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第1128話 カロルと並んでガドラガ即売会

 冒険者ギルドを出てヒューイに跨がった。

 元来た道を迷宮入り口まで戻る。

 とっとこと、雨は依然激しいね。


 入り口ゲートの近くでカロルが手を振っていた。


「許可取れた?」

「ええ、貰ったわ、販売ブースを作ってしまいましょう」


 ヒューイから降りて、彼を雨の掛からない屋根の下に繋いだ。


 テーブルを入り口ゲート職員が持って来てくれた。


「錬金薬の販売と聖女さまの治療ですか、冒険者の皆が喜ぶと思います」

「今のガドラガに必要なのは、それだからね」

「おそれいります」


 職員さんは頭を深く下げた。

 気にしなくてもいいんだよ。


 テーブルは前世の即売会に使われるような簡素な物で懐かしい感じもする。

 折りたたみの椅子に座って準備をする。

 といっても、品物を並べるカロルと違って、私は看板を立てるだけで簡単であるね。


「なんかお店屋さんごっこみたいで楽しいわね」

「そうね、お客さんいっぱい来たらいいね」


 私は収納袋から羊皮紙を出して油絵の具も出して看板を書く。


『光ヒールいたします。一回三千ドランク』


 ピンでテーブルの前にペロリと看板を下げる。

 ああ、テーブルクロスがほしいなあ。


「ダルシー、ちょっとテーブルクロスを探してきて」

「かしこまりました」

「二つね」

「はい」


 木床を鳴らしてダルシーはアーケードを小走りで行った。

 ほどなくして白いクロスを持って来て、テーブルに掛けてくれた。

 看板も外して見えるように付け替える。


「良いわね」

「でしょー」


 カロルの方のテーブルはポーションや毒消しをテーブルの上にどんどん並べていた。

 椅子の後ろには木箱で錬金薬の在庫が積まれている。


 ゲートのすぐ外にテーブルを並べたのですごく目立つね。

 良い感じ。

 吹きさらしで寒いので、二つのテーブルのまわりに障壁で壁を作って風よけとした。


「あら」


 カロルが透明な障壁をペタペタ触った。


「後ろも塞いであるから、出たい時は言ってね消すから」

「暖かくて良いね」


 マメちゃんが出て来てテーブルの上に座った。

 よしよし。

 背中をなでなでする。


 ゲートから出て来た冒険者が興味深そうに寄ってきた。


「え、ポーション売ってるんすか……、げっ、オルブライト印じゃあないですかっ、マジ!」

「おおっ、値段が平地と同じだ、コモンカンの水ましポーションの半額!! あのあの、買い占めても良いですか、あるだけっ」

「すいません、一人五本までにして頂けますか、これからオルブライト商会の錬金薬は恒常的に売り出されますので」

「ほ、本当かい学生さんっ、じゃあ、五本ください」

「俺も俺も、ああ、毒消しも、マジックポーションもあるよう」


 おお、さすがにオルブライト印、顧客の食いつきがすごいぜ。

 カロルとアンヌさんがせっせと販売しはじめた。


 私のブースにも冒険者さんが来た。

 眼帯の人だな。


「ここは……? え、治療してくれるんすか、聖女さんが」

「するよう、三千ドランクになります」

「い、いや、俺は怪我してねえんで、はは、でも安いっすねえ」

「怪我してんじゃん」


 私は手を伸ばしておっちゃんの眼帯に手を当てた。


『エクストラヒール』


「……」

「三千ドランクになります」

「……」


 おっちゃんは恐る恐る眼帯を外した。

 右目がぎょろぎょろと動いた。


「見える、えー、見えるぞっ!! 俺のオーガーに潰された目が!!」

「うわあリーダー良かったなあっ!! マジかマジかっ!!」

「か、金を貯めてさあ、エクスポーションを買ってさあ、治そうと、ずっとずっと思っててさあ、ああ、ありがてえありがてえ」

「三千ドランクになります」

「……」


 おっちゃんはお財布をテーブルに逆さにして全部だした。


「全部持って行ってくだせえ、というか、貯金した分も今、持ってまいります」

「三千ドランクってんだろっ!! こんなにいらねえよっ!!」

「まじかー、まじかー」


 パーティ全員が地面にしゃがんで私を拝み出した。

 うるせえ、早くテーブルにぶちまけた金を持って帰れ。


「ななな、なんでも三千ドランク?」

「おうよ、あんた肝臓いかれてんな、『ハイキュア』、はい、三千ドランクになります」

「え、えええっ!!?」

「早く払ってそこをどけ」

「は、はひっ!」


 ジャリンジャリーン。

 はっはっは、私、銀貨の音大好き。

 収納袋からチョコボンボン用の木箱を出してそこに銀貨を入れた。

 うーしししし。


 私のブースとカロルのブースに冒険者の列ができはじめた。

 ダルシーに『ここが最後尾です』という看板を持ってもらって列整理をお願いした。

 アンヌさんも真似をして列整理を始める。


「ほ、本当に三千ドランクで……」

「酒の飲み過ぎ、肝硬変になりかけよ、気を付けてね、ついでに指も治すわ、『ハイキュア』『エクストラヒール』はい、三千ドランクになります」

「あ、ああっ!! 指、指が生えて、あ、ありがとう……」

「三千ドランクになります」

「あ、はい……」


 ジャリンジャリーン。

 わっはっは。


 いやあ、忘れかけていた何かが蘇るようだ。

 くくく、荒稼ぎするぜえっ。


 カロルの方も飛ぶようにポーションが売れていくな。

 はっはっは、まるで壁サークルのようではありませんかっ。


 ジャリンジャリーン。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここがコミケか……
[一言] ガトラガダンジョン、4個の逆四角錐が地面に埋まった形だったりして。
[気になる点] >「酒の飲み過ぎ、肝硬変になりかけよ、気を付けてね、ついでに指も治すわ、『ハイキュア』『エクストラヒール』はい、三千ドランクになります」 そっちがついでなんだ。
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