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第1066話 午後は錬金授業である

 さて、月曜日の午後は待ちに待った錬金授業である。

 相変わらすサーヴィス先生はよれよれであるな。

 先週は毒消し薬を作ったが、今週は何であろうか。


「本日はまた実習、麻痺消し薬を作ります~」


 おお、状態異常消し薬の一つだな。

 状態異常には【毒】【麻痺】【石化】【眠り】【混乱】など色々あるが、まあ、私なら『キュア』で大体治せる。

 【石化】がちょっとやっかいだけど、『ハイキュア』で一つ。


 材料は気付け草というなんかツーンと臭い草であるな。


「臭いですわっ」

「なんて匂いなのかしらっ」


 御令嬢生徒さん達はとても嫌がる系の実習だ。

 うちの班は、カロルと私とコリンナちゃんと、西部の三人なので、まあ、黙々と気付け草を刻んでいる。


「気付け薬を煮ると匂いが服に付くのよね」


 マメちゃんが影から出て来て、床に落ちた気付け草をクンクンと嗅いで、嫌な顔をした。


「わんわんっ」

「お、おおおっ!」


 あ、いかん、マメちゃんをサーヴィス先生が見つけたぞ。


「こ、このめんこい生き物は何かねっ」

「新しいペットのマメちゃんですよ」

「わんわんっ」

「ほわあああっ、さ、触ってもいい?」

「抱っこしてみますか」

「い、いいのかいっ」


 私はマメちゃんを抱き上げて、サーヴィス先生の腕の中に入れた。


「ほわあああ、モフモフふかふかだねえ、君は、マメちゃんというのか、よろしくねえ」

「わんわんっ」


 またマメちゃんファンを増やしてしまったな。

 ふふふ、マメちゃんは罪なワンコだぜ。


 サーヴィス先生はマメちゃんを赤ちゃんのように抱いて各班を回って指導している。


 気付け草を刻んで、水を入れて、錬金釜を加熱した。

 もわーっと、酸っぱい匂いが漂って、臭い。


「えっほえっほ、これはキツイな」


 釜を攪拌していた、コリンナちゃんが咳をした。


「気付け草の匂いはキツイから直接吸い込まないようにね、あと、換気魔導具を起動しておくように」


 錬金釜の上には換気用の魔導具があって、それのスイッチを入れると、ブイーンと煙が吸い込まれていささか楽になった。


「それでも臭いね」

「薬液になると匂いがしなくなるから、我慢よ」


 カロルがコリンナちゃんを励ました。


「気付け草を生で囓らせたら気が付くんじゃね?」

「そういう運用もあるわ」


 あるんかいっ。

 麻痺消し薬に変化させるのは、薬効を広げるのと持ち運びが便利だからだろうね。

 【混乱】とか【眠り】とかなら、気付け草そのままでも行けるのだろう。


「麻痺消し薬の良い所はあまり腐らないので一回作れば一年ぐらいは持つ所だね」


 この臭い成分に殺菌効果があるっぽいな。


「わんわんっ」


 あまりに室内が臭くなったので、マメちゃんがサーヴィス先生の腕から飛び出して、私の影に潜った。

 犬は嗅覚が優れているからキツイだろうね。


「ああ、マメちゃんが、マメちゃんが~~」


 サーヴィス先生は世界が滅んだような悲しげな表情を浮かべた。

 そんなにかっ。


「ひひひ、キツイキツイ」

「悪いなあ、変わってやれないんだ」

「変わろうか、コリンナ」


 私が魔力を入れると光麻痺解消薬になるからな。

 どんな感じになるのだろう。

 石化も解けそうだが。


 コリンナちゃんはギブアップして、カロルに混ぜ棒を渡した。

 カロルは収納袋からマスクを出してぐるぐる攪拌している。


 ぼわんと青い煙が出て、薬液は黄色く色を変えた。

 匂いもしなくなったね。


「味はどんなもん?」


 カロルがポケットからティースプーンを出して薬液を掬いこちらに出した。

 舐めろともうすか。

 パクリ。

 ぐっはー、エグい味だなあっ!


「ちょっとで麻痺は治るから、あまり減らない薬なのよ」

「そうだな、一回作って小瓶に入れておけば、しばらく有るぞ、麻痺を使ってくる魔物もあんまり居ないしな」


 そうなのである。

 バンパイヤとか、麻痺蛇とかでも無い限り、麻痺消し薬は出番が無い。

 でも、そういう魔物が出るダンジョンとかには必要な薬なんだな。

 地味な薬である。


 みんなで手分けしてガラス瓶に詰めていく。


「はいー、また時間停止するよー」

「わ、地味なお薬が半永久的に残るのね、それは便利だわ」


 私の班のテーブルに各班の薬瓶が集まった。

 サーヴィス先生がこっそり関係の無い薬瓶も置いているが、まあ、よかろう。


 薬瓶の群れ全体に大きな障壁を被せて、瓶以外の部分の障壁を消す。

 よし、あっという間に時間停止瓶のできあがりだ。


「すばやいねえ、魔力消費は?」

「結構取られますが、私は魔力量が結構大きいので」

「いいねえいいねえ、あと、マメちゃんをまた出しておくれ」


 もうしょうがないなあ。

 私は影からマメちゃんに出るように伝えた。

 マメちゃんは元気よく飛び出してきて、サーヴィス先生の腕の中へジャンプした。


「うはー、かわいいかわいいっ」

「先生、私にも私にも抱かせて~」

「駄目だ、マメちゃんは私の物だっ」


 先生……、大人げないですよ。


 よし、これで、麻痺消し薬もゲットだぜ。

 時間停止したそれを私は収納袋に入れた。


「マコトは要らないと思うけどね」

「まあそうだけど、一応」


 人生、何があるか解らないからね。

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[良い点] マジでマメちゃんブームですね~。影竜の一件でアップルトンとジーンの関係がそれなりに改善→ガドラガに行き易くなったら、テイムを頑張る生徒が増える(もしかしたら教職員も)かも?···おい皇国、…
[良い点] マメちゃんはめんこいのぅ(*´꒳`*) [一言] 「気付け草の匂いはキツイから直接吸い込まないようにね、あと、換気魔導具を起動しておくように」 ・・・もう少し早く言おうよ、先生。 『人…
[良い点] マメちゃんめんこい
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