第1060話 皇帝陛下からお墨付きを貰う
ペペロンはドロンと煙を出して人化した。
「きゃー、可愛いわね、そっちの方が好きよ」
「えへへ、ありがとうグレーテ」
グレーテ王女に抱きつかれてペペロンは嬉しそうだな。
宮殿の中から皇帝の爺さんとハゲの宰相が現れた。
「やあ、きおったなマコト、皇府が時ならぬ領空侵犯にハチの巣をつついたような大騒ぎじゃぞ」
「まあ、教会は気にしないから皇府も気にすんな」
「まったく、図々しいのう」
爺さんはほがらかに笑った。
ペペロンが皇帝陛下に寄っていってくんくんと匂いを嗅いだ。
「お爺ちゃんはまあまあ、このハゲの人は臭い~~」
なんだと、スケベ爺なのにペペロン的には有りなのか。
宰相が臭いのはなんか解る。
「この娘が竜なのか?」
「そうだよ、ペペロンって名前なんだ~」
「人の匂いで、善悪? を判断できるようです、父上」
「なんと、それは凄いのう。それで皇宮の守護竜になってくれるそうじゃが」
「皇宮じゃなくて、皇都の守護竜ね、皇族を守る竜ではないのだ」
「そうなんだ、えっへん」
「すばらしいのう、守護竜は欲しかった所じゃ、宰相、予算を組め」
「は、ははあっ、アップルトンの守護竜に負けぬような就任式をいたしましょう、皇民全てが守護竜就任を言祝ぐような、そんな盛大な式典を」
「お世話はグレーテがやってくれるようです」
ディーマーがそう言った。
「ほほう」
「ギュンターもディーマーも嫌われたよ」
「そうかいそうかい、野心を嫌うのかもしれんな」
「そうだね、自分勝手な欲望があまり好きじゃ無いっぽいね」
爺さんはうむうむとうなずいた。
「それでは、皇都の守護竜の役目、しかと頼んだぞ、ペペロンや」
「わかったよー、がんばるー」
ペペロンは胸を張った。
「爺さんランチを出せ、飯を食ったら帰る」
「そうかそうか、影竜を見つけた顛末も聞かんとな、宰相、ホールで昼食を取るぞ、用意せい」
「ははっ」
よし、今日は宮殿ランチだ。
「それよりも兄さん、見てくれ、僕の影ネコのショーミーだ」
「にゃああん」
「おおおおっ、影からネコが、これはいったい」
「影獣洞窟でテイムしてきたんだ、いいだろ」
「あら、良いわねギュンター、可愛いっ」
「聖女が影獣迷宮で狩りをしたいと言ってきたから一緒に入ってテイムしたのさ」
「いいなあいいなあ」
私の影からマメちゃんが出て来て、とてとてとディーマーに近寄った。
「うわあ、なんだこの可愛い生き物は」
「ふ、ふわふわ、まるまるの犬ですわ、可愛いですわっ」
「うちのマメちゃんだ、めんこいだろ」
「「めんこい~~」」
ディーマーもグレーテもマメちゃんの魅力にメロメロのようだ。
「古式テイムか、懐かしいな、まだやれる者がいたのだな」
「ジーンのスラムに皇宮テイマーが流れて、クヌートに伝わって、アップルトンに来たよ」
「なんと、ジーンのスラムからか、それは貴重な人材を逃したのう。あの男か」
クヌートは離れたテーブルでお茶を飲んでくつろいでいた。
皇宮だってのに肝が太いな、おまえは。
「今はアップルトン王府の所属か?」
「オルブライト商会の社員だよ」
「引き抜けんかのう」
「無理じゃ無い? あんまりジーン皇国に忠誠心もないだろうし。半魔だしね」
「ああ、そうなのか、なんとも奇縁な事よのう」
「影獣迷宮でのテイムが流行れば、そこそこ古式テイムも根付くんじゃないかな」
「ふむ、影獣か」
そう言って爺さんはマメちゃんを見て目尻を下げた。
「ああいうめんこいのが一杯いるのか?」
「あのめんこさは特別かな、隊長さん、皇帝陛下がワンコ見たいって」
「は、ははあっ!!」
隊長さんは平伏して、影からワンコを出した。
チワワみたいな小型影犬だね。
「おお、可愛いの、よしよしよし。影に潜んで呼ぶと出てくるのは良いのう」
「ははっ、気持ちも通じますし、とても良い家族になれますぞ」
「家族か、良いのう」
「洞窟に大勢で入って荒らすと、影竜の女王が怒るから無制限に狩りさせちゃだめだよ」
「そうそう、おかあさん怒ると怖いよ」
「そうか、ギュンターの領地の県じゃな、ではギュンター、管理は任せたぞ」
「解りました父上」
女中さんが呼びに来たのでランチを取りにホールに移動する。
「いやあ、美味しそうね」
「領袖は日に日に大物になって行きますね」
「ははは、私は無限に成長するのだ」
なんだか豪華な宮廷ランチであった。
ちょっと北方だけあって塩味がきついけど美味しい。
ペペロンもむしゃむしゃ食べていた。
グレーテがつきっきりでマナーを教えている。
ああ、アダベルも前は酷かったからなあ。
最近は孤児院で鍛えられたのか、わりと良くなってきたけど。
「ペペロン美味しい?」
「うん、不思議な味、いろんな味がするね」
「ああもう、手づかみしないでくださいまし」
「えっへへ、ごめんごめんグレーテ」
仲の良い姉妹みたいになってるな。
よきかなよきかな。
食後の濃いコーヒーも頂いて、満足した。
「それじゃ、ペペロン、何かあったら念話で知らせてね」
「わかったよー、ありがとうマコト」
「ディーマーも、ギュンターもペペロンをよろしくね」
「わかった任せておけ」
「うむ、心配するでない」
私が立ち上がると、皇帝陛下も立ち上がった。
「マコトや、守護竜をジーン皇国にもたらせてくれて感謝するぞ」
「まあ、影獣迷宮はジーンの中にあるからね」
「今後、また飛空艇で皇宮に来る事もあろう、飛空艇の無制限航行許可を与えておく、いつでも来るがいい」
「お、ありがとう助かるよ」
ハゲの宰相に羊皮紙の書類を貰った。
「管制塔には話を通して起きますので、今後、無断侵入は勘弁していただきたい」
「わかったわかった」
私は羊皮紙を受け取り、ホールから出た。
ヒルダさんとクヌート、マヌエルが付いて来た。
私の前をマメちゃんがとことこと歩く。
ああ、お尻もめんこいなあ。
萌えるぜ。
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