第1077話 野菜はカマス袋で三つくる
お風呂から出て、ダルシーにブイーンとドライヤーをかけてもらった。
私が終わると、マメちゃん、そしてアダベル、孤児達とドライヤーを持つダルシーは忙しいね。
私も簡易ドライヤーを出して孤児たちの頭を乾かしてあげる。
リーディア団長とガラリアさんが欲しそうな顔をしていたので、一枚ずつあげた。
「わわっ、恐れ入ります」
「う、うれしい、です」
二人はうれしそうに簡易ドライヤーを丸めてブイーンと髪を乾かしていた。
リンダさんはちゃっかりマイ簡易ドライヤーを持っているな。
みんなでホカホカになって廊下に出た。
「ああ、持って来ましたぞ、御領主さま」
玄関ホールに村長さんと村人が大きいカマス袋を持ってやってきていた。
「わあ、沢山持って来たね」
「他ならぬ御領主さまのご所望ですからねっ」
「たんと食べてくだせえよ」
「今年は作付けが良かったんでさあ」
村の三馬鹿もやってきていた。
合羽を着てずぶ濡れだな。
ジェシーさんがバスタオルを持って飛んできて、拭いていた。
「おう、おまいら来たか」
「きましたよ、アダベルオヤビン! お、カマ吉も」
「元気だったか~」
「会えてうれしいよ」
「ヂッヂッ」
三馬鹿に会えてカマ吉も嬉しそうだ。
アンヌさんが出て来て、カマスの中の野菜をチェックしていた。
「足りないもんがあったら言ってくだせえ、すぐ持ってきまさあ」
「十分かと思われます。みなさんありがとうございます」
アンヌさんが検品を終わらせて、そう言った。
「いえいえ」
「なんでもねえですよ」
領地に農村があると色々とお得だな。
王都でこれだけ買うと、結構するよ。
「本当にお金はいいの?」
「いやいや、めっそうもない」
「御領主さまには本当にお世話になってますし、うちのばーちゃんはシャンとして元気にすごしておりますよ」
「村長が取ろうってえなら、王府にリコール請求しまさあねっ」
なんだか嬉しいなあ。
領民からの心づくしのお野菜、いただきますよ。
つやつやなタマネギとか、大きいジャガイモとか、おいしそうだね。
玄関ホールの突き当たり階段から地下に入る。
おじさん達がカマス袋を運んでくれている。
ホルボス基地までみんなで下りて、後部ハッチから入って、ミニキッチンまで野菜を運んで貰う。
ミニキッチンでアンヌさんとダルシーが手分けをしてお野菜を収納していく。
意外に入るものなんだなあ。
魔道冷蔵庫も結構大きいからね。
「これから守護竜牧場に行くんだけど、あんたたちも来る?」
なんかラウンジまで付いて来た村の三馬鹿に聞いてみた。
「いくよいくよ聖女さん」
「ダシャ婆ちゃん優しいから好きさっ」
「あそこのお肉は常識知らずに美味しいから」
村の三馬鹿も参加だな。
私は船を下りて、村長とおじさん三人を見送った。
「みなさん、本当にありがとうね」
「いえいえ、ご旅行を楽しんでくださいませ」
「なんかあったら遠慮無く言ってくださいよっ」
「村人みんな、御領主さまに何かしてさしあげたくて、うずうずしてんですから」
「ちげえねえっ、わははっ」
ああ、私は領民に恵まれているなあ。
ありがたいありがたい。
ハナさんが船に上がってきて、代わりに女官さんが下りていった。
リーディア団長とガラリアさんも基地まで見送りに来てるね。
メイン操縦室に戻る。
三馬鹿も来たのでますます人口密度が高くなったな。
孤児達は床にごろごろと難民のように寝転んでおる。
《もどった》
ヒューイから念話が入った。
(おかえり、今、ハッチを開けるわ)
「エイダさん、後部ハッチを開けて、ヒューイが戻ってくるわ」
【了解いたしました】
ヒューイがドスドスと入って来て、後部貨物室に乗り込むイメージが伝わって来た。
モニターで見ると、体温が上がってるのか、彼の体から湯気がでてるね。
「エイダさん、カタパルトを使うわ」
【了解しました】
フォワーンフォワーンと警報が鳴り、赤いパイロンが光輝いた。
学者さん達が飛び上がり、記録装置を持って右往左往している。
蒼穹の覇者号の上部からアームがガチャコンと船体を保持する。
シャコンシャコンと前方のゲートが開いていきどんよりとした雨模様の空が見える。
「蒼穹の覇者号、発進!」
【発進カタパルト射出シーケンス開始します】
カロルが出力レバーを押し上げる。
エンジンの回転数が上がる音がする。
【3、2、1、発進!】
シュパーンと蒼穹の覇者号はカタパルトで打ち出され雨模様の空に飛び出した。
カメラにパパパパと雨粒が散る。
カロルがキリキリと操舵輪を回して船を回頭させた。
「目標、守護竜牧場」
【了解しました】
マメちゃんが目を覚まして影から出て袖机に乗った。
「うわ、なんだあれ」
「ちっこい、ふわふわっ」
「なんだかめんこい!」
村の三馬鹿にマメちゃんを発見されてしまった。
「新しいマコトの従魔、マメちゃんだぞ、あとで抱かせてやる」
「ほんとうかいっ、アダベル親分っ!」
勝手に決めるな、アダベル親分。
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