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第104話 ヒルダ先輩がドレスの営業にくる

 とりあえず集会室に入った。

 いつ見てもここは快適空間だなあ。

 ハイソなくつろぎ空間であるよ。


 壁に掛けられた黒板にチョークで議題を書き込む。


『新入生歓迎ダンスパーティの参加希望者』


 マコト・キンボール

 エルマー・クレイトン

 カーチス・ブロウライト

 エルザ・グリニー

 メリッサ・アンドレア

 マリリン


「マリリン・ゴーゴリーですわ」

「ありがとうマリリン」


 マリリン・ゴーゴリー


 私は集会室に居る人を見回す。


「カトレアさんとコイシちゃんは?」

「そういや居ないな」


 あと、コリンナちゃんもいないぞ。

 後で参加希望を聞いてみよう。

 まあ、金が無くてドレスが買えねえ、とか言うのだろうがね。


 バタンとドアが開いて、ヒルダさんとカトレアさん、コイシちゃん、シャーリーさんが入ってきた。


「ごきげんよう、みなさまっ」

「こんにちは、ヒルダさん、みんなが持ってるの何?」

「マーラー家特産の布地サンプルですわっ」


 後に続く四人がテーブルにどさどさと巻物状の布地を下ろした。

 うわ、色んな色が洪水みたいになって綺麗だなあ。


「マーラー領は紡績が特産ですわ、そして、領内にお針子さんも沢山いますの。王都内でドレスを仕立てる価格の半額ぐらいでドレスを提供できますわよ」

「おーーーっ」


 女子どもが布地に飛びついた。


「まあ、綺麗で滑らかな生地」

「色が良いですわー、わあ、凄い黄色っ」

「紺の色が深いですわね、どうかしらカーチスさま」

「おお、いいかもな」


 わ、このえんじ色、カロルに似合いそう。

 彼女の肩に布地を当てると、少し悲しそうにカロルは笑った。

 傷物となった彼女は、男性と親睦を深める目的のダンスパーティは意味が無いと、最初から諦めているのだろうなあ。


 そんな事はないんやで。

 いつか、なんとか、カロルをダンパに連れだそう。


「ドレスを発注するぐらいいいじゃんよ」

「そうね、作るだけなら良いかも」


 綺麗な、えんじ色のドレスのカロルを想像すると、なんかテンション上がってきた。


「マーラー領で作ると安いのは良いけど、時間は掛かるよね」

「そうですわね、行き来で二週間、制作に一週間ですので、早めの発注をお願いしたいですわ」

「三週間か、歓迎ダンスパーティは、一月後だから、今からなら間に合うね、ところで概算どれくらいかな?」

「布地と縫製のグレードにもよりましてよ。あと、階級によっては、あんまり華美な物を作ると悪評を立てられますのよ」


 ああ、男爵令嬢とかがものすごい高いドレスを着ると生意気だと虐められるのか。


「男爵令嬢のドレスだと、二十万ドランクぐらいですか。子爵令嬢で三十万、伯爵令嬢で五十万ぐらいですわ」

「それはお安いですわね」


 庶民にとっては馬鹿高いよ、エルザさん。

 貴族ってのは、お金が掛かるんだなあ。


 二十万かあ、王都で仕立てると四十万、ぐぬぬ、パン屋どころか男爵家の実家にお願いするにも厳しい値段だなあ。

 あ、お養父様とうさまとお養母様かあさまも聖女派閥の集会用に礼服とドレスが要るなあ。

 いつもお世話になってるから、なんとかプレゼントしたい所だけどなあ。


「凄いですわっ、ヒルダさま、同じ値段でドレスが二着作れますっ」

「夢がひろがりんぐですわっ」


 こらこら、メリッサさんとマリリン、実家に負担を掛けるんじゃありませんよ。

 というか、二人ともドレスを沢山持ってるから良いのか。


 うーん、教会の聖女予算を分捕ってくれば、いくらでもドレスは作れるけど、なんか信者のお浄財を浪費するのはいやだなあ。


 金だ、金が欲しい。


 ダルシーと一緒に、スラム行って、賞金首を狩ろうか。

 しかし、ドレス代の為に賞金稼ぎをするのも何だな。


 私と、お養父様とうさま、お養母様かあさま、ブラッドお義兄様にいさまの分で八十万ドランクかあ。

 ぐぬぬっ、手持ちが、ドワンゴの賞金二十五万、バイト代の残り十三万、お小遣いの残りが二万。

 四十万ほど足りない、というか、ドレス代でお財布をすっからかんにする訳にもいかんし。


 コリンナちゃんがドアを開けて入ってきた。


「お、なんだこれ」

「ヒルダ先輩の領の生地だって、ドレスが半額で作れるってさ」

「へえ、いいね、いくらぐらい?」

「男爵令嬢のグレードで二十万」

「……そうか、無理だな」

「寄親が出してもいい? コリンナ」

「いらんっ、寄親が過保護で困るぞ、カロル」


 ヒルダさんがにんまり笑ってコリンナちゃんにすり寄った。


「マーラー領では、今後、ドレスの生産に力を入れるつもりですのよ、コリンナさま、つきましては、一ヶ月ほど交易の帳簿、会計管理をしていただけるなら、ボーナスにドレスを一着、差し上げてもよろしくてよ」

「ぐぬぬっ、労働と引き換えですかっ」

「コリンナさまも、学園生活に一着はドレスが必要ですわよ、良いお話と思うのですが」


 うわあ、さすが毒蜘蛛さんだ、絡め取るように恩を売るのだなあ。

 カロルがぷうと膨れた。

 コリンナちゃん争奪戦が激しさを増しておる。


「ヒルダ先輩、エルザとコイシとカトレアにドレスを一着ずつ発注するぜ」

「はい、ありがとうございます、シャーリー、採寸しなさい」

「はい、お嬢様」


 カーチス兄ちゃんは豪快な買い方するなあ。

 コイシちゃんとカトレアさんが、あわあわと慌てていた。


「いいみょん、いいみょん、わっしは去年作ったドレスがあるみょん、カーチスさま」

「わ、私も一昨年のがあるし、その、お気持ちだけ」

「馬鹿め、俺の妾候補にみっともない格好をさせられるか、黙って受け取れっ」

「はわわ、嬉しいみょん、ありがとうみょん」

「カーチスさま、ありがとうございます」


 ヒルダ先輩がなんだかホクホクしておる。


 しかし辺境伯の令息は金もってやがるなあ、ちくしょう。

 私も、なんとか金を作らねば。


「マコト……、僕が……、君のドレスを、仕立てたい……」

「気持ちだけもらうっ、プリシラ嬢にやんなさい」

「そう……、か」


 すまんな、エルマー、婚約者の居る奴からドレスは貰えぬ。

 しょんぼりすんな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何故カロルさんが少し悲しそうに笑ったのか、気になります。
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