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第110話 なんだ第二王子のロイドちゃんだったのか

 ダルシーが鬼の形相で拳を引いた。


「私は二度とっ、私の主を殺させないっ!!」


 彼女の拳に竜巻状に何かが集まって行く。

 な、なんだ、あの技は、なんかの奥義っぽい。


 でっかい男は私の片足を持ったまま、ダルシーとの間合いを詰め彼女を抱きすくめた。

 ダルシーの技はゼロ距離では効果が無いのかっ!


「敵ではねえですよ」


 太い声で、大男は言った。


 は?

 ダルシーは拳に何かを竜巻状に巻き付けたまま、いぶかしげな顔をする。


 大男は私の足を放した。


「あのお方の金的をば潰したら、いくら聖女さんでも困るんですよ」


 そう言って、大男は金髪でうごめいている小僧を指さした。

 んーー?


「目がー、目がー」


 金髪小僧はそう言いながら頭を上げた。

 あら、ロイド第二王子だわ。

 なんだい、こんな森の奥で。


 私は王子のそばに寄って、目に手を当てた。


『ハイヒール』


「うわっ、目が治ったーっ、痛くないーっ、そして君は、ああっ、聖女候補のマコトくんっ、マコトくんじゃあ無いか、よかったよかった、無事だったんだね」

「うるせえ」


 思わず、第二王子の脳天にチョップをかましてしまった。


「いたいっ、なにをするだーっ」

「いっぺんに喋らない」

「は、はい」


 ロイドちゃんがしょんぼりしてしまった。


「は、はなしてっ」

「あ、これはごめんなさいよ」


 ダルシーが大男の抱きつきから解放された。


「あんたは良い匂いがするねえ」

「なっ」


 ダルシーが赤くなって、大男をひっぱたいた。


「いったいなあ、ははは」


 なんなんだろうなあ、この主従は?


「なんで、ロイド第二王子がこんな所にいるんですか?」

「いやあ、マコトくんが怪しい二年生に森に誘われて行くのを見て、すわ事件だと付いて来たら、もの凄い閃光で目がくらんでしまったんだ」


 私はライアンと、悪二年生二人の目を治しながら、ロイドちゃんの話を聞く。


「この人は?」

「僕の護衛、リックだよ、すっごく強いんだ」


 ほうほう。

 確かにガタイが良いし、凄く強そう。

 ああ、たしかにロイドちゃんの背景に何回か居たなあ。

 体が大きいから画面から、顔が見切れていたけど。


 華麗に剣を扱うタイプじゃなくて、泥臭く力と耐久力で戦うタイプだね。

 相当強いね。

 まあ、第一第二王子の護衛は近衛騎士団だから、強さは折り紙つきなんだろうけど、リックさんは上に何人も居ないぐらい強いんじゃないかな。


「リックさんちょうだい」

「だ、駄目だよ、お父さんに付けて貰った大事な護衛だし、僕だって気に入ってるんだよ」

「ちえ、けちー」

「君にはリンダ・クレイブルがいるじゃないか」

「リンダさん気が狂ってるから使いにくくてさあ」

「い、いや、そんなわがままを言う子だったのかい、君」


 私とロイドちゃんに褒められて、リックさんは太く笑った。

 良いなあ、実直重戦士さん。


 しかし、ロイドちゃんは綺麗だ。

 お兄さんのケビン王子はすらっとして貴公子って感じなんだけど、ロイドちゃんは可愛いショタ小僧って感じよね。

 まあ、中身はチャラ男なんだけどね。


「しかし、マコトくんは綺麗だね、もっと早くにお近づきになっておくんだったよ。今度王都に一緒に遊びに行かないかい、今、いいお芝居がやってるよ」

「やだよ、めんどくさい、王子は婚約者も側姫候補もいるくせに」

「ちえー、いいじゃんよ、学生の間は恋愛天国なんだよ」


 そう言いながら、肩を抱いてくんな、チャラ男め。

 肘で彼の手をはねのけながら私は立ち上がる。


 ロイドちゃんは遊びと美容のパラメーターが大きくなると出てくる。

 廊下で「マコトくーん」とか言って話しかけられるのな。

 わりとデートを断らないので、攻略難易度は低いほうであったな。


 ロイド第二王子は遊び好きだし、口が上手いので、デートイベントとかは結構楽しい。

 だが、好感度が上がって個別ルートに入ると一変してホラーシナリオになる。


 ロイドちゃんと仲良くなった主人公に嫉妬して、婚約者のジュリエット・キャンベル侯爵令嬢が自殺してしまう。

 あまりの事に、暗くなる主人公とロイド王子だったが、事態はそれだけではすまなかった。

 側妃候補のマドリーン・シンクレシア子爵令嬢とサラ・ケアード男爵令嬢も謎の病気で死んでしまう。


 実は、ジュリエット嬢のお父さん、死霊術師エイブラハム教授が悪鬼の心臓という呪いのアイテムと側姫二人の命を使って、ジュリエット嬢を最強のアンデッド・リッチとして復活させていたのだった。


 ちなみに、悪鬼の心臓を教授に送ったのはビビアンさまであるよ。

 動機は、主人公が憎たらしいので嫌がらせですって。


 悪鬼リッチと化したジュリエットさまは、側姫マドリーン様とサラ様もアンデッドとして復活させる。

 こうして、夜の王都を舞台に、都を埋め尽くすほどのアンデッドの群れと、主人公とロイド第二王子との戦いが始まるのであった。


 というやつ。


 舞台立ては派手なんだけど、まあ、原因はロイドちゃんがチャラ男のせいだしね。

 リッチのジュリエット様は強かったけど、主パラメーターが遊び、美容のルートなので、そんなに戦闘はキツくなかった。

 アンデッドには光魔法のターンアンデッドが効くしさ。


 ちなみにビビアン様は途中でジュリエット様に捕まり、ゾンビになってしまいますな。

 あわれ。


 つうか、あの陰気なサイコ娘のジュリエット嬢も救わなきゃなんないのか。

 呪われてんじゃないのか、この時期の王都は。


 くっそー。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ダルシーさん、必死ですね、昔に大変苦労な経験をして来ましたでしょう。。。 まさか巻き添えにされた第二王子様でしたか。コソコソをしていたけど、一応はマコトさんを心配していたようですね。 しか…
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