第1082話 子供達を送って王都へ帰る
蒼穹の覇者号は王都に向けて離陸した。
霧雨の中をどんどん速度を上げて行く。
アダベルがふてくされて床でゴロゴロしていて、子供達も真似をしてごろごろしている。
その間をマメちゃんが駆け巡るというカオスなメイン操縦室である。
カマ吉は大人しくしてるね。
カロルは操舵輪を引き上げて高度を上げていく。
すぽんと雨雲の上に出た。
子供達が歓声を上げた。
やっぱり雲の上は良いなあ。
ワクワクするね。
「まずはホルボス山で、トール王子とティルダ王女と村の三人を降ろしましょう」
「その後、大神殿ね」
やあ、いい食糧の買い付けが出来た。
これで一週間は心配無いね。
さあ、ガドラガ行きが近づいて来た感じだな。
ワクワクするな。
マメちゃんがピョンと脇机に乗り、前方監視態勢に入った。
こいつめーっ。
もしゃもしゃもしゃ。
子犬特有の体温の高さが良いねえ。
前方に大きな金床雲が発生していた。
雷が発生してピカピカしてるね。
【迂回を提言いたします】
「マコト、どうする?」
「危険に飛びこむ事は無いわね。迂回しましょう」
「解ったわ」
カロルは操舵輪を回して進行方向を変えた。
少し南に行ってから、北西に行く感じになる。
あの雲の下は大荒れなんだろうなあ。
ダルシーの持って来てくれたお茶を飲みながら金床雲を観察した。
迂回をしたので、特に問題もなく飛行は進む。
時々、エアポケットに入るのか、がっくんと揺れる時があるが、それ以外は揺れもしないし、快適な空の旅だね。
従魔を持って来た子がマメちゃんに紹介していた。
トール王子のカーバンクルとか、ティルダ王女の角兎とか。
アダベルもトトメスとクロをマメちゃんに紹介した。
セルジュのジャイアントラビットは連れてこなかったのか。
あいつはデカイからねえ。
「最近ミッチーがますます大きくなったんだ、そのうち背に乗れるかも」
「そんなにか!」
「乗ったよ~~」
「でっかかったよ、アダちゃん」
さらに巨大化したのか。
今度見せて貰おう。
【王都上空です、高度を下げてください】
「わかったわ、ありがとう、エイダさん」
【いえいえ】
ホルボス村に着陸するには王都上空ぐらいで高度を下げないといけないのだな。
蒼穹の覇者号は雨雲の中に入って高度を下げていく。
やっぱりこっちは本降りだね。
カメラにパシパシと雨粒が当たる。
雲を突き抜けるとホルボス山が見えて来た。
「やっぱり雨だからホルボス山基地の方に入れようか」
「広場は雨ざらしだからね」
ボインと画面にホルボス基地への進入コースが現れた。
カロルがキリキリと操舵輪を回してコースをトレースして渓谷に入って行く。
基地の発着台で高度を下げて微速前進。
発着台と言いつつ、ここから発進したことは無いな。
基地に来たらだいたいカタパルトだ。
格納庫に着陸する。
学者さんが右往左往しているな。
ハッチを開けてタラップを降ろす。
トール王子、ティルダ王女、村の三馬鹿が下りて行った。
「聖女様、今日はありがとう、楽しかったです」
「お婆ちゃんの牧場楽しかった~、修道院もたのしかったです、また行きたいです」
「聖女さま、あんがと」
「雨降りで今日は暇だったんだー」
「また呼んでくれよ」
「うん、楽しめたならなによりね、またね」
舘の方からジェシーさんが降りてきて、五人を迎えた。
よし、またな~。
アダベルと見送ったあとにメイン操縦室に戻る。
「さて、今日二回目のカタパルト射出だね」
「雨降りだからね」
エイダさんにカウントダウンして貰って、スパーーンと雨空に打ち出される。
王都は目の前だね。
「アダベルは大神殿で降りる?」
「そうだな、クッキーを食べてから帰る」
このクッキードラゴンめ。
大神殿の練兵場に、カロルはふわりと着陸させた。
子供達のために、大神殿への障壁回廊をえいやと発生させた。
「さあ、着いたよ~」
「今日も楽しかったマコねえちゃん」
「マメちゃんもまた遊ぼうねっ」
「わんわんっ」
子供達とリンダさんが下りて行く。
「リンダさん、これを孤児院の女官さんに」
カロルがクッキー袋をリンダさんに渡した。
「わかりました」
「リンダ、一枚くれ、一枚」
「駄目ですよ、我慢してください、守護竜なんだから」
「ちえーっ」
カマ吉も下りて行く。
「楽しかった? カマ吉」
「ぢっぢっ」
そうか、楽しかったか。
また一緒にどこかにいこうね。
みんなが回廊を伝って大神殿に入って行く。
アダベルはカマ吉に飛び乗って走っていった。
みんなが大神殿に渡った事を確認して、回廊を消滅させた。
雨粒がパシャッと音をたてて地面を叩いた。
メイン操縦室に戻る。
やあ、子供が居なくなると寂しくなるねえ。
空っぽになった感じだ。
「ワンワンッ」
マメちゃんが影から出て来て、元気出してよ~、という感じに私の足にじゃれついた。
ありがとう、マメちゃん。
私はマメちゃんを抱き上げて、艇長席によじ登った。
「さ、学園に帰りましょう」
「解ったわ」
カロルは出力レバーを押し上げた。
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