第1147話 ペペロンたちと晩ご飯を食べる
「うひょー、おいしーっ」
ペペロンがスープを盛大にこぼしながらザッパザッパとスプーンで掬って飲んでいた。
「こら、ペペロン、こぼさないで食べなさい」
「はーい」
アダベルも前はテーブルマナーが凄かったからなあ。
ペペロンは人界に来て間もないからしょうが無いよね。
グレーテ王女がやさしくペペロンに食べ方を教えていた。
私たちは四人でテーブルを囲んで食事を取っている。
今日のスープはポテトのポタージュだね。
とろりとして美味しい。
「宮殿のスープよりも薄い感じ」
「南方はあまり味が濃く無いのよ」
「でもとろとろでおいしーっ」
ペペロンはガンガン食べるなあ。
さすがはドラゴンである。
「昔のアダベルを思い出すわね」
「そんなに昔じゃないけどね」
アダベルは、いつの間にかちゃんと食べるようになっていたな。
人間の子供より物覚えは良い感じだね。
アンヌさんとダルシーがお肉料理のお皿を持って来た。
おお、レストランで使うような鉄板にのっているぞ。
「サーロインステーキです」
ジュウジュウ音がして美味しそう。
「ぎゃあ、美味そう、実際美味い美味い」
「手づかみしないのよ」
手づかみでサーロインをペロリと食べたペペロンの手をグレーテが拭いてあげていた。
なにげに世話好きだね。
「おかわりください」
「すこしおまちください」
ペペロンはフォークで付け合わせのジャガイモと人参をバリバリ食べる。
パクリ。
ああ、やっぱり守護竜牧場のお肉は凄いな。
美味い美味い。
「まあ、美味しいお肉ね、凄いわ」
「懇意にしている牧場のお肉よ」
「うっとりするほど美味しいわ」
「やっぱり美味しいわね」
ペペロンは手持ち無沙汰に丸パンのチーズトーストをかじっていた。
「お、チーズも美味しいね」
「本当ね、これは凄いわ」
美味しい物を食べると充実するなあ。
「所で、なんでまた『跳躍』してきたの」
「それが……」
「ナージャが悩んでいたから」
「ああ、なるほど」
「ナージャが運命の相手をアップルトンで見つけたって言ってましたの、それで夏の競技会に行きたいのだけれど、本当に聖女さまは飛空艇で送り迎えしてくれるだろうかと、悩んでいたのですわ」
「『跳躍』で送る事にしたんだ。王都の竜にも挨拶したかったし」
「ガドラガにいらっしゃるとは思いませんでしたわ。あと帰りの魔力がなくなるとも」
「ごめーん、グレーテ」
「いいのよ、怒ってないわ」
「ありがとー」
カロルがふふふと笑った。
「グレーテ王女もペペロンさんも優しいですね」
「ナージャ良い奴だから。あとマコトにも会いたかったし」
「あれ?」
「ああ、テイムしたのよ、ペペロンの事」
「マコトは凄いわね」
カロルが呆れた声を出した。
しょうが無いじゃないか、なりゆきよなりゆき。
アンヌさんがサーロインステーキのおかわりを持って来てペペロンの前に置いた。
「ひゃっほう、うまうまうま」
今度はナイフとフォークを使ったが、半分に切っただけで口の中に入れた。
大食いだなあ。
ダルシーが煮こごりのお皿を持って来たのでマメちゃんが影から出て走っていって食べる。
「旅行たのしー、明日ガドラガを覗いてから帰ろう」
「帰ったら凄く怒られますわ」
「それは任せたよー」
「ペペロンもですわよっ」
「はーい」
なんだか良いコンビになったわね。
「ジーンの王宮からガドラガまでどれくらい掛かったの?」
「そうですわね、真っ暗な中を、五分ぐらいかしら」
「それだけで?」
「『跳躍』だからー」
それは早い。
蒼穹の覇者号でも二~三時間は掛かるからなあ。
アップルトン王都でも同じぐらいで行けそうだね。
「夏になったら、ナージャを連れてきてよ」
「わかりましたわ」
「ナージャもグレーテも連れてくるよ」
「おねがいね、ペペロン」
「お安い御用さー」
夏の騎乗レースは楽しくなりそうだな。
「そういえば、お相手のパスカル部長はガドラガに来てるよ」
「ほんとうですの!」
「ほんとうか!」
「明日、騎獣のテイムを手伝うから一緒に行く?」
「行きますわ、ナージャにふさわしい殿方か見極めませんと」
「みたいみたいー」
「あら、マコトはお相手知ってるの?」
「あ、うん、まあ、騎乗部の部長だから」
「そうなのね」
あの恋がコリンナちゃんが勝負したくないばっかりに仕組んだ魔法的な物というのは、誰にも言えないのでお墓まで持って行こう。
お肉を食べおわったのでお皿が下げられて、お茶とケーキが出た。
「ケーキはどうしたの?」
「白銀の城号から頂きました。王家からの贈り物だそうです」
「凄いわねえ」
ケビン王子とジェラルドからかあ。
奴らも気が利くね。
クリームたっぷりフルーツたっぷりのロールケーキであった。
「甘くておいしいっ!」
「もう、一口で食べてはだめよペペロン」
パクリ。
「あんまーい」
「高級なケーキね、北極堂のケーキだわ」
この世界は日本の乙女ゲーム世界なのでケーキも日本基準で美味しい。
ふんわりと甘いのよね。
ちなみに本当の中世だと、砂糖バリバリの使うのが上品という事でゲロ甘物体なのである。
乙女ゲーム由来で良かった。
よろしかったら、ブックマークとか、感想とか、レビューとかをいただけたら嬉しいです。
また、下の[☆☆☆☆☆]で評価していただくと励みになります。




