第1043話 黄金の暁号をスケッチしまくるぜ
上から飛空艇基地を眺める。
黄金の暁号と白銀の城号が並んで停泊してるね。
船員さんが甲板掃除をしたり、塗料を塗り替えたりしている。
メンテナンスもここでやってるっぽい。
エバンズもこっちに就職すれば良い物を。
まあ、蒼穹の覇者号にも技術者は必要だからありがたいけどね。
門の前にひらりと降りてヒューイを歩かせる。
「何者ですか?」
門の番兵さんがこちらを誰何してきた。
「大神殿所属の聖女候補マコト・キンボールと言います」
「これは聖女さま、こちらへは何か御用ですか?」
「今描いている絵に黄金の暁号が出てくるので細部をスケッチしたいと思ってまいりました」
「そうですか、それでは司令官に許可が出るか聞いてまいります」
「あ、これ、ケビン王子からの御免状です」
私は御免状を番兵さんに渡した。
「ああ、ケビン第一王子様のお墨付きですか、かしこまりました、基地指令に許可をいただいてきます。すこしお待ちくださいね」
おお、さすがは王子の御免状、ぐっと扱いが軟らかくなったぞ。
ヒューイを木陰まで歩かせてしばらく待つ。
なんか偉い感じの軍人さんが走ってやってきたぞ。
「これはこれは聖女さま、王立第一飛空艇基地にようこそ。私は司令官のアイザック・トレインと申します」
「これはご丁寧に、ちょっとスケッチに来ただけなので、歓迎の方はお気持ちだけ頂いておきますわ」
「では、どうぞ、どこからでもスケッチをしてくださいませ。聖女さまに描いてもらえるのは基地としても大歓迎でございます」
なんだか、ニコニコとアイザックさんは大歓迎してくれた。
襟章を見ると准将軍かな?
ヒューイから降りて、彼を引いて歩いて基地内に入る。
もう五六隻は停泊出来そうな大きな基地なんだけど、今のアップルトンには飛空艇は二隻しか無いのよね。
黄金の暁号に近づいて、後ろの方から様子を見る。
ええと、もうちょっと左側、そうそう、この角度だね。
植物紙ノートを出して木炭でスケッチを始める。
こらこら、ヒューイ、暇だからって私の頭をつつくな。
集中してスケッチをしているのだが、なんだか、周りに人が増えてきてないかな。
「上手いもんだ」
「うん、ブースターブリッジが良く描けてる、正確だ」
なんか、整備員とか、水兵さんたちが遠巻きにして見ているな。
やりにくい。
が、描かねば。
一枚描けたので、障壁で木炭を定着させて次のページに。
こんどは上部構造を描こう。
サラサラサラ。
「マストの二段目の位置が惜しいな」
「ああ、あそこはサブプロペラを取り付けるからもう少し上だな」
うるせえなっ!
まあ、位置が違うのは確かだから、パンを出して木炭を消す。
あ、ヒューイ、囓るな。
みんなに見られて絵を描くのは辛い。
だけどやっぱり飛空艇は美しいな。
良い感じだわ。
ちょっと近づいて、船舷の彫刻とか、大型バリスタなんかをスケッチする。
意外に装飾も凝ってるなあ。
白銀の城号ほどじゃないけどね。
よし、だいたい描けたぞ。
さっさと帰ろうと後ろを向くと、見物人が五十人ほどいた。
こんなに。
「お上手ですなあ、できあがった作品は大神殿で見られますかな?」
「いえ、これは個人の邸宅に飾りますので」
ああ、それは残念だ、完成品を見たいなあ、とか群衆が口々に言った。
「で、できあがったら一度見せに来ても良いですか、プロの意見を聞いてみたいし」
「是非お願いします、みんな喜びますよ」
「なかなか飛空艇は絵画のモチーフにはなりませんからね」
「基地司令、今度予算を付けて、絵描きさんに飛空艇の絵を描いてもらって、基地にかざりましょうよ」
「それは良い考えですね」
飛空艇基地で時ならぬ美術ブームだなあ。
「それでは失礼しますね」
「もうお帰りですか、基地内でお茶でも」
「いえ、帰って続きを描きますので」
「そうですか、素晴らしい絵が完成する事をお祈りしております」
「いつでも来て下さいよ、聖女さま」
「なんでもお教えしますからっ」
「はい、また来ますね」
まったく、飛空艇基地は暇人しかいないのか。
まあ、魔法学園のガドラガ実習か、王家の外遊ぐらいにしか、もう飛空艇は使われないから暇なんだろうなあ。
まあ、また、何か描きに来てやろう。
私は収納袋に植物紙ノートをしまってからヒューイに跨がった。
とっとっととヒューイを走らせて基地の門を出る。
ビシリと門番さんが敬礼をしてくれた。
ヒューイの羽を展開して、空に舞い上がる。
旋回すると、基地で沢山の人達が私に手を振っているのが見えた。
「さて、王都に帰ろう」
《うん》
高度を上げて王都に急ぐ。
街壁を飛び越えて王都内に入る。
都市の中は気流が複雑でなんだか楽しい。
大神殿上空を飛び越す時にアダベルの離陸と行き会った
「アダベル、ホルボス?」
『左様、マコトは帰りか』
「そうよ」
背中に乗った籠の中から孤児達が笑顔で手を振っている。
しばらく並んで飛んでいたが、アダベルはまっすぐホルボス山を目指して飛んでいった。
私たちは自然公園の上空から廃教会を経由して回り込むように厩舎まで飛ぶ。
ひらりと厩舎前に着陸すると、オノレさんが出て来て手綱を取ってくれた。
「おかえりなさいませ、聖女さま」
「ヒューイをお願いね」
「かしこまりました」
《また飛ぼう》
「そうね、また飛びましょう」
さて、集会室に行って絵でも描くかな。
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