっちの方が見やすい」
「いろいろ器用だな、聖女さん」
「なんでも応用だね」
足場系の障壁は目で見えた方が良いな。
解りやすい。
バリア系は透明の方が使い勝手が良いけどね。
ケルピーは障壁に包まれて大人しくしている。
隷属の首輪が効いているようだ。
「それじゃ、隷属の首輪を外すぞ」
「気を付けろパスカル」
「おうよ」
パスカルの立ち位置近くに半透明の足場障壁を発生させる。
「おお、助かる、足場があると楽だな」
パスカル部長は足場にのって隷属の首輪を外した。
同時にケルピーは首を振って暴れ始めた。
が、首をふるぐらいしか出来ないね。
首を出している穴を延長して首も固める。
ケルピーはほぼ動けなくなった。
「おとなしくしろよ、ピンキー、なっ」
パスカル部長が頭を撫でると噛みつこうとするな。
隷属の首輪が無いと気性が荒いもんだ。
「こうやってテイムしますのねえ」
「障壁は大丈夫?」
「割と堅いよ」
パスカル部長は両手の間に魔力の球を発生させた。
それをケルピーの額に付けた。
「ヒヒーン!!」
ケルピーは嫌がって鳴くが、避ける事は出来ない。
『我が愛馬よ、地を駆ける手足となりて、我と共に野を駆け湖を越え、どこまでもゆかん』
騎獣は詠唱が違うな。
「ピンキー、我がしもべとなれっ」
「ヒヒーン!!」
うーん、パスは通ったが、細いな。
抵抗が強いのか。
「パスカル、こいつの名前は本当にピンキーか?」
「え、買った時はそういう名前だったが」
「おまえの心の中に湧いた名前を付けて見ろ」
パスカル部長は目を閉じた。
「お前の新しい名前は、『ジョガー』、わがしもべとなりて一緒にナージャさんを乗せようぜ、ジョガー」
よこしまな気持ちの宣言だけど、まあ本音だな。
あ、ジョガーが大人しくなった。
「そうか、お前の本当の名前はジョガーだったのか、違う名前で呼んでいてごめんな」
「ひひん」
パスを見てみる。
ああ、そこそこ太くなったな。
「よし、良いだろう、聖女さん、障壁を解いてくれ」
「あいよ」
障壁を解いてみた。
うん、ジョガーは大人しくパスカル部長に寄り添っているね。
「ああ、うん、ジョガーの気持ちが伝わってくる、これは凄いな」
「ちょっと走ってきなよ部長、テイム騎乗はすげえぜ」
「おう、行ってくる」
パスカル部長はジョガーに鞍を付けてひらりと跨がった。
「おお、すげえ、自分で歩いてるみたいな感じがする」
「古式テイムだからな、ジョガーの情報がパスカルにも通じてるんだよ、で、おまえさんの意思もジョガーに通じるから騎乗の次元が変わるぜ」
「わはは、これは楽しい、行ってくる」
「まて、傘障壁かけてやるよ」
「お、ありがてえ」
ジョガーの上に障壁をかけてやった。
「じゃあ、行ってくる」
バカラバカラとパスカル部長はジョガーを駆って走って行った。
ケルピーは水属性だから雨は得意なんだろうな。
「思ったより時間が掛からなかったな」
「パスカル部長とジョガーは付き合いが長いからな」
「古式テイムで騎乗は良いな、可能性がある」
グレーテ王女が前に進み出た。
「私も騎獣をテイムしたいですわ、可能ですかしら」
「王女さんか、魔力高そうだな」
「影洞窟行って影動物をテイムして練習すればどうだ?」
「ああ、お母さんに言って、グレーテの好きな影獣分けて貰うよ」
「え、本当、ペペロン」
「うん、他ならないグレーテだからね」
二人は仲良しでほっこりするなあ。
影魔物の騎獣っているのだろうか。
影馬?
パスカル部長とジョガーが戻って来た。
「わははは、聖女さん、障壁は邪魔だ、いらん」
「そうか」
私は障壁を消した。
パスカル部長は自分の荷物からレインコートとヘルメット、ゴーグルを出し、着込んで、またジョガーに跨がった。
「じゃ、行ってくる」
「風邪引くなよ~」
「おうっ」
また、バカラバカラとえらい速度で走って行った。
楽しそうで何よりだな。
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