第1049話 ガドラガのギルマスはすだれハゲだった
やっぱハゲだなあ、すだれハゲだ。
「なんだあ学生、ガドラガギルドに何か用か」
たぶんギルマスであろう、すだれハゲマッチョがカウンターの向こうでダミ声を出した。
塩カラ声だ、魚屋さんかな、とか思ったが、ダンジョンの奥で大声で指示しまくった結果だろうね。
「五本指のパーティは今居ない?」
「ああ、今売り出し中の奴らか、今はダンジョンだな、もう帰ってくるだろう。酒場でビールでも飲んで待ってろ」
私は学生なんだけどなあ。
というか、ビールあるのか、アップルトンはどこもエールかと思っていた。
ビールとエールは、その、なんだ、発酵が上面発酵か下面発酵かの違いがあって、まあ、味が違う。
でも泡が出て飲むと酔っ払うのは一緒だ。
酒場から尼僧の人がとてとてとてと慌ててやってきた。
「ス、スミスギルドマスター!」
「なんだ、ドロテ、どうかしたか」
「あのそのっ、あのっ、せせせ聖女さまっ、ですっ」
「はあ?」
「聖女さまです、このお方、マコト・キンボール様ですっ」
「……、そうか、うん、まあ、酒場で飲んでってくれ」
「し、失敬ですよっ!! しゃしゃしゃ謝罪をっ」
「うるせえ、ギルドはギルド、教会は教会だっ」
スミスさんというのか、なかなか一本気で良いギルマスのようだ。
王都のハゲギルマスとは違うな。
「いいのよ、ドロテさん、さ、何か飲みましょうヒルダさん」
「で、では、ここここ、こちらに、他のテーブルは荒くれ者ばっかりですからっ、こ、このテーブルは、その、ああ、うちのパーティも荒くれ者ばっかりっ」
それを聞いてドロテさんのパーティメンバーはゲッゲと笑った。
確かに人相は悪いなあ。
「いよう、聖女さん、ちっさいねえ」
マッチョの戦士が笑った。
「あはん、なんかすごい綺麗なおねえさんも居るねえ……、え、なんか……」
「ヒルダ・マーラーよ、よろしく、女盗賊さん」
「……、マ、マーラー家のお、お嬢さんでしたか」
「マーラー家ってなんだい?」
顔色を変えた女盗賊さんに、魔法使いらしいお兄さんが聞いていた。
「あー、そのー、うん、聖女様並みに舐めちゃならねえ家」
「へーほー」
「まあ、座って座って、これも何かの縁だしね」
ちょっとイケメンだけど、顔に傷がある軽戦士さんがにこやかに笑った。
「ちょっと、マリルー、注文取りに来てよー」
「はーい、ただいまー」
女給さんが寄ってきた。
「何を飲みますか?」
「何があるの?」
「ビールね」
「ジュースはある?」
「あるけど、ビールより高いわよ」
そうか、ここは何にも採れないから、果物を使ったジュースは高いのか。
「良いわ、ジュースを二つ」
「まいどありー、前金」
ダルシーが現れてお金を払い、消えた。
「「「「……」」」」
「何なのさ、あれ?」
「うちのメイドのダルシー」
「さすが聖女さん、メイドも変わってんね」
「まあねえ、貴方たちは?」
「ご、『豪運の牡鹿団』ですっ、聖女さまっ、わわわ、わたしは僧侶のドロテですっ、お噂はかねがねっ、守護竜さまの洗礼式では女神さまをお呼びになられたとかっ、き、聞きました、です、はい」
「緊張しなくていいわよ、まだ聖女候補生だから。ドロテさん」
「私はずっと聖女様に憧れていて、去年の暮れも、一昨年の暮れも聖夜祭に年越し祭りにと、聖女さまのお言葉を聞いていまして、本当にうわああ、近くでお会いできて感激ですっ」
「ドロテは聖女マニアだからなあ」
「やめてよ、マッケン!!」
ドロテさんは赤くなって戦士のマッケンさんに怒った。
なかなか仲の良いパーティのようだね。
オレンジのジュースが出て来た。
氷も入ってるね。
ちょっと飲んで見た。
……薄いね。
「まあ、ガドラガですから」
「酒場ではビール一択だよ」
「そのようね」
さて、ちょっと情報収集してみるかな。
「そういえば、ガドラガの教会ってどうかしら」
『豪運の牡鹿団』の皆さんは微妙な表情で顔を見あわせた。
「ま、まあ、がめついよな」
「ガドラガだしねえ」
「ドロテが居て俺たちは本当に助かってんよ」
「そんなそんなっ」
ドロテさんが照れて手を細かく振った。
「ドロテさんは水?」
「はいですっ、『癒やしの水』ですっ、あと、補助で水魔法ですっ」
僧侶になれるのは、属性が水か土に限られている。
教会だと、別の属性の尼さんとかいるけどね。
冒険者だと、回復魔法がある、その二つの属性に限られるんだな。
しかし、ガドラガ教会はがめついと有名なのかやっぱり。
「錬金薬はどう?」
「高い上に質もよくねえなあ、オルブライト商会の奴があれば良いんだが、そういうのは高値が付いて、俺らが買えるのは三流工房の錬金薬だあな」
「まあ、不便をなんとかしてこそ冒険者だからね、あんま不満ばっか言ってると運がにげるんだ」
ふむ、錬金薬の流通も滞ってるのか。
どっかで買い占めが起こっているかな。
錬金薬の流通を絞れば怪我人は教会に行くしか無いしな。
カロルが見たら怒るぞ。
蒼穹の覇者号でポーション類をどっさり運搬しても良いな。
しばらく『豪運の牡鹿団』と雑談をしていたら、懐かしい声がウオンウオン鳴いてきた。
影を縫って、ペスとジョンとポチが私に駈け寄ってきた。
「よう、おまいら、元気だったか?」
「わあ、ポーポーちゃん」
ポーポーちゃんは途中でヒルダさんに確保されてしまった。
ギューギュー抱かれているな。
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