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第1055話 早起きをして影獣迷宮に行くよ

 んく、あらここどこ?

 体を起こして、きょろきょろと見回す、静かな動揺で蒼穹の覇者号のスイートだと思いだした。

 あー、ぐっすり寝たなあ。


「おはようございます、領袖」

「おはよう、ヒルダさん」


 なんだな、このベッド、大層寝心地が良いね。

 一度バテている時に寝た事はあったが、普通の時の今だとさらに良くわかるね。


 んくうと伸びをして着替えをする。

 ダルシーが現れてバトル聖女服を出してくれた。


「あら、それがバトル聖女服ですか」

「アラクネ糸で作ってあるそうだ」

「それは凄いですね、ミリヤムさんが出せるようになりましたから、代えの物も作れそうです」


 アラクネ糸を断つ事も大仕事なのに、代えの服とか作れるかい、とは思ったが黙っていた。

 バトル聖女服は強靱なのに、軽くてしなやかだ。

 ぱっぱと着込んだ。

 姿見で見ると、年末の格好だな。

 うん。


 ヒルダさんもシャーリーさんに手伝わせてバトルドレスを着込んでいた。

 装甲が、装甲が付いておるぞ。

 かっこええ。


 二人ともドレスアップしたのでスイートを出てラウンジに向かう。

 三等船室のドアが開いて、間抜けな顔のクヌートとマヌエルが顔を出した。


「おお、決めてんなあ、朝飯か?」

「今から作るから、シャンとして上がってきなさいよ」

「わかったわかった」


 髭面でいつにも増してむさいぞクヌートめ。


「エバンズはどこいった?」

「エンジンルームに行ったぜ」


 まったく、あいつめー。


 螺旋階段を上がってラウンジに入ると、ヒューイが窓から顔を出した。


「おはよう、よく眠れた?」

《ねれたー、湖の近くは良い、いつでも泳げる》


 ヒューイは夜中に泳いでいたっぽい。

 フリーダムだな。


 ダルシーとシャーリーさんに手伝って貰って朝ご飯を作る。

 メニューは、ベーコンエッグ、チーズトースト、キャベツのスープだな。


 エイダさんに艇内放送をして貰って男衆をラウンジに呼びつけて、みんなで朝ご飯を取る。


「ああ、美味いな、うん」

「地味だけど、美味い」

「こういうのでいいんだ、こういうので」


 お前らだまって食え。


 お腹がくちくなったので、そろそろ出発である。


「じゃあ、行くから、エバンズはお留守番お願いね」

「わかった」


 まあ、エイダさんが居るから良いんだけどさ。

 一応ね。


 タラップから降りると最後のステップが陸地に届いていた。

 足が濡れなくて良いね。


 森の中にはちゃんと道ができていた。

 ダルシーのお陰だなあ。

 でこぼこはあるけど歩きやすい。


 森を抜けると、影獣迷宮は目の前だ。

 入り口の所で、ギュンターと兵隊が六人待っていた。


「おはよう、聖女よ」

「おはようギュンター」


 クヌートを先頭にして、みんなで洞窟に入る。

 暗いかと思ったけど、意外に明るい。

 天井に灯りがあるな。

 なんだこれ。


「光が無いと影は出来ない、影だけの真っ暗だと影獣のうま味がでないから、この迷宮には灯りがあるんだ」

「それはまた、すごいな、誰が作ったんだ」

「しらん」


 物陰の光の届かない影に魔物が潜んでいるらしい。


『サーチ』


 カアアアアアン!


 うん、なんかあちこちに反応があるな。

 近くの反応の場所を見ても何も居ない。

 影の中か?


《踏んでみる》


 ヒューイが足でペシペシと影を叩くと、ウニョーンと黒いスライムが現れた。


「影スライムだ。天井の影とかに潜んでいたら危ないが、それ以外なら大した事は無い」


 ヒューイが影スライムを踏み潰していた。

 これこれ、無益な殺生はやめるんだ。


「一階は影スライムと何がでますの?」

「影ネズミ、影兎か」

「先にまいりましょう」

「そうだな」


 ギュンターは興味深そうにあちこちを見て歩いていた。


「迷宮は初めて?」

「そ、そうだな、うむ、ここは不思議な迷宮だ、影の魔物が多いのか」

「多いってより、影の魔物しかいねえ、商売にならねえから冒険者もよりつかねえ所だよ」

「奧の方にはどんな物がいるのだ?」

「さあ? 噂だと影ドラゴンがいるって聞いたが本当かどうかはわからねえな」


 影ドラゴンかあ、もう、ドラゴンはいらんな。

 ヒューイとアダベルでお腹いっぱいだ。


「影ドラゴンをテイムできれば凄いなっ」

「よしてくれ、皇子さん、聖女さんぐらいのテイム速度がねえとドラゴンなんざ命とりですよ」

「聖女ならテイムできるのか!」

「しないよ」


 影に潜むドラゴンとか、チート過ぎだろう。

 そんな凶悪な護衛はいらん。


「そういえば、貴様、皇国の裏切り者、五本指の一人であるなっ」

「ああ、まあ、そうですが」

「魔国にねがえりおって、恥をしれいっ」

「そのあと、オルブライトさんに寝返りましたがね。まあ、庶民なんで、扱いが良い所に行くんですよ」

「ぐぬぬ」

「師匠も色々経歴が複雑だな」

「マヌエルほどじゃねえよ」


 なんだか、私の周りには経歴がおかしい奴があつまるなあ。

 甲蟲騎士団も寝返り組だしな。

 まあ、いいけどな。


 階段を降りて地下二階へと我々探検隊は突入したのであった。


 


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― 新着の感想 ―
[一言] まあ腕利きの五本指を留めておけなかった皇国も不甲斐なさを恥じるべきなんですけどね(ボソッ ねえー、皇子様ァ?(大声
[良い点] 『ほー いいじゃないか こういうのでいいんだよ こういうので』 誰かにゴローちゃん降臨。 ギュンター皇子「聖女ならテイムできるのか!」 マコトちゃん「しないよ」 できないとは言ってない。…
[一言] そもそも征服して無理やり屈服させたり脅したり、たんに雇っただけだしなあ。 国に仕えてる訳じゃないし忠誠心もない、契約くらい守れとも思うけど初めから半分お互い裏切ってたからな。裏切りとは言わな…
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