第1070話 晩餐を食べながら、カロルと食糧計画をする
「おーい」
「わんわんっ!」
うお、マメちゃんが私の顔をぺろぺろ舐めている。
「晩餐行くぞ」
「うん、おう」
ガドラガ紀行を読みながら寝てしまっていたようだ。
やれやれ。
マメちゃんはベッドで飛び回らないで影に入ってなさい。
ハシゴを降りて靴を履く。
廊下に出て施錠した。
二階の廊下にも、晩餐の匂いが漂ってきているな。
今日はシチューかな。
甘い感じの匂いがする。
階段を降りる。
踊り場の窓から見える外はもう真っ暗だね。
エレベーターホールには派閥のみんなが待っていた。
「お待たせお待たせ」
「そんなに待って無いわよ」
「それは良かった」
カロルが私の影をこしょこしょくすぐってマメちゃんを出した。
そのまま胸に抱えて歩くのであった。
「マメちゃんは良い子ねえ」
「わんわんっ」
マメちゃんを抱いているカロルは絵になるなあ。
うむうむ。
「食堂にワンコを連れてくるのはご遠慮くださいよ」
「わわ、ごめんなさいっ」
「マメちゃん隠れろっ」
マメちゃんはカロルの腕の中から飛び降りて、私の影に潜り込んだ。
「……、まあ、姿が見えなければいいか」
「すまんねえ、クララ。今日の献立は?」
「ポークシチューとポテトコロッケ、トマトサラダ、それに黒パンだよ」
「おお、ポーク」
ポークのホワイトシチューのようだ。
美味しそうだな。
私はトレイに料理のお皿を取って、ケトルから冷めたお茶をカップに注いだ。
トレイを持って席に付く。
ああ、良い匂い。
マメちゃんが影の中から私の足にじゃれつくが君は隠れていなさい。
「怒られちゃったわ」
「あまりおおっぴらに連れ込んではいけないようだね」
そういえば、命令さんもロデム君は持ち込んでいないな。
私の視線に気が付いた命令さんに、イーっとされた。
子供か、あんたは。
みなが揃ったので、お食事のご挨拶である。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
パクリ。
んーー、ほんのり甘くてミルクの風味がしてホロホロ肉で美味しい。
ホワイトシチュー大好き。
コロッケも熱々揚げたてだね。
ツバメ食堂のソースが掛かっている。
おいしいおいしい。
マメちゃんが思念で催促してくるので、豚肉を一切れ影の中に落とした。
おいしいおいしいという気持ちが伝わってくるね。
時々、ダルシーがマメちゃんスペシャル肉煮こごりを食べさせているのだけれど、すぐお腹が空くらしい。
子犬の世話は大変なのだ。
トマトサラダもシャキシャキして美味しいな。
「そういえば、蒼穹の覇者号に食糧を積み込まなくては」
「あ、そうね、私と、マコトと、アンヌと、ダルシーの分、あと、マメちゃんと、ヒューイくんの分かな」
結構な大所帯だなあ。
ヒューイが沢山食べそうだ。
《お肉を積んで、お肉》
(はいはい、守護竜牧場に買いにいくよ)
《あそこのお肉好き》
「ヒューイはお肉が食べたいってさ」
「沢山積まなければならなそうね。お肉とお野菜が要るかしら」
「アンヌさんにも聞いて見よう。一週間行ってるから結構必要だよね」
「アダベルは来るのかしら」
「あいつが来ると食糧が倍要るなあ、だけど、どうだろう、一週間、ホルボス山に行けないとなると嫌じゃないかな?」
「アダベルはお友達思いだからね」
あいつは、意外と親分気質なんだよね。
「ヒルダさん、二年生は食事はどうしてるの?」
「黄金の暁号の食堂ですね。味は、まあまあです」
「まあまあですの?」
「学校の行事ですものねえ」
一週間、まあまあな食事はちょっと辛そうだなあ。
でも二年生になったら黄金の暁号だからなあ。
覚悟しないと。
「ガドラガ実習かあ、来年が楽しみだ」
「わっしも早く行きたいみょんなあ」
二年になったらみんなで迷宮実習か、なかなか楽しそうだな。
「コリンナちゃん、ガドラガの教会で悪さしていそうな奴がいるんだけど、帳簿とか取引の動きとか調査しに一緒に来てくれない?」
「ぜったいヤダ、一週間も必要の無い迷宮になんか行けるか」
くそう、ベルモント司祭の件、コリンナちゃんに調べてもらいたかったが、断られた。
教会から経理系の人を査察に回してもらうかな。
「教会が悪さ?」
「なんかポーションの取引を絞って、教会での治療を増やしている感じで、オルブライト商会はガドラガに入ってないの?」
「あそこはポッティンジャー系の錬金薬商会が入っているから、縄張り的にうちは入れないのよ」
ああ、それでか、ポッティンジャー系かあ、怪しいなあ。
なんか集金機関が作られている気配があるんだよなあ。
「黄金の暁号の売店には私のポーションとか卸してあるから、学生は安く買えるはずよ」
「おお、学校に強いオルブライト商会だ」
「教育機関は利幅が小さいけど、数は出るからね」
喋っているうちに完食してしまった。
食器を返却口に持って行く。
帰って来るとダルシーがお茶を入れてくれていた。
「ダルシー、マメちゃんのご飯の準備は」
「はい、整っておりますよ」
「えらいえらい」
「お任せ下さいっ」
ダルシーは花のように笑った。
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