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第1061話 ナージャに呼び止められる

 蒼穹の覇者号に戻るため、中庭への回廊を歩いていると物陰から声がかかった。


「今回は蛇メガネは居ないのか」


 ナージャであった。


「今日は突発的に来たから居ないよー」

「そ、そうか、奴には首を洗って待っていろと伝えろ……」

「……」


 なんかモジモジしてやがるなこいつ。


「わかった」

「あー、それとだな、そのー、パスカルさまは、その何か言って無かったか?」

「そうだなあ、ウキウキしていたぞ、あと、夏に大会の結果を出さないとって意気込んでいた」

「え、あ、そ、そうなのか、ふーん、ふーん」

「だれか、意中の女性に騎乗大会の優勝を捧げるつもりじゃないのかな」

「そ、そうかそうかっ」


 ナージャは解りやすく真っ赤になった。

 もー、乙女だなあっ。


「ナージャさんは将来、どうしなさるおつもりなの?」

「ど、どうって、どうだ? マーラーの娘」

「アップルトンに輿入れなさるのか、殿方を婿養子として迎え入れるのか」

「えっ、えー、そ、そんな遠い未来はその、考えて無いなあ、無いけど、ああ、どうしたら良いのかなあ、キルヒナー家を途絶えさせる訳にはいかないし、でも、彼はジーンに来てくれるだろうか? 困ったなあ困ったなあ」


 あまり困ったので、隠れているバラの枝をむしり始めおったぞ。

 やあ、恋する乙女をからかうのは面白いなあ。


「両国はあまり仲が良くないから困るわね」

「うん、それが心配なのだ、ああ、私はどうしたら良いのだろうか」

「まあ、秋に来て交流を深めて相談すればいいよ、相手がある事だからね」

「そうか、そうだよなっ、うんうんっ」

「ジーン皇国特産の騎獣とか居ないの? 秋にそれに乗って行ったら喜ぶと思うぞ」

「あ、それは良いアイデアだな、聖女もたまには良い事をいうな」


 はっはっは、マジックアイテムを無駄にして恋を成就させてやった恩人になんて口の利き方か。

 破談させっぞ。


「そいじゃまたなあ、秋には来いよな」

「お、おう、その、騎乗大会にも行った方が良いだろうか」

「これるなら来たら良いけど、アップルトンまでどうやって来るの?」

「え、あー」


 夏の騎乗大会に来たければ、陸路だと、今ぐらいから出発しないとアップルトンまでたどり着けないぞ。


「む、迎えに来てくれないだろうか、その、飛空艇で……」

「図々しいなあ」

「うう、お願いだっ」

「まあ、考えておくよ」

「たのむよ」


 ナージャは、パスカル部長が騎乗大会で活躍する所が見たいんだろうなあ。

 気持ちは解るけどなあ。

 ペペロンとグレーテも連れていこうかね。

 ついでだし。


 ナージャに手を振って私たちは蒼穹の覇者号に乗り込んだ。

 中庭に居たヒューイも甲板に飛び乗った。


「さてと、ええと、クヌートをガドラガで降ろして、マヌエルは学園ね」

「おう、頼むよ聖女さん」

「あいよう」


 私は蒼穹の覇者号を垂直上昇させて回頭させた。


【こちらはコールサイン354127、ジーン皇国皇都管制塔。蒼穹の覇者号、出発か?】

「こちらコールサイン547498、聖心教所属、蒼穹の覇者号。おさわがせしたね、出発するよ」

【皇宮より通達は受け取った、いつでも来てくれ聖女様。旅の安全を祈る】

「ありがとう」


 さて、出力を上げて、全速力でガドラガに向かうぜ。


 マメちゃんが影から出て来て、袖机で前方モニターを見ていた。

 めんこい奴め、もふもふ。


「わんわんっ」


 後ろを見ると、ヒルダさんがデレデレしながらキューちゃんを可愛がっていた。

 今回の影獣狩りは大成功であったな。

 まあ、余計な大物も手に入ったが、しょうが無い。


 クヌートもリリンちゃんを影から出してお世話している。

 影火トカゲだなあ。

 ミニサイズのドラゴンである。



 さて、順調に飛行をこなして二時間後にガドラガ上空である。

 ガドラガ管制塔に連絡をいれたら、また第三駐機場に着陸するように言われた。

 第一と第二はどこにあるんだろうなあ。


 クヌートはタラップを降りて地面に降りたった。


「ありがとうね、クヌート」

「ああ、何でもねえよ。がんばれよマヌエル」

「ああ、そっちもな」


 オヤジ同士の挨拶は素っ気ないねえ。

 クヌートは手を振って街門の方へ去って行った。

 ガドラガに潜る時はまた世話になるぜ。


 さて、飛空艇は離陸して学園に向かう。

 やっぱなにげにジーン皇国は遠いね。

 操縦しっぱなしで疲れてきたよ。


 ダルシーがお茶をもってきてくれた。

 ありがとう。

 目を細めながらマメちゃんにも牛乳を上げていた。


「はー、めんこいですねえこの子」

「わんわんっ」

「撫でていいよ」


 ダルシーはおそるおそるマメちゃんの頭を撫でた。

 とろけるような笑顔である。

 よし、ダルシーもマメちゃん沼に落ちたな。

 今から、カロルとコリンナちゃんにマメちゃんを見せるのが楽しみであるな。


 王都が近づいて来た。

 夕暮れも近いな。


 ビアンカ邸基地の出入り口へと降下していく。

 ヒューイは勝手に甲板から厩舎の方に飛び立っていった。

 いやあ、最近のヒューイは便利だなあ。


 バックで洞窟に入って格納位置に船を止める。

 ああ、疲れた。

 我が家が一番。

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― 新着の感想 ―
[一言] お疲れちゃん。 そろそろ魔力を補充しといた方がいいんじゃない? ここんとこ飛びまくってるし。それにほら、あなたはトラブルの方から勝手に寄って来る破天荒聖女様だからね。
[良い点] 聖戦! 破門! 破談!←NEW!! マメちゃんはめんこいのう(*'▽'*) [一言] 薔薇の枝・・・キルヒナーの嬢ちゃん、棘に気をつけるんじゃよ。 指は大事じゃよ? 黒豆柴の仔犬にミル…
[一言] 破談させっぞは草 実際聖女が「認めん!」と言ったら教会は結婚式やらせない気がするw
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