第1146話 晩餐の前に大事件
【お帰りなさいませ、マスターマコト、サブマスターカロリーヌ】
「ただいまー、我が家が一番っ」
「我が家じゃないけどね」
《おやすみ》
鞍を外してあげると、ヒューイは自分で後部ハッチの方に向かった。
エイダさんも自動的にハッチを開く。
知性ある騎獣と気の付く魔導頭脳は便利だなあ。
カロルと一緒にタラップを上がり船内に入る。
蒼穹の覇者号の匂いがするとほっとするね。
「アンヌ、晩ご飯をお願いね」
「かしこまりました、しばらくお待ちください」
アンヌさんとダルシーが現れて飛空艇の奧に歩いて行った。
私たちはスイートルームに入る。
ばふんと自分のベッドにうつ伏せになる。
「今日もよく働いた」
「街と教会は大分おちついたわね」
カロルがソファーに座り込んでそう言った。
カラス元神父も捕まえたし、地上はだいたい片付いたかな。
あとは地下のベルモントを捕らえればトラブルは終了……。
というか、レアキメラ戦がまだだな。
ベロナ先輩に電池付きのフロッティを貸すかな。
切れ味的に今持っている剣よりは良さそうだし。
レアキメラ事件とベルモントがどう関わっているかだなあ。
事故なのか、なにかの目的があって学園の生徒を襲ったのか。
「事故だと思うけどなあ」
「なにが?」
「ベロナ先輩達をレアキメラが襲った件、国の調査が入ったら悪事がばれるわけだから、王立の学園生徒を襲う意味が解らない」
「そうね……、魔獣の制御に失敗して迷宮に逃がしてしまったのかしらね」
その可能性が高いよなあ。
今は乗れるぐらい制御を取り戻したのか。
地下の魔物研究所で支配の研究をしていたらしいしね。
デスワームは操っていた。
だが、オガ太郎であったハイオーガーは操りきれて無かった。
知力の問題かな。
魔王の持つ【支配】が、古式テイムと同じ技術であるなら、あなどりがたいな。
古式テイムは支配じゃなくて、友情な感じだと信じたいけど、どうなんだろうね。
「もうすぐご飯だから寝ちゃだめよ」
「わかってるよ~」
ガドラガの夜も今日で三日目、明日は中日で休日だし、そろそろね、そろそろカロルと愛を深めて、こうね。
うっしっしっし。
「また変な顔で笑ってる」
「そ、そんな事はありませんよ」
ドーン!!
船体が揺れた。
なに?
私は体を起こした。
「なにかしら」
カロルはソファーから立ち上がった。
《わたしが来た!!》
「アダベル? じゃないや、ペペロンか!」
《そうだよー、遊びに来た、グレーテも一緒》
なんでジーンからはるばるガドラガまで?
飛行してきたって一日掛かるでしょうに。
私は部屋を飛び出して廊下を駆けた。
「なに?」
「ペペロンが来た」
「え、影の洞窟でテイムした影竜の子?」
そういや、カロルはペペロンに会って無いんだよね。
ダダダと螺旋階段を上りラウンジに入った。
ラウンジの中は晩ご飯の良い匂いで包まれていた。
「マコトさま、黒い竜が!」
アンヌさんとダルシーが武器を構えて竜体のペペロンと甲板で対峙していた。
「マコトさま、こんばんわ」
「グレーテ!」
ペペロンの背の上にグレーテ王女が乗っていた。
『遊びにきたよ~~、もう一匹の竜はどこ~~?』
「アダベルは王都だよ、飛んで来たの?」
ペペロンはグレーテを下ろすとボワンと煙を上げて人化した。
「『跳躍』してきたっ、マコトのパスに乗ったら出来るかなって試したら出来たよっ」
「『跳躍』?」
「そうそう、私たち影竜は影の亜空間を飛んで『跳躍』できるのよっ、凄いでしょ」
「そんな事もできるの!」
「できーるっ」
ルーラやないかいっ!
私をマーカーとしてワープしてきたのか。
影竜すごいな。
「ところでマコトさま、ここはどこですの?」
「ガドラガ大玄洞にようこそ、グレーテ、ペペロン」
「まあ、あの高名なダンジョンに居るのね、素敵だわっ」
「別のダンジョン、初めてっ!」
「いらっしゃい、グレーテさま。初めましてペペロンさま」
「あら、オルブライトさま、これはご丁寧に、こんばんは」
「よろしくー、影竜のペペロンだよ。わあ、あなた良い匂いがするねっ」
いや、ペペロン、初対面の人の匂いを嗅ぐな。
カロルが良い匂いなのは同感だけどね。
「あ、ご飯の良い匂いもする。お腹空いた、ご飯ちょうだいっ」
「ペペロン、はしたないわよ」
アンヌさんが急いでラウンジに戻っていった。
ナベとか掛けっぱなしだったかな。
「宮殿に帰ってご馳走をたべなさいよ」
ペペロンは空を見上げた。
なによ?
「魔力が切れたので帰れない」
「「「えーっ」」」
「どうしますの、ペペロン、わたくし黙って宮殿を出て来ましたわ」
ああ、ジーンの宮殿は今頃大騒ぎだろうなあ。
「明日には魔力が溜まるよ、今日は泊めてマコト」
「ドラゴンはみんな、後先を考えないわね」
「ごめんなさい、マコトさま、こんなことになるなんて」
「まあ、来てしまったならしょうがないなあ、今日は船で泊まっていきなさい」
「ありがとう、マコト、大好きだよ」
「すみません、マコトさま」
マメちゃんが影から出て、ペペロンの足にじゃれついた。
「おおマメ、元気にしてた? よしよしよし」
「わんわんっ」
ペペロンはマメちゃんを抱き上げて撫でまわした。
まったくドラゴンは考え無しだなあ。
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