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第1138話 ギルドに納品して放課後にする

「はい、さすがはオルブライト様です、聖女様のは……、まあ及第点ですね」


 くそう、カロルの品質に届かないぜ。

 五百ドランク銀貨を貰ってカウンターを離れる。


「はい、キンボールさん、オルブライトさん、単位を獲得です」


 アンソニー先生がチェックしてくれた。


「来年もこの単位は使えるの?」

「いえ、使えません、来年も、また納品してくださいね」


 なんだよ、単位取り損かよう。

 まあ、良いけどね。


 合格となったので、これからは放課後である。

 カロルはギルマスに薬草束を渡されていそいそと錬金室に入っていく。

 これからぐるぐる錬金釜の中身を回すんだな。


「マコトも一緒にやらない」

「やらない、街でぶらぶらする」

「そう、じゃあ、晩餐でね」

「晩餐でねー」


 錬金作業は退屈なので嫌なのである。

 わたしはガドラガの街でぶらぶらするぜ。

 お茶でも飲むかなあ。

 でも、ガドラガのお茶って、あんまり美味しそうでも無いよなあ。


「今日の歩荷終了しました」


 歩荷に出ていた人達がギルドに帰って来た。


「おう、ごくろうさん。聖女さん、祝福してやってくんな」

「わかった、初めての人はホーリーシンボルを見える所に出してね」

「あ、あの昨日祝福を貰った者は……?」

「祝福は一ヶ月ぐらい持つからね、初参加の人だけだよ」

「わ、解りました」

「昨日、祝福を貰ったんですが、シンボルを新調したんですが、その場合は」

「その場合は祝福するよ、並んだ並んだ」

「やったぜ」

「これは毎日シンボルを新調すると、毎日聖女さまの祝福が貰えるってえ寸法か」

「それも有りだな」


 無しだよ、シンボルは結構高いから無駄金使うなよ。


 水差しを貰って、光魔法を溶かし込み聖水に変えて、シンボルを祝福しまくる。

 まあ、聖水を垂らすだけだから、それほどの時間は掛からないね。

 ほどなくして、新規全員のシンボルを聖別し終わった。


「「「「ありがとうございやした」」」」


 ギルドのホールに漢方薬っぽい匂いが漂ってきて、カロルが錬金作業を始めたのが解った。


「なんだ、懐かしい匂いだな」

「薬草を煮る匂いがしねえとなあ、ギルドってやつは」

「オルブライトさまお手製のポーションがギルドの売店に並ぶのか」

「ありがてえありがてえ」


 そうか、昔のガドラガの冒険者ギルドでは、フリーの錬金術師がポーションを作る匂いが立ちこめていたんだな。

 ベルモントが我欲でそれを破壊してしまったのだなあ。

 下らない奴が一人混じると集団は激しく毀損されてしまうのか。

 悲しい事だな。


 私はギルドを出てヒューイの手綱を外した。


「今日はアーケードを歩きたい気分なんだけど」

《わかった、ついていく》


 手綱を離してヒューイと併走してアーケードを歩くことにした。

 今日は左側を歩こう。

 いつも右側を歩いていたからね。

 まあだいたいヒューイに乗って道の真ん中を行く事の方が多いけど。


 木製アーケードを歩くとギシギシいうね。

 お店を冷やかして歩くのは楽しい。

 お土産物屋さんとか、お菓子屋さん、喫茶店、表通りのお店は綺麗なお店が多いな。

 それで、どこも高いな。

 食料品が高いから全体的に物価が高くなるんだな。

 山の上だし、迷宮の門前町だから、みんな我慢しているけど、もうちょっと物価は下げられるよな。


 アーケードで行き交う町の人や冒険者さんたちが気さくに挨拶をしてくる。

 なんだか、世直し大明神みたいな扱いをされている気がするぞ。

 ガドラガ教会が民衆の上にのしかかって居たのだろうな。


 アーケードの対岸で、ケビン王子とジェラルドが歩いているのを見つけた。


「おーい」


 道を挟んでいるので、王子達はふり返り、手を振ってきた。

 頭の上に障壁を作り、道を横断する。

 ヒューイがとっとこついてくるな。


 右のアーケードに飛びこんだ。


「こんにちは、キンボールさん」

「もう実習は終わったのか、キンボール」

「終わったよ」

「マメどのも息災だな」

「わんわんっ」


 ジェラルドが上着の隙間から頭をだしているマメちゃんの頭を撫でると、つられたようにケビン王子も撫でた。


「おまえら、乙女の胸元のワンコを抵抗なく撫でるんじゃない」

「「あ」」


 マメちゃんを影の中に入るように念じた。

 ぴゅっと彼は潜った。


「何をしていたのだ?」

「ガドラガ観光だよ、あんた達は?」

「とりあえず一段落したので、王都に戻る所だ、急いで行政官を組織して、ここへ送り込まねばならない」

「そうかー」

「ガドラガを見て回りたいけど、来年のお楽しみだね」

「その方が良いね、来てくれて色々助かったよ」

「ガドラガは王領だからな、キンボールが大暴れして更地になる前に手を打ちにきたんだ」

「そんな事はしねえ」

「リンダ師が動いたからね、父上が許可してくれたよ」


 そうか、聖騎士団が飛空艇に乗り込み、教皇様まで移動したから、王府もびびったのだな。


「とりあえず来て良かった。元々ポッティンジャーの仕掛けがあった所に教会が腐るとどこまでも腐敗するのだな。悪辣な手口の勉強となった」

「教会を制圧してくれてありがとう。魔族まで入り込んで、気が付かないで来年来てたら何が起こった事やら」

「魔族の狙いは、やはり、お前とケビン王子の暗殺だったのか?」

「なんとなくそんな感じがするね。暗殺して上手くすればドッペルゲンガーで成り代わる計画だったんじゃないかな」


 王家主従は顔をしかめた。


「とりあえず、代官から行政組織から、全部交換するつもりだよ」

「蒼穹の覇者号で行政官と役人たちを運んでくれたまえ」

「いつ頃かな?」

「実習が終わってからで良い、料金の方は……」

「コリンナちゃんと交渉してね」

「わかった、君たちは実習をがんばりたまえ」

「いやあ、単位くれないんだってさー」


 王家主従は笑った。


「まあ、来年の予習にはなるだろう」

「来年、綺麗になったガドラガで一緒に実習しようよ、キンボールさん」

「そうだね、二人も道中気を付けて」

「それでは、また、王都で」

「王都で会おう」

「うん」


 王家主従はギシギシアーケードを鳴らしながら、駐機場の方へ歩いていった。

 いやあ、二人が来てくれたので、いろいろと手早く済んでよかった。

 ありがとうね、ケビン王子、ジェラルド。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ありがとう、王子&ジェラルド( ̄^ ̄)ゞ 更地回避。 カロルちゃん乙乙( ̄^ ̄)ゞ ガドラガ行った筈の蒼穹の覇者号が王都に戻って・・・のあたりで、王家主従が野次馬したか、カロルちゃんか…
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