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第1057話 なんか、変な奴が来た

 兵隊さん五人のうち、二人はワンコをテイムできて、三人はしょんぼりしていた。

 まあ、こういうのは才能だからなあ。

 動物になれているとテイムしやすいかもね。


「意外と楽しいものだな、ダンジョン狩りというものも」

「ダンジョン狩りじゃあ無いけどね」


 なんというか洞窟散歩だな。

 六階の降り階段があったので、下りて行く。


 うおっ!!

 フィールド階だ。


「うお、外に出たのか?」

「ちがうぞギュンター、遠くに見える風景は幻で、広くて天井が高い階だ」

「その通り、六階七階は森の階層だ。自然な風景の中で影獣が襲ってくる難易度が高い階だ」

「影犬がいなければだね」

「そうそう」


 影犬たちは影獣の接近を知らせてくれるし、大量に出たらポーポーちゃん空間に落とせる。

 この洞窟だと、クヌートが有能だよな。


 まだ、フクロウが出る階ではないので先に進もう。

 七階から出るらしいからな。


 だんだん、ワンコが中型犬になってきたな。

 一匹、新しくテイムできた兵隊さんがいた。

 これでテイムできてない兵隊さんは二人だ。


 結構大きめのワンコなので、誇らしそうな顔をしているな。

 残りの二人もなにくそ、という顔をしている。


 しかし、森なので、影猿が一杯来るな。

 立体的に来るから、影犬チームが居なかったらやばかった。

 ペスとかがワンワン吠えて方向を教えてくれるのは便利便利。


「聖女さん、影猿は?」

「なんかピンとこない」


 カーチスの所にクモザルがいるしなあ。


 ぶわっと広がったもの凄い大きい影が木々の間を動いている。

 ペス、ジョン、ポチが怯え声を出した。


《竜の匂い》

「竜だね」


 でっかいなあ、どうする? 影の竜とか直接対決するとやばそうだ。


「殿下を守れーっ!!」

「「「「「おうっ!」」」」」


 兵隊達が密集隊形を作った。


「くそでっけえ、ポーポーじゃ落とせねえ」

「テイムも……、影の中か」

「そうだ、聖女さんならワンチャンあるが」


 でかい影は私の前で止まった。

 影の中から黒い竜の頭が顔を出した。


『こんにちわ』

「こんにちは、迷宮の主?」

『んー、ちょっとちがう、迷宮主はおかあさん』

「そうなんだ、何か用かしら?」

『おかあさんが聖女さんを連れてきなさいって』

「そう、挨拶をするわ、連れて行って」

『わかった、じっとしてて、みんなもー』


 影がぶわっと膨れ上がり全員の足下に広がった。

 ひゅっと重力が消えて落下する感触。

 辺りは光も無い真っ暗だ。


(影空間の中を落ちている)

(だな、聖女さん)

《くらいぞ~》


 クヌートとは影犬を中継して念話ができる。

 ギュンターと兵隊たちはあわてふためいて悲鳴をあげていた。


 とん、と地面の感触がした。

 壁にポッポッポッポと炎が灯っていく。

 玉座に竜人のような黒髪の女性が座っていた。

 隣には黒髪の少女。

 この子がさっきの影竜かな。


「お呼び立てつかまつり、恐悦しごくじゃ、聖女どの」

「影竜の女王とお見受けする、御用は何か?」

「なあに、たいした事では無いわいな。この子が外の世界を見たいともうすので、テイムして連れて行ってくりゃれ」

「外が見たい~~、人間界、見たい~~」


 うっは、嫌な予感が当たった。

 影竜でるかもなあ、と思っていたんだ。


「影竜の姫よっ!! 我に従いたまえっ! 我はギュンター、誇り有るジーン皇国の皇子だっ!! 君をジーン皇国の守護竜に迎えたいっ!!」

「お、皇子、聖女さまが交渉中ですぞ」


 影竜の子は顔をしかめた。


「あいつなに?」

「いばりんぼ、外にはいっぱいいる」

「殺していい?」

「駄目だよ、すごい問題になるから」


 影竜の子はギュンターに近寄ってくんくんと匂いを嗅いだ。


「なんだか、自分勝手な匂いがする」

「そ、そんな事はない、我はジーン皇国の皇子で……」

「竜に関係の無い事ばかり言う。私を思い通りにできれば、自分の得になるって考えている」

「そ、それは……」


 やばいな、人の心理を匂いで感知する系か。


 ギュンターの影からショーミーが現れて、影竜の子にフーッと威嚇した。


「ショーミー、駄目だっ」


 ギュンターは急いでショーミーを抱き寄せた。

 影竜の子は、眉を上げた。


「影ネコが懐いている。悪い所だけじゃないのかな」

「人は色々と複雑なのよ」

「ふうん」


 影竜の女王は玉座から微笑んで娘のやる事を見ていた。


「楽しいのう、我も大昔に勇者にテイムされて人の世界に行って色々と体験したわえ」


 ああ、あのテイム馬鹿の勇者の関係者か。

 六属性の竜を全部テイムしたって話だからな。


「私を人間の世界に連れていってくれる? 聖女さま」

「どうしようかなあ」


 正直、ドラゴン枠は一杯なんだよなあ、アダベルもいるし、ヒューイもいるし。

 一つの国に守護竜二匹とか過剰だろ。

 あ、そうだ、出向させるか?

 私がテイムして、ディーマー皇子に貸し出す感じで。

 ジーン皇国も守護竜が欲しいだろうし。

 もし断られたらアライド王国に話を持って行くか。


「よし、じゃあ、一緒に行く?」

「うん、テイムしてっ」


 私は影竜の子の額に手を置いた。

 パスを発生させて繋ぐ。

 この太いパスはアダベルに繋がってるんだろうなあ。

 うーむ。


「よし、君は今日からペペロンだ、よろしくね」

「わかった、うわっ!」


 ぶわっとペペロンの影がくっきりと濃く変わった。

 進化したかあ。


「よきかなよきかな、娘を頼むぞ、聖女よ」

「はいよ、どこかの国の守護竜にするつもりだけど、良いよね」

「かまわんぞ、人の世の事だ、二百年もすれば飽きて帰ってこよう」

「わあ、どこかの守護竜かあ、どこかの国で氷竜が守護竜になったって聞いたよ」

「ああ、私の関係者、そのうち会えるよ」


 影竜の女王は玉座から立ち上がった。


「さて、クヌートよ、よく影獣たちを可愛がっているようだな、褒めてつかわす」

「は、ははあっ」


 クヌートは平伏した。

 影犬たちとポーポーちゃんも影から出て平伏している。

 影の火トカゲのような奴がパタパタと飛んで来て、クヌートの前に出た。


「お主には我の眷属を一匹さずけよう、可愛がれ」

「ははあっ!!」


 クヌートは手早く火トカゲにパスを繋いだ。


「名前は……、ま、いいか、リリンだ」

「ピューイピューイ」


 仲間に加わったリリンを、ペスとかジョンとかポチが匂いを嗅いだりしていた。

 女王はヒルダさんに向き直った。


「娘よ、そちは何か欲しいのか?」

「恐れながら、影フクロウをテイムいたしたく」

「そうか、希少種ゆえ、余分はないが、雛を一匹授けよう」


 ヒルダさんの前に一匹の小さい小さいフクロウが現れた。


「まーっ、可愛いっ」


 大喜びのヒルダさんは手に魔力を溜めてパスを繋いだ。


「君の名前はキューちゃんだね、よろしくねキューちゃん」

「キューッ」


 キューちゃんは喜んでヒルダさんの胸に飛びこんだ。

 おお、目的達成だ。

 漬物の名前みたいだと思ったが黙っていた。


「では、洞窟入り口まで送り届けよう、今日は愉快であったぞっ」


 影竜の女王が手を振ると我々は影に包まれて上昇していく。


「あ、ああっ! 影犬、私の影犬っ!」

「ほっほっほ、またあおう、聖女よ、娘を頼んだわいのう」


 ぎゃー、女王聞いてねえっ!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 大きな影竜テイムして大きな影の聖女様になったらカワイイ
[一言] 犬を欲したら龍を得た 大は小を兼ねる……で良いのか?
[良い点] 帰ろう、帰ればまた(いつかその内影犬をテイムしに)来られるから。
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