第1103話 階段まで行って午後実習は終わる
ヒューイを引いて黄道を歩いて行く。
途中に部屋があったり、ゴブリンがいたり、カピバラが攻めて来たりしたが、皆さんお強いので聖女候補の出番は無い。
ヒューイさんがカピバラさんをブレスで焼き殺したりしてたな。
黄道に入ると結構魔物が出る感じだ。
「さすがにここの三パーティは戦闘力が高いね」
アントーン先生がぱちぱちと拍手をしてくれた。
「当たり前ですわ、うちのロデムちゃんは強いのですっ」
命令さんとロデムくんが胸をはってエッヘンと威張った。
ラクロス三勇士先輩たちもキャーキャー言いながら槍で魔物を突き殺していたな。
ベロナ先輩達は大丈夫かなと思ったけど、意外に顔色も良いし、トラウマは無い感じかな。
「大丈夫ですか、ベロナ先輩、イルッカ先輩、スーザン先輩」
「うん、まあ黄道だしね」
「ええ、死んでしまった、ボルヘとコリンヌをつい目で探してしまって寂しいけど、大丈夫よ」
「問題は青道に入ってからだな、あそこには、良い思い出が、ない……」
イルッカ先輩の顔色が変わった。
そうか、青道で道が崩壊して五階下、十五階に落ちたんだっけか。
自由探検のレアキメラ狩りの時が勝負だな。
「元気を出して、えいっ、『エリアヒール』」
私は三人の先輩にエリアヒールを掛けた。
ヒールは怪我を治すだけじゃなくて、活力とかも蘇らせるんだよね。
「ありがとう、聖女さん、楽になった」
「うん、すごく楽」
「気持ちが軽くなったよ、ありがとう」
「いえいえ」
カロルとカーチス兄ちゃんがニマニマしてんな。
なんだよっ。
「マコトらしいなって」
「マコトらしい」
『聖女の誉れだ』
うるせえ、ホウズめ。
しばらく歩くと下り階段に出た。
ここから黄道の二階層に行けるようだ。
のぞき込むと暗い中に灯りがポツンポツンと見えて、奧から低くゴオオオという音が聞こえてくる。
「あの音は?」
「下り階段の奧から聞こえてくる低い音だね、魔物達が上げる吠え声が反響して響いてくるとか、迷宮自身の呼び声では無いかとか、色々な説があるよ」
おお、なにかワクワクする現象だな。
「さて、今日の実習はここまで、ガドラガ大玄洞をでたら、自由時間だ、ガドラガの街は刺激的だけれども、危ない所も多いからあまり裏通りなどには行ってはいけないよ、メインストリートのお店ならば少しは安心だ」
「「「「はーい」」」」
みんなでお返事である。
しかし、なんというか……。
「なんだか観光ね」
アントーン先生は歩きながら苦笑した。
「まあ、そう言わないでおくれ、オルブライトさん、生徒たちの実力に差がありすぎてね。C組の生徒もいることだし」
「ホルストさん、C組の生徒は自由探検の日はどうしてるの?」
「自由時間ですわ、実習に出れば単位を貰えますからね、船で寝ていたり、街で遊んだりしてますわよ。私はストライト隊の一員として自由探検も潜りますわよ」
「偉いぜ、ケリーそれでこそ、俺の彼女だ」
「あんま危ない道に行きなさんなよ」
「ははは、今回は赤道を潜ってやるんだぜ、難易度最高峰だからな」
「まじか、気を付けなさいよ」
「お、おう、注意して行くぜ」
ストライト隊はリーダーのジェルマンと命令さんが馬鹿なだけで、あとの二人は普通だからな。
危険な所に行きそうになったら止めなさいよ。
来た道を引き返していくと、王立魔法学院の別の三パーティとすれ違う。
お、ヒルダさんパーティがおるぞ。
ライアンとオスカーも一緒だな。
キューちゃんがヒルダさんの肩にいるぞ。
手を振ってすれ違う。
ちっ、オスカーがカロルに投げキッスをしおった。
滅びよ!
カロルが笑ってペシペシと肩を叩いてきた。
「もう、やきもち焼かないの」
「や、やいてないもーん」
「あいかわらず、マコトの感情は解りやすいな」
『勇者・聖女というのは光の力で他人とわずかに繋がっていて、それで気持ちが伝わりやすいという仮説があるな』
げ、マジか、それでいつも考えを読まれるのか?
「そんな事無くても、私はマコトと気持ちが繋がっているからわかるのよ」
「く、くそうっ」
エスパーめっ。
また、王立魔法学園の生徒パーティとすれ違う。
この時期に来ている学校はうちだけっぽいな。
偽中華の芙蓉から武人とか来て無いかな。
知り合いたいなあ。
黄道を抜けて八枚扉の間に戻った。
また、王立魔法学園のパーティがいた。
立て板に水という感じで女の先生がこの部屋の説明をしているね。
でも、C組パーティが多いのかみんな真面目に話を聞いてないね。
バトルドレスは装甲板があったりして格好いいけど、肩が出てるのは危ない感じだな。
入り口回廊を通ってガドラガ出口を通り、大螺旋階段を上がって入場ゲートの広場に出た。
「さて、では午後の実習は終了だ、夕食を食べる者は早めに黄金の暁号に戻る事、あまり危ない通りには入らないようにね。まあ、この時期は雨だからメインストリート以外はなかなか歩けないけどね」
「先生、今日狩った魔石はどうしますか?」
「ああ、学校が引き取るよ。三日目の実習ではギルドに売りに行く所まで実習します」
ダルシーとアンヌさんが出て来てアントーン先生に魔石を渡した。
「幾らぐらいになるのかしらね」
「あの量だと、二千ドランクぐらいか」
「入場料一人分かあっ」
「そりゃ一時間ぐらい黄道を歩いただけだからなあ」
ガドラガ大玄洞というのに世知辛いなあ。
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