第1080話 みんなでマルコアス修道院へ行く
「マコト、ホルボス村に帰るの?」
「んー? リンダさん、ハナさんとローランさんをガドラガに送って行く?」
「直接ガドラガに入れるのは不味いですね、近くの都市から移動させましょう」
「バタークッキー修道院に行こう!!」
アダベルが提案した。
が、あそこはマルコアス修道院だ。
リンダさんはちょっと考え込んだ。
「確かに、あそこからならばガドラガまで二日ほどですし、悪く無いですね」
「アダベルはクッキーが食べたいだけでしょ」
「それもあるっ!」
それしか無いように思うが、つっこむまい。
「んと、どこかな?」
「エイダさん、マップをお願い」
【了解しました】
ブインとマップに航路が描かれた。
「マコトが持って来た美味しいクッキーの修道院ね」
「そうそう、行きましょう」
カロルはうなずいて出力レバーを押し上げた。
蒼穹の覇者号はふわりと浮き上がる。
牧場の母屋でダシャ婆ちゃんとお孫さん夫婦が手を振っていた。
中庭の障壁回廊を消去する。
いつまでもあっても邪魔だしね。
高度を上げてカロルは操舵輪を回し、船を西に回頭させた。
雨雲を切り裂きながら蒼穹の覇者号は高度を上げていく。
スポンという感じに雨雲の上に出て空は晴れ渡った。
おお、太陽だ~~。
「晴れたーっ!!」
「雨雲の上はいつもお天気~~!!」
「雲がぼこぼこですごい~~」
子供が大騒ぎである。
【高度四千クレイド。水平飛行に入ります】
はあ、なんだか気分がせいせいするね。
「やっぱ空はいいなあ」
アダベルが暢気な事を良いながらジャーキーをモシャモシャ囓っていた。
村の三馬鹿に分けてるな。
親分っぽい。
マメちゃんは影の中で寝ている。
ヒューイも貨物室で寝ているね。
カロルが自動操縦に切り替えて、ふうと一息ついた。
「疲れた?」
「久しぶりだから、でも操縦は楽しいわ」
それはなにより。
ダルシーとアンヌさんがお茶とジュースを持って来た。
ちびっ子たちが歓声を上げる。
「ダルシー、ミルク缶は?」
「一本はキッチンに上げて置きました、もう一本は格納庫です」
「よし、カロルちょっと行ってくるね」
「わかったわ」
アダベルがジャーキーをくちゃくちゃ食べながらやってきた。
「どこ行くの?」
「ミルク缶に時間停止を掛けにいくのよ」
「なーんだ」
アダベルは暴れている子供のところに戻った。
私は廊下に出て、突き当たりまで行って螺旋階段を下りた。
格納庫のドアを開けるとヒューイがミルク缶を枕に寝ていた。
起こさないようにして、ミルク缶に障壁を掛けて時間停止をしておく。
ヨシ。
そのままラウンジまで上がり、ミニキッチンにあるミルク缶にも時間停止をかけておく。
使うのは明後日からだからね。
「助かります」
アンヌさんがお礼を言ってきた。
「なんのなんの、お肉の方は?」
「冷凍する予定ですが、時間停止しますか?」
「そっちの方が美味しいでしょ」
肉の塊が入った戸棚ごと時間停止した。
ふう、時間停止は結構魔力を使うね。
「お野菜は大丈夫かな」
「根菜は持ちますし、葉物は冷蔵してますから大丈夫と思います」
「足りない物は無い?」
「卵が欲しいですね」
あら、村で買っておけばよかったな。
マルコアス修道院でわけてもらおうかな。
クッキー作ってるからあるでしょう、きっと。
螺旋階段を下りて廊下を歩いてメイン操縦室へと戻る。
子供達が暴れてるなあ。
「マコねえちゃん、マメちゃんまだ寝てる?」
「うん、寝てるわね」
「そっかー」
「そのうち起きて顔を出すわよ」
「そうだねっ、子犬は寝るのも仕事だからっ」
ローランさんは、ベンチでハナさんと和やかにおしゃべりしている。
リンダさんはカマ吉の背中を撫でてるな。
なんだろうか。
まあ、気にすると負けだ。
「すべすべして気持ちがいいのです」
「そうですか」
大した事では無かった。
艇長席によじ登るとカロルが目で笑いかけてきた。
カロルと一緒のフライトはなんか久しぶり、かな?
最近は一人で飛ぶ事が多かったからね。
【マルコアス修道院上空にさしかかります。高度を落としてください】
「わかったわ」
カロルは操舵輪をゆっくりと押し込んだ。
雨雲の中に再突入して空が暗くなった。
でも、あんまり降ってないね。
小雨ぐらいだ。
視界は悪いが、マルコアス修道院がもやの向こうに黒く見えてきた。
エイダさんが画面に進入方向と着陸位置を示してくれる。
カロルはその線に沿うように操舵輪を回し蒼穹の覇者号を着陸させた。
「ついたーついたーっ!!」
「バタークッキー修道院!!」
「クッキークッキー」
なんという飢えた難民のような子供達か。
ダルシーに懲らしめさせるかなあ。
時ならぬ飛空艇の着陸に、尼さん達が傘をさしてわらわらと修道院の外に出てきた。
濡れては気の毒だな。
えいや。
と、障壁回廊で船と修道院を繋いだ。
これで安心して降りれるね。
船から下りると、クリスティーヌ修道院長がぱたぱたと走ってきた。
「これはこれは、聖女さま、いらっしゃいませ、まあ守護竜さまに、子供がいっぱいですわねっ」
「バタークッキーを食べにきた」
「違うでしょ」
「おほほほ、すぐ用意させますわね、守護竜さま、みなさまもご遠慮なくどうぞどうぞ」
大歓迎だなあ。
さあ、修道院に入ろうか。
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