第1078話 雨雲を突いて守護竜牧場へ向かう
カロルの操縦で蒼穹の覇者号は一路、守護竜牧場に向けて飛ぶ。
本降りの雨の中、水しぶきを上げて飛ぶ。
んで、メイン操縦室の後ろの方は孤児とアダベルとトール王子とティルダ王女と村の三馬鹿とマメちゃんが走り回っている。
大変やかましいが、まあしかたがない。
子供は暴れるのが仕事だからな。
「マメちゃんまって~~」
「抱かせて抱かせて~~」
「わんわんっ」
マメちゃんは走り回り、捕まりそうになると影に潜って思わぬ所からまた出てくる。
子供達の狩猟本能をいたく刺激する模様だ。
ダルシーとアンヌさんが大人にお茶を、子供達に葡萄ジュースを持ってくるまで大暴れは続いた。
食べたり飲んだりしている間は大人しいのよね。
「にぎやかね」
「子供だからね、見てると元気になるよ」
「それはあるわね」
カロルは操舵輪を調整しながら笑って言った。
前方にカメオ村が見えて来た。
守護竜牧場の近くの農道にカロルは船を降ろした。
雨が結構降ってるね。
牧場の母屋のドアが開いて、ダシャ婆っちゃとお孫さんたち、あとローランさんが顔を出した。
ローランさん太ったな。
「これは酷い、聖騎士がみっともない」
まあ、ほどほどにねリンダさん。
エイダさんにハッチを開けてもらって、障壁回廊をえいやと張る。
子供が多いからね。
「こんにちわー」
「まあまあ、聖女様、守護竜さま、雨の中をようこそいらっしゃいました。まあ、ちびちゃんたちもいらっしゃい」
「来たぞー、婆っちゃ~っ!」
「「「「「こんにちは~~!!」」」」」
「まあまあ、ようこそようこそ……、まあっ」
子供達の後ろのカマ吉を見て、ダシャ婆ちゃんは絶句した。
「大神殿のカマ吉ですよ」
「まあまあ、いらっしゃい、守護竜さまの洗礼式で会ったわね」
「ヂッヂッ」
婆ちゃん記憶力が良いな。
まあ、カマ吉は目立つからな。
ヒューイも後部ハッチから顔を出した。
障壁で回廊を作ってあげると、こっちへトットットとやってきた。
「まあ、ヒューイちゃんも、こんにちは」
《こんにちは》
ヒューイ、念話は通じないぞ。
「わんわんっ!」
「まあ、あなたも初めてね、いらっしゃい」
「私の新しい従魔で、マメちゃんと言います」
「まあ、可愛らしい事、よろしくね、マメちゃん」
「わんわんっ!」
「さあさ、みなさん中におはいりくださいな」
「どうぞどうぞ」
と言っても、ヒューイとカマ吉は母屋に入るには大きいな。
お孫さんが厩舎の方に案内してくれた。
よし、こっちにも回廊を作ろう。
「聖女さまの魔法は便利で綺麗ね、素敵だわ」
「どうってこと無いですよ」
ダシャ婆ちゃんに褒められてちょっと嬉しいな。
牧場の母屋は暖炉で火が焚かれていてなんだか良い匂いがするね。
中も片づいて広い。
子供達がわあっとテーブルに付いた。
「ダルシー」
「はい、マコトさま」
「乱暴狼藉をする子が居たら懲らしめて」
「かしこまりました」
ちびっ子たちの動きがピタリと止まった。
さすがに人のお家だとね。
「まあまあ、いいのよ、子供は暴れるのが仕事ですからね」
「たまには大人しくすることも覚え無いといけないのです」
「聖女様は厳しいのねえ」
お孫さん夫婦が大人にお茶、子供達に牛乳とクッキーを運んできてくれた。
「わ、私も牛乳ください」
「私も」
私とカロルの前にも牛乳が配られた。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
いや、食事じゃないから、食前のお祈りは要らないのだが、まあ、良いか。
日々の粮に違いはないし。
こくん。
おー、これはこれは。
特濃牛乳だなあ。
美味しい。
「わあああっ、美味しいなあ~」
「婆っちゃの牧場の牛乳大好きーっ」
「おいしいおいしい」
よしよし、ダルシーが睨みを利かせているから、子供達も結構大人しいぞ。
「あら、本当に濃くて美味しいわ」
「お口に合えば幸いですよ」
「婆っちゃの牧場の物は何でも美味しい、さすがは守護竜牧場だ!」
「おほほ、ありがとうございます、アダベルちゃん」
さて、お肉の買い付けをしなくては。
「今日はお肉の買い付けにきたんですが」
「あらあら、いかほどご入り用ですか?」
「十人ぐらいが一週間ぐらいなんですけど」
ヒューイやカマ吉もお肉を食べるからね。
人数に入れておこう。
ハナさんが羊皮紙にぱぱぱと計算式を書き始めた。
「一日五百グラムとして、三十五キロぐらいでしょうか」
……?
多くねえ?
一日五百グラムも食べられるもんか?
ま、まあ、多めに買って余ったら障壁で時間停止してもいいけどさ。
人によってお肉を食べる量が違うからなあ。
カーチス兄ちゃんは一回で一キロとか喰いそうだし。
「はい、承りましたわ。ナーゼル準備をして」
「わかったよ、婆ちゃん。聖女さん、待ってて下さい、良い所を用意しますからね」
「あと、牛乳とチーズを頂きたいわ」
「いかほど持ってらっしゃいますか?」
十人分となると塩梅がつかめないなあ。
「四十リットル缶を二つ持っていきますか?」
「ではそれで、缶は後で返すわ」
「よろしくおねがいします。ダルシー、運んでね」
「かしこまりました」
「いや、こんな華奢なメイドさんでは……」
「重拳使いですのでご心配なく」
「はあ、重拳」
まあ、見せて貰えば一発だよ、ナーゼルさん。
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