第1099話 一緒に組んだパーティが問題で
「なんであんたなんかと一緒の実習なのよ」
「文句があるならアントーン先生に言ってくださいよ」
「わあ、マコトちゃん、マメちゃん、マメちゃんを出して~~」
「今はおねむですよ、ミリアナ先輩」
何と言う事か、アントーン先生が受け持つパーティは、わがベロナパーティと、馬鹿の命令さんがいるストライト隊パーティ、あとラクロス三勇士先輩のパーティであった。
問題児パーティ専門か、アントーン先生は。
「ちい、聖女がいるのか、面倒だな、ベロナ達とも決着を付けたかったんだが」
「自由探検で付けなさいよ」
「よし、そうするぞ、ケリー、セザール、ユーグ」
「当然だわっ」
命令さんは急いで買ってきたのか真新しい皮具足を体操服の上に付けていた。
というか時代的にドロワースとドレスの時代にブルマがあるのは設定がおかしいのではないかと思うのだが、日本製の乙女ゲームの世界なのでしかたが無いのかもしれない。
夏の水着もビキニだしなあ、変な世界だよ。
「聖女さんと一緒なら怪我は心配しなくていいな、助かる」
「聖女さま、大教会でちゃんと指導を受けてきましたよ、ありがとうございます。こんど助祭の試験を受けて良いと言われまして、本当になんとお礼をいえばいいか」
「あら、良かったわね、ユーグ先輩、セザール先輩もよろしくね」
「俺にも挨拶返せよう」
「うるせえ、ジェルマン」
小デブめが、黙っておれ。
「マメちゃんマメちゃん」
「ミリアナ先輩もいつまで泣いてるんですか。というか先輩方はジョブは何ですか?」
「戦士」
「戦士」
「戦士」
ああ、もう、ラクロス三勇士パーティは実用的じゃ無いなあ。
「まあまあ、キンボール君、実習だからね、職業が偏って居ても大丈夫なんだ」
アントーン先生が助け船を出すが、全員戦士って。
ラクロスをやっているからか、全員が槍である。
生徒のパーティって、まあ、こんな物なのかなあ。
ストライト隊の方がまだマシだとは思わなかった。
アントーン先生と共に黄金の暁号を下りる。
障壁回廊を作る関係で一番最初にして貰ったんだよね。
「ここから、駐機場出口まで一直線で大丈夫でしょうか?」
「そうだねえ、他の飛空艇は駐機しない場所だから良いのでは無いかな」
あ、そうだ。
「エイダさん、ガドラガ管制塔に繋げて」
【了解です】
ザザッと雑音が入った。
【こちらはコールサイン000547、ガドラガ飛行場管制塔、蒼穹の覇者号、何か?】
「艇長のマコト・キンボールです。管制塔は、ああ、あそこですね」
私は管制塔に向けて手を振った。
窓越しにおじさんが手を振り返してくれた。
【聖女さんか、何か?】
「雨降りなので、黄金の暁号と蒼穹の覇者号を繋いでいる障壁回廊を出口まで張りたいのですが、問題はありませんか?」
【ああ、それはいい、あ、出来たら管制塔まで張ってもらって、そこから出口まで張ってくれないか、通勤が楽になる】
管制塔まで通路を作って、そこから出口か。
少々距離は長くなるけど、関係役所に利便を図っておいて損はないな。
「ありがとうございます、さっそく張りますね」
【こっちこそ助かる、梅雨の時期はどうしてもな】
私はまず、黄金の暁号の横から管制塔までの障壁回廊をえいやと張った。
【おお、簡単に張れるんだなあ】
「そんなに難しくは無いんですよ」
というか、障壁は応用使用が沢山あってチートだよなあ。
アントーン先生と共に管制塔の下まで来た。
「ここから出口まで張りますね」
【よろしく頼む】
私はえいやと障壁回廊を張った。
「マコトちゃんはすごいなあ」
「マメちゃんも持ってるし」
「でっかいヒューイ君いるし」
ラクロス三勇士先輩たちは暢気だなあ。
ヒューイは大きいけど、障壁回廊の天井に引っかかるほどじゃないね。
街のアーケードは通れるかな?
《濡れても大丈夫》
「私たちが拭くのが大変なのよ」
《そうだったか》
回廊を通って駐機場出口まで来た。
ちょっと一般道があって、その奥にガドラガの街門、その奥から街のアーケードが始まっている。
まあ、ちゃっちゃと回廊を張ろう。
えいやっ。
透明な回廊はできたての時は見えないのだけれど、雨にあたってだんだんと見えるようになっていく。
なかなか幻想的だね。
回廊を通って街門をくぐり、アーケードに到達した。
というか、人間は通れるけど、騎獣は無理だなあ。
《道を行くから、あとで拭いて》
「わかったわかった」
木製アーケードは屋根が張り出していて、雨は掛からないね。
でも歩くたびにぎしぎしいうよ。
街の人が顔を出して真っ白なヒューイを見ていた。
うふふ、うちの子は格好いいでしょ。
「おい、学生、その騎獣を置いてけっ」
髭もじゃの冒険者が出て来て剣を抜いた。
「なんですか、あなたは、私たちは王立魔法学院の者ですよっ」
「うるせえっ、高そうな騎獣を持って歩いてる奴がわりいんだ、よこさないと……」
ダルシーが現れて渾身の力を込めた左フックでヒゲオヤジを雨の地面に叩き出した。
「がはっ」
そのままダルシーはヒゲオヤジにのしかかって無言で殴打をくわえた。
雨が飛び散り一幅の絵画のようであった。
「がはっ、ががが、痛え痛え、ゆるして、ゆるしてくれえっ」
「ダルシー、もう良いよ」
「はい、マコト様」
ヒゲオヤジは雨の道に倒れ込んで私を見上げた。
「せ、聖女?」
「そうだ、私は聖女だ、お前は教会の財産である竜馬ヒューイを盗もうとしたのだ」
「ひ、ひいっ、おゆるし、おゆるしくだせえっ、おゆるしくだせえっ」
「よし、ゆるしてやるから、今後は学生に手を出すな、いいな」
「は、ははあっ」
ヒゲオヤジは濡れた地面に額を付けて土下座をした。
よし、これにて一件落着。
私は収納袋からバスタオルを出してダルシーをごしごしと拭いた。
「ありがとうございます」
「んもう、そこまでしなくて良いわよ」
「いえ、マコト様を舐める奴は全て殺すようリンダ隊長に厳命されております」
「わすれなさいっ」
もー、リンダさんはなあー。
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