第1044話 大神殿で装甲を手に入れる
集会室に行くと、お洒落組とヒルダさんが居た。
あんたたち集会室好きよね。
と、思ったけど黙っていた。
「こんちわ~」
「あら、マコト様ごきげんよう」
「どこに行ってらっしゃったのですか?」
「郊外の飛空艇基地にスケッチに行ってたよ」
「あら、素敵ですわね領袖」
ヒルダさんに褒められたぞ。
「そうだ、ヒルダさん、ヒルダさんはガドラガでどんな装備で入ってるの?」
「? 制服ですけれども」
「そうだよねえ、カロルが危ないから皮鎧を着ろって言うんだけど、要らないよね」
「うーん、領袖は深い所にいらっしゃるから防具を着けた方が良いかもしれませんね。私たち二年生は迷宮の入り口で初歩的な教育を受けるだけなので制服で良いことになってますし」
ああ、そうか、行く場所が違うんだな。
ガドラガ実習だと、C組はドレスで行くとも聞くしね。
「お洒落な皮鎧を作るべきですわっ」
「聖女さまは学園のファッションリーダーたるべきですわっ」
「そんな事言われてもなあ」
甲冑はお洒落じゃないぞ。
「大神殿にそういう物は無いのですか?」
「聞いて無いなあ」
「歴代聖女さま、勇者さまのお残しになった伝説の皮鎧があるかもしれませんわ」
「そうですわそうですわ」
皮鎧は腐るから、残って無いと思うぞ。
金属甲冑とかは残るけどねえ。
「明日から影洞窟行きなのですから、探してみるべきでは?」
「そういやそうね」
影洞窟がどれくらいの危険度か解らないけど、防具あってもいいかな。
いや、障壁あるから要らないとは思うけどね。
今から行ってリンダさんにでも聞いてみるかな。
《またおでかけか》
あ、ヒューイに気付かれた。
(大神殿に行くだけよ)
《のせていくよ》
帰ったばっかりなのに、と、思ったのだけど、ヒューイがオノレさんに指示して鞍を乗せて貰っていた。
《いまいく》
むう、しょうがないなあ。
「じゃ、ちょっと大神殿に行ってくるよ」
「いってらっしゃいませ」
「可愛い皮鎧を見つけてきてくださいましね」
そんな物は無いと思うぞ。
集会室のドアを開けるとヒューイが来ていた。
《いこういこう》
「へいへい」
ヒューイに跨がると彼は勝手にとっとこ走り始めた。
まったく便利だなあ。
とっとこと、と、王都中央通りを走らせて大神殿に向かう。
寺男のアンドレとルイゾンが大階段を掃き掃除していた。
「聖女さんちわーっす」
「聖女さんとヒューイ号ちわーっす」
《ちわーっす》
ヒューイはルイゾンの挨拶が気に入ったのか奴に頬ずりをした。
「ぎゃははは、やめろうヒューイ号」
「リンダさんは、中かな」
「ええ、奧でみましたぜ」
「じゃあ、入るよ」
「あい、行ってらっしゃい」
ヒューイをとっとこ走らせて大階段を上がって行く。
お、回廊にカマ吉とゴブ蔵がいるね。
「こんちわ、カマ吉、ゴブ蔵」
「チギィ」
「こんにちは聖女さま、ご機嫌はいかがでしょうか」
相変わらずゴブ蔵はテラ子安ボイスだなあ。
イケボ聖ゴブリンだ。
「リンダさん知らない?」
「練兵場にいらっしゃいましたよ」
「ありがと、あんたたちもがんばってね」
「チギィ」
「かしこまりました」
とっとこと、さすがに女神像の近くではヒューイから下りる。
並んでお祈りをする。
――婆っちゃの牧場がみんなに認められますように~。
さて、練兵場に下りよう。
ヒューイを引いて女神像の前を左に折れる。
練兵場の奧で聖騎士に稽古を付けているリンダさんが見えた。
「おーい、リンダさん」
リンダさんはこちらに気付くと全速力で走って来た。
「マコトさま、何か御用ですかっ」
「大神殿にマリアさまとかが使っていた皮鎧とか無い?」
「皮鎧ですか、魔法のプレイトメイルは伝わっておりますが……」
やっぱり無いかあ。
「何に使われるんですか?」
「ガドラガに行くのに着た方が良いってカロルに言われた」
「バトル聖女服はありますよ」
「あるんかいっ!!」
「防御力強化の魔法が掛かったアラクネの糸で作られた一品で、マリアさまが着てらっしゃいました。下手な金属甲冑より防御力が高いです」
「それは私が着て良い物かな」
「聖心教に伝わる品物は全てマコトさまの物ですから、なんの問題がありましょうや」
そう思ってくれるのは嬉しいが、そうもいかんだろう。
「教皇さまに聞いてみましょうか」
「そうしましょう」
そういうことになり、教皇さまのオフィスに行った。
「かまいませんよ」
一発OKが出た。
うーむ、大神殿は聖女候補に甘すぎると思うんだ。
楽で良いんだけど。
地下の宝物庫に行って、バトル聖女服を見せて貰った。
魔法が掛かっているだけあって、新品同様だな。
大きさはちょっと大きいけど、裾を引きずるほどではないな。
意外に肌触りも柔らかい。
「それではお持ち下さい」
「ありがとうリンダさん」
貸し出し証とか書かなくていいんかね?
まあいいや、収納袋に入れよう。
聖女候補だから、迷宮に聖女服で行って悪い事はあるまい。
いや、それが正しいのだ。
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