第1142話 カロルと一緒にガドラガ鉱泉
鍛冶屋『ダルタロス』から出ると、ゼルダばあちゃんの小間物屋が人だかりしているのが見えた。
儲けろよ、婆ちゃん。
さあて、ベルモント探し隊が地上に上がるまで、もうちょっと時間がかかるな。
オガ太郎にパスを繋いだら、リンダさんがダンバルガムでアーマーホーンをぶった切っている所だった。
装甲が付いたでっかい牛の魔物だな。
お風呂でも行くかな。
また、冒険者ギルドに戻る。
カロルの姿が見えないので錬金室に行くと錬金釜をぐるぐると混ぜ棒でかき混ぜておった。
実家のようなおなじみのカロルの錬金姿であった。
「お帰り、聖剣綺麗になった?」
「ほら」
カロルの前に綺麗になった聖剣フロッティを出した。
「わ、綺麗な剣ね、見違えたわね。すごい彫金ね」
「こうして見ると、もの凄い物よね」
「どうやって見つけたの?」
「『サーチ』で魔力で引っかかった」
「なるほど、マコトは便利よね」
聖女は便利なのだ。
毒も効かないしね。
「錬金はまだ掛かるの? 一緒にお風呂屋さんに行こうよ」
「そうね、これを仕上げたら行こうか」
私は錬金室の椅子に座ってできあがりを待った。
マメちゃんを懐から出して可愛がる。
いつの間にかアンヌさんが出て来てマメちゃんを撫でていた。
マメちゃんは人気者だなあ。
ぼんっと軽い音がして溶液が緑色に変わる。
アンヌさんがポーション瓶に薬液を入れて栓をする。
入れ替わるようにカロルが寄ってきてマメちゃんを撫でた。
「詰め終わったらギルドに卸してね」
「かしこまりました、お嬢様」
カロルと手を繋いで錬金室を出た。
「おう、作業は終わりかい、オルブライト嬢」
「はい、一釜作りました。今、瓶詰め中です。全品卸しますよ」
「そいつは助かる、さっき卸した分はもう売り切れたぜ」
「あら、もうですか」
「一人一本だってのによう、小ずるく二時間したらまた買ってやがるのよ」
「沢山持っていると安心ですからね」
「ほんと、助かるぜ。また頼むよ」
「錬金術師のスタッフも連れてきましたので、店の錬金釜が直ったら生産させますよ。薬草の方を切らさないようにしてください」
「わかった、ちょっと多めに薬草取りの依頼を出しておく」
「おねがいしますね、では」
「んじゃ、またね」
ギルマスに挨拶をしてギルドを出た。
ヒューイに跨がってカロルを引っ張り上げる。
相変わらずの雨脚でざんざか降っているなあ。
二人乗りでヒューイをとっとこ走らせる。
西側の裏路地は飲み屋さんとか娼館とかが多くて色っぽいお姉さん満載だな。
そしてフードを目深にかぶったストライト隊もうごめいておる。
ヒューイを半回転させて奴らの前を塞ぐ。
「なにしてんのおまえら」
「げっ!! 聖女候補!!」
「ち、ちがっ、これは違うぞ誤解だぞマコトさんっ、俺たちは娼館を偵察になぞ来ていないんだ」
「い、いや僕は嫌だったんだけど、どうしてもジェルマンが」
「汚えぞ、ユーグ! 裏切ったなっ!」
何をしてるかなあ、こいつらは。
「ケリーさんに言いつけるぞ」
「そ、それはやめて下さい、怒るとロデムをけしかけられる」
「囓られると痛いんだ、あいつ」
そりゃ痛いだろう。
「あんたたちは、ガドラガ鉱泉に入りに来たのね」
「え? いや……。あ、そうそう、船の風呂は狭くてさっ」
「う、噂のガドラガ鉱泉に行こうかと思ったんだ。決して娼館を覗きに行こうとか思っていません、本当です」
「あ、僕は鉱泉の方がいいなあ」
「そうなんだ、私らも行くから一緒に行こう、ほれほれ」
「え、あ、うん」
「こ、こっちにあるのか」
「諦めよう、ジェルマン、セザール」
「「はあ~~」」
ため息をついた三人組をヒューイで小突いて歩かせる。
キリキリ歩け。
カロルは後ろで笑いをこらえてプルプル震えておる。
「おまえらは入りに来たことあんの?」
「昨日入ったよ、良いお湯だった」
「そっか、わりと有名だしな」
「ガドラガの歓楽街とかヤバイからお姉さんにむしり取られるよ、危ないからやめとけ」
「そ、そんな所に行こうとは思って無いから、ケリーにチクるのだけはやめてください」
ガドラガ鉱泉に付いたので馬繋ぎ柵にヒューイをつないだ。
「そんじゃ入ってくるよ」
《まってる》
「男湯はそっちだ」
「お、おう、ありがとうな」
「う、うん」
「早く入ろうよ」
ユーグさんは僧侶らしく真面目だな。
ジェルマンとセザールは駄目だ。
エロ小僧である。
入り口でお金を払って中に入る。
有料ロッカーを借りて服を脱ぐ。
またダルシーが現れて番をしてくれるようだ。
マメちゃんを彼女に預けた。
「お任せ下さい」
「わんわんっ」
浴室に入る。
今日は知り合いはいないね。
「ゼルダ婆さんの店で聖剣が出たってさ」
「え、マジかい、聖剣があんな因業小間物屋にあったのかい」
「入り口に置いてある一本一金貨のカメに入ってたって、聖女さんが見つけたってさあ」
「さすがは聖女さんだねえ」
冒険者のお姉さんが噂をしていた。
カロルがそれを聞いてフフフと笑った。
かけ湯をして湯船に入る。
あー、今日も寒かったから暖まるね。
やっぱお風呂は良いなあ。
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