第1083話 ヒューイに乗って厩舎に行く
カロルが危なげなくビアンカ邸基地へと蒼穹の覇者号を着陸させて、バックで格納庫に入る。
「カロル今日はありがとうね」
「良いのよ、飛空艇の操縦は楽しいし」
やっぱり私の嫁は良く出来ていて素敵だな。
私も船長帽を椅子の頭に引っかけて、席から降りる。
螺旋階段を下りて行く。
「あら、そっちに行くの」
「ヒューイを起こして厩舎に入れないと」
「そうなんだ、じゃあ、また晩餐でね」
「またねカロル」
カロルと別れて螺旋階段を降りる。
後部貨物室に入るとヒューイが首を上げてアクビをした。
《ねてた》
「知ってる、ここは居心地がいいのかな?」
《居心地がいい》
ヒューイが立ち上がって伸びをした。
鞍を出してなんとか取り付ける。
影から顔をだしたマメちゃんをヒューイがつついて挨拶をした。
後部ハッチが開いた。
ヒューイに跨がって歩かせる。
マメちゃんが影から出て来て私の膝の間に座った。
「ありがとう、エイダさん」
【いえいえ、一番から四番ハッチ開きます】
船を回り込んでハッチの方に行くと、カロルがちょうど下りてくる所であった。
「じゃあ、またねー」
「また後で」
カロルと別れてゲートをとっとこ走らせる。
マメちゃんがきゃんきゃんと喜んでいるな。
「障壁を張るよ」
《わかった》
羽を外に出すように流線型の障壁のドームを張った。
ぱつぱつと雨粒が跳ねる。
バンバンと羽をはばたかせてヒューイは雨空に飛び上がった。
《雨があまりかからなくて快適》
「わんわんっ」
「なにより」
森の境界を旋回して厩舎へと下りて行く。
着地ー。
「お、おう、おかえり」
「ただいま、パスカル部長」
いつでもいるな、この男は。
「おお、雨の中も飛べるのかあ、へー、障壁かあ、すげえな」
マヌエルが驢馬のロペスに乗ったまま奥から現れた。
「まだ驢馬に乗ってるの?」
「目線が上がるからさ、結構快適だ」
「歩けなくなっちゃうよ」
「そんなには乗ってない、室内には入れないしな」
「驢馬がこんなに機動力があるって俺は初めて知ったよ」
パスカル部長がぼやいた。
「うっは、可愛い奴がいるな」
「マメだ、聖女が影洞窟でテイムしてきた」
なんでお前が紹介するのだ、マヌエル。
パスカル部長はマメちゃんをなでなでしてとろけるような笑顔を浮かべた。
「可愛いなあ。こういう奴をテイムしたいな」
「そう言えば、小物テイムの実験は?」
「あいにくの雨でな」
「明後日はあんたもガドラガ行きでしょ、向こうで何かテイムしてみる?」
「そうだなあ、角兎って所か? スライムとかテイムしてもしょうが無いし」
ガドラガだとそうだろうね。
ゴブリンとかテイムしても困るだろうし。
人型は色々面倒臭そうだ。
「ケルピーをテイムするのはガドラガから帰ってからか?」
「そうなるな」
「マヌエルはどうするの、ガドラガ」
「付いていってもいいのだが、船代と宿泊料高いだろう」
まあ、かなりするな。
往復の飛空艇運賃と一週間の船での宿泊費だ。
一説によると、魔法学園の二年生の学費の半分が迷宮実習の実費だと言うね。
「よし、俺が出してやんよ、マヌエル。お前がいないとテイムが難しそうだ」
「向こうにはクヌート師匠がいるぜ、パスカル」
「どうせ暇だろ、なあに、俺の家は塩の販売で儲けてんだよ」
「海が近いの?」
「いや、岩塩鉱山が領内にあるんだ」
ほう、そりゃ儲かりますな。
意外にお坊ちゃん伯爵令息だった。
将来性にナージャもエビス顔だな。
「んじゃ、連れて行ってくれ、俺もまた師匠に聞きたい事ができたしよ」
「ケルピー持ってけば?」
「その手があるか、貨物室は空いてるかな?」
「事務所で聞いてみなさいよ」
「そうするぜ。噂のクヌート師匠に会うのも楽しみだ」
「結構良い人だぜ、面倒見良いし」
「そうかそうか」
ガドラガでケルピーテイムかな。
大迷宮は結構広いから、騎獣を使う冒険者も沢山いるのだ。
「ああ、あと、鞍を注文できるかな」
「ヒューイ号の鞍か?」
「厩舎に置いておく奴と、私が持ってる奴とあれば便利かなって。ヒューイも鞍無しでこっちにこれるし」
「ああ、そうだな、二人乗りの奴を注文しとくか。あとレース用の単座の奴」
「必要?」
「「絶対いる」」
騎獣馬鹿二人に声を揃えられたよ。
絶対かあ。
そんなにレース用と普通乗り用は違うのかね。
「発注しておく、金はメガネの小さい子に言えばいいか」
「コリンナちゃんに請求書出しておいて」
「ナージャのライバルらしいな、凄腕なんだろうなあ」
「ま、まあね」
運動不足で継続戦闘能力に難がありますけどね。
私は、ヒューイをパスカル部長とマヌエルに任せた。
二人とも手際良く鞍を外してブラッシングをしてくれた。
なんだかんだ言ってこいつらプロだよなあ。
「そいじゃ、またね」
「おう、またなー」
「足下に気を付けろよ」
結構ぬかるんでるから、地面を見て歩かないとな。
私は自分の頭上に半円形の障壁を出して歩き出した。
「あれが便利だよなあ」
「障壁聖女だ」
うるせえ。
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