第1095話 ガドラガ実習の開会式
私の影からマメちゃんが何事かと首を出した。
ナッツ先輩がそれを見た。
「ぎゃあああっ、可愛いっ!!」
「うお、なんぞこれっ」
「めんこいめんこいっ!!」
マメちゃんはラクロス三勇士先輩たちの勢いにびっくりして影に潜った。
「ああ、ああっ、噂のマメちゃん、出てこい出てこい」
「怖く無いよう」
「でておいでー」
この人達は、もうダルシーの事は眼中に無いようだ。
「先輩方、あとで紹介してあげますから、今は……」
「あーうー、マメちゃん~~」
「絶対ですよっ」
「ああ、モフモフしたいっ」
ダルシーと顔を見あわせて肩をすくめた。
もう、ラクロス三勇士先輩たちは本能で生きてるなあ。
カロルと一緒にカーチス兄ちゃんの近くまで行く。
というか、なんで聖剣ホウズ装備してんだっ、おまえっ。
「おお、来たか」
「なんでホウズも一緒なのよ」
『我とカーチスは一心同体だ、なんら不思議は無いぞ』
やれやれ、実習に聖剣しょって来るんじゃありませんよ。
「カーチスの部屋はどうよ?」
「狭い、六人部屋の三段ベットの一番上だ」
「でかい部屋は取れなかったの?」
「一年生は上級の部屋は取れないとさ。蒼穹の覇者号に移らせてくれ」
「やだっ!」
ざっけんなこらっ。
せっかくのカロルと二人きりなのにっ。
『まあ、がまんしろカーチスよ、真の英雄は安楽を望まぬものぞ』
「まあ、言ってみただけだが」
絶対来るなっ。
お、アントーン先生が舞台上に立ったぞ。
「ええ、今日より王立魔法学園のガドラガ実習の二回目が開始となります。今回は前回とは違い少々実践的な実習が増えて参ります。具体的には四日間で、深度五階の魔物を倒し、魔石を得て冒険者ギルドに売る、までをやります。事故の無いように安全に気を付けて学んでください」
そして、アントーン先生はこちらを見てにっこりと笑った。
「今回は聖心教教会大神殿から聖女候補であるマコト・キンボール嬢にも参加して頂きました。卓抜な回復魔法の使い手ですので今回の実習はより安全となりますね。キンボールさん、どうぞ」
アントーン先生に差し招かれた。
にゃろー、挨拶とか聞いて無いぞ。
私はしぶしぶ壇上に上がった。
「こんにちは、マコト・キンボールです。私は一年生なんですが、ベロナ先輩の狩りに参加するために実習に加わりました。課題実習の四日間はみなさんと共に学習しますので、具合の悪くなった方、怪我をした方はお気軽にお声をかけてくださいね。無料で対処いたしますので」
そう言って私はぺこりと頭を下げた。
「いよっ、金的令嬢~~!!」
「素敵、今回は安心ねっ!!」
「黄金の暁号の食堂も美味しくして~~!!」
それは無理だ、私は食べないからな。
万雷の拍手の下、私は壇上を降りた。
「それでは、それぞれパーティを組んで先生に装備の確認をして貰ってください。着替えは自室でお願いします」
おお、もう授業が始まるのか、早いな。
今日のプログラムを誰かに聞かないと。
「マコトさんっ」
ベロナ先輩パーティが近寄って来た。
「実習の時もうちのパーティに参加で良いよね」
「お願いします、カロルとこいつも」
「こいつ言うな」
『こいつ言うな』
カーチス兄ちゃんとホウズが声を揃えた。
「解った、錬金令嬢に聖剣持ちが参加してくれるとは心強いよ」
「任せてくれっ」
前衛がベロナ先輩とカーチス兄ちゃん、中衛が槍のイルッカ先輩とカロル、後衛が私と、魔法使いのスーザン先輩だね。
なかなか良いバランスじゃないだろうか。
「あと、ヒューイという騎獣と、カマキリのカマ吉と、僧侶ゴブリンのゴブ蔵がいるんですが」
「じゅ、従魔がいっぱいだね、その子達は実習後の自由探検の時で良いかな」
まあ、実習に付き合わせてもしょうが無いか。
「あと、マメちゃんがいますね」
マメちゃんが影から姿を現した。
「「「うわあああ♡」」」
ベロナ先輩とイルッカ先輩とスーザン先輩が歓声を上げた。
スーザン先輩がマメちゃんを抱き上げた。
「うわあ、もっふもふねえ、可愛い~~」
「お、俺にも抱かせてくれ、俺にも」
「次は僕だ」
ははは、マメちゃんの魅力には何人もかなわないのだ。
「とりあえず、今日のプログラムは?」
「ああ、一年生だから実習の栞は無いのか、はい」
イルッカ先輩が『ガドラガ実習の栞』を渡してくれた。
ああ、各回のプログラムが大まかに載っているのだね。
どれどれ。
「一日目、午前、装備確認、昼食、午後迷宮実習、一回目の復習等、かあ」
「二日目からは、午前も午後も実習だね。お昼もお弁当だ。五パーティぐらいが一組になって先生の講義を聴きながら実習だよ」
「四日目までそんな感じなんですね」
「そうそう、五日、六日、と自由探検がある、七日目は反省会をして学園に戻る感じだね」
カーチス兄ちゃんもカロルも寄ってきて栞を見ていた。
「自由時間は無いんですか?」
「毎日夕方まで実習で、晩餐まで二時間ぐらいの自由時間だね、四日目は午前中に授業が終わり、半日自由時間だよ」
「なるほど」
「呑みにとか行くなよ」
「い、行かんよ、何を言ってるマコト」
どうだかなあ。
娼館も駄目だからな。
とりあえず、装備をととのえて、先生のチェックを受けよう。
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