第1056話 影獣迷宮の二階から四階まで走破する
二階も三階も、大した奴は出てこなかった。
基本的にゴブリンとかオークとかが居なくて、影魔物だけなので割と走破はラクチンである。
影スライム、影兎、影ネズミ、影カラスという所で、あんまりテイムしたい感じの魔物が出ない。
ワラワラ掛かってきても、ペスとかジョンとかが顔を出して吠えると逃げて行く。
「五階まで急ごう」
「そうだな、最短距離で潜るか」
ギュンターの息がちょっと上がっているな。
兵隊さん達はさすがにタフで息も切らせていない。
「迷宮とは忙しい場所だな」
「本来はもっと戦闘がございますが、影犬に蹴散らされてしまうので歩いてばかりですな、ご休憩をお願いしますか?」
「いや、まだ持つ、大丈夫だ隊長」
四階の下り階段があった。
トコトコと降りると、また洞窟である。
意外と景色の変化が無いな。
「ちょっと休むよ-」
私が言うとギュンターがほっとした顔をした。
皇子さまはコリンナちゃんほどじゃあないがひ弱だな。
ダルシーに水筒を貰ってごくごく飲む。
クヌートも、マヌエルもマイ水筒を持っているな。
ヒルダさんもシャーリーさんから水筒を受け取っている。
ギュンターには隊長さんが水筒を手渡して飲ませている。
だいぶお疲れのようだな。
『ヒール』
「お、おおおっ、疲れが抜けたぞ、聖女」
「そりゃ、ヒールかけたからな」
「あ、ありがとうございます、聖女様」
「気にしなさんな隊長さん」
「あ、ありがとう、助かった」
「まだ先が長いから、気楽にしていなよ、気を張ってると疲れるよ」
「わ、わかった」
「もう一階降りれば影犬が出てくるな、野良を捕まえるのか?」
「うーん、フィーリングだなあ」
あんま馬鹿すぎる犬は勘弁してほしいし。
クヌートの影犬はみんな頭良いしな。
「お前さんがテイムすると進化するから、結構馬鹿でも大丈夫だと思うがな」
「とりあえず、影フクロウの方が欲しいからな、七階まで急ごう、道中、良い奴がいたらテイムするよ」
「よし、そうしよう、マヌエルはなんかテイムしないのか」
「あまりピンと来ないな、乗れる奴がいいんだが」
「大型は十階以下だな、あとテイムに手間掛かるぞ」
「そうかー、難しいな」
「まあ、ゆっくり考えろ。皇子もなんか記念にテイムしていきませんかい?」
「古式テイムか、うーむ、影に潜んで護衛になるのか、なかなか良いな」
「影の鳥系なら連絡にもつかえやすよ」
「秘密の連絡か、それも良い」
「ネコでも捕まえたら? 可愛いよ」
「ネコかあ、今度ネコか鳥が出て来たら教えてくれ、試して見よう」
クヌートの先導でどんどん進む。
なんか、天井に灯りが点いている洞窟は変な感じだな。
『サーチ』
カアアアアン!
お、あの影の中になんかいるな。
ネコかな。
魔物が居そうな影の上に乗る。
影から前足が出て来てひっかいてきた。
だが、残念だな、これはバトル聖女服だ。
お前のツメでは貫通出来ない。
「みぎゃあああっ!!」
ヒルダさんが糸を使って影ネコをがんじがらめにした。
「よし、皇子、まず、両手の間に魔力を作るんだ」
「お、おう、こ、こうかな」
ギュンターはおっかなびっくり、両手の間に魔力を発生させた。
「それでネコの頭を包むようにして、唱えてくだせえ。『小さき物よ、我が眷属となれ』」
「わ、解った、『小さき物よ、我が眷属となれ』」
ネコはミギャーミギャーと暴れた。
「名前を読んでみなせえっ」
「え、名前か、ええと、ああお前は『ショーミー』というのか」
「ふにゃああお」
お、テイム成功した。
ヒルダさんが糸を解くと、ショーミーはトトトとギュンター皇子に近寄った。
「お、おおっ、これでテイム成功か、おお、お前はショーミー、これからもよろしくな」
「ミョーミョー」
ギュンターはなんだか嬉しそうだな。
「影に潜ませてつれて行きなせいよ」
「わ、わかった、影に入りなさい、ショーミー」
「ニョーン」
ショーミーは素直にギュンターの影に入った。
「これで、影から出たり入ったりするのか」
「素晴らしいです皇子」
「さすがはギュンター様だ」
「すばらしいっ」
隊長と兵隊たちがギュンターをよいしょした。
ギュンターもまんざらではなさそうだ。
影の中からショーミーを取りだしてなでなでしておる。
「マーラーのお嬢がいると楽だな」
「あの糸はマジに使える」
「ありがとう」
ヒルダさんはにっこり笑った。
とりあえず動きを止めると楽だな。
さて、五階に降りよう。
五階に降りると、たまに影犬が出てくるようになったが、なんかピンとこないので、逃がした。
小さい個体が多いな。
チワワとかスピッツ系だ。
私は乗れるぐらい大きいわんこが欲しいのじゃいっ。
「あの、わたくしたちも試して良いですか?」
隊長さんがおそるおそる聞いて来た。
「魔力量とか、向き不向きがあるから上手くいかないかもしれねえが、やってみたらいいんじゃないか」
クヌートが笑って言うと、隊長さんも兵隊さんもにっこり微笑んだ。
「我らの進行を遅らせない程度であれば許可をするぞ」
「皇子、ありがとうございます」
んで、みんなして小型影ワンコをテイムした。
才能があるっぽい人もいて、隊長さん以下、半分ぐらいの人がテイムできたね。
なにより。
兵隊さんだったら、影ワンコ便利でしょう。
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