第1042話 放課後はスケッチに基地に行く
食事が終わり、レストラン前で解散である。
「それでは、聖女さま、ありがとうございました」
「ガドラガ行きが楽しみですね、それでは」
ベロナ先輩と、イルッカ先輩、スーザン先輩と別れて階段を下りる。
「そういえば、マコト、ガドラガの装備はどうするの?」
「装備?」
「まさかダンジョンに制服で行く気じゃないでしょうね」
「……そうだけど?」
カロルは呆れたという顔をした。
「迷宮だからせめて皮鎧ぐらいは着ないと危ないわよ」
「制服に運動靴。カロルはどうするの?」
「二年になる前に買うつもりだったけど、ちょうど良いから新しいのを買うわ」
「うーん」
というか、私は障壁持ちの聖女候補様だから皮鎧とかめんどくせいのだ。
あ、教会にバトル聖女服無いかな。
マリアさまが使っていたようなの。
今度聞いて見よう。
そうしよう。
ちなみに式典用の聖女服はけっこうペラペラだ。
年末用のは裏地に毛皮が入って結構暖かいけどね。
「マコトは午後は集会室?」
「そうそう、ダルシーの絵を描くのさ」
「頑張ってね、じゃあ、私は魔術実習だから」
「ほーい、またね」
そう言ってカロルはコリンナちゃんと一緒に土魔法実習室に向かって去っていった。
私は階段を下りきって裏口から集会室へ。
孤独にペタペタペタとダルシーの絵を描く。
さすがにこれ以上は黄金の暁号をスケッチしないと駄目だな。
あの船はどこに駐めてあるんだろうか。
学園長に聞けば解るかな、王府の交通局か。
おっと、終業の鐘が鳴った。
さてと、片付けてA組に行こう。
スモックを脱ぐとダルシーが受け取ってくれた。
いつもありがとうね。
A組に入るとアンソニー先生が来るのと同時であった。
あぶないあぶない。
ホームルームはまあ最近王都で流行っているいかがわしいお店へ行かないようにとの注意だった。
A組には居ないだろうさすがに。
酒と女の豪遊のお店で、一度入ると多額の請求書がタウンハウスに届くそうだ。
貴族が怖く無いのかねえ。
どこかの貴族がケツモチしてるのかな。
起立礼、着席。
で、放課後である。
「ジェラルド、黄金の暁号って今どこにあるの?」
「どこ、とは?」
「現在地点よ」
「郊外の飛空艇基地に係留中だが?」
「場所は? すぐ入れる?」
「王都の南東だが、関係者以外入れないぞ」
「アーヴィング船長連れていったら入れる?」
「何をするつもりなんだ何を」
「今、絵を描いていて、そこに黄金の暁号が描いてあるから細部をスケッチしたい」
ケビン王子が振り返った。
「ああ、そういう事なら」
彼は羊皮紙にさらさらと書き付けてこちらによこした。
『この者は聖心教教会聖女候補のマコト・キンボール嬢である。黄金の暁号を見学したいという事なので便宜を図ってほしい。 ケビン』
おお、王子のサイン付きの御免状だ!
「ありがとう、ケビン王子」
「キンボールさんには色々とお世話になっているからね、これくらいはなんでもないよ」
いやあ、持つべきものは偉い知り合いだな。
「これさえあれば、白銀の城号の中も入れるぞ」
「あっちは絵に出てこないからいいや」
「王家自慢の船なのに」
さて、今日は飛空艇のスケッチとしゃれこみましょうか。
(ヒューイ)
《おでかけ?》
(王都の南東に行くわよ)
《わかった》
ヒューイが馬丁さんに催促をするイメージが浮かんだ。
あれ、鞍が無いって言ってるな。
(鞍は昨日収納袋に入れたから、そのまま来なさい)
《わかった》
ヒューイは馬丁さんを動かして馬房の中から出て、道を走った。
「じゃ、カロル行ってくるわ」
「気を付けてね」
私はカロルに手を振ってA組を飛び出し、階段を駆け下って玄関に出た。
玄関の前に丁度ヒューイが着いた所だった。
収納袋から鞍を出してヒューイに乗っける。
大きいからやりにくい、と思ったら、パスカル部長がいて手伝ってくれた。
「おお、ありがとう」
「たまたま通りがかったからな、今から遠乗りか?」
「そうだよ、飛空艇基地に行くんだ」
「ああ、あそこは飛空艇が係留してあって良い景色だからな、行ってこい」
パスカル部長は珍しく制服だから、厩舎に行く前だったのかな。
とりあえず助かった。
私はヒューイにひらりと跨がった。
「遠くに行くなら乗馬服を着ろよ」
「めんどくせい、じゃあなあ」
私はヒューイの脇腹を軽く蹴って彼をとっとこ走らせる。
校門から出た所で羽を展開させ、空に舞い上がる。
ああ、ああ、やっぱり空を飛ぶのは爽快だなあ。
《飛ぶのすき》
ヒューイもか、私もだよ。
風を読んで上昇気流を掴んで高度を上げる。
飛空艇では感じられない、体を使って飛んでる感じがいいなあ。
体重移動で旋回する。
収納袋からゴーグルを出してつけて目を保護する。
さて、王都から南東だから、あっちだな。
ヒューイはバッサバッサと羽ばたいて速度を上げる。
飛空艇基地はどこだー。
目をこらしてあちこちを見ると、結構遠くの方に飛空艇が駐まっている基地が見えた。
あそこだーっ!
《いこういこう》
旋回して基地目がけてヒューイと一緒に飛ぶ。
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