第1041話 会食しながらベロナパーティの話を聞く
結局私はAランチにした。
うん、川鱒よりかはビーフシチューじゃい。
カロルはBランチを頼んだ。
みんな口々にウエイトレスさんに注文を入れている。
やあ、上級貴族レストランに久々に来たけれど、個室も小洒落ていて良い雰囲気だわ。
値段も高いからね。
飲み物の注文をする。
私はお茶だ。
うん。
カーチス兄ちゃんは当然のように赤ワインを頼んでおるな。
まあ、飲む人は呑むがいいさ。
「ベロナ先輩、新しいメンバーは入りました?」
「いや、ここに居る二人だけだ、どうしても死んだ二人の事が忘れられなくて、斥候も、僧侶も新しく雇えないのだ」
「まあ、斥候はガドラガでプロを雇いましょう、その方が安全です」
「そうだね……」
ベロナ先輩はうなだれた。
「僧侶は私がいて、カロルが居ますから」
「どうも、カロリーヌ・オルブライトです」
「おおこれは錬金令嬢さん、これは心強い」
イルッカ先輩が声を上げた。
そりゃあまあ、天下のオルブライト商会のCEOだからねえ。
「イルッカ先輩が軽戦士の槍使い、スーザン先輩は魔法使いで……」
「火です」
ああ、だからあの大やけどで生き残っていたのか。
火属性の人は火耐性が少しあるからね。
「ベロナ先輩が戦士で前衛と」
ふうむ、まあまあのバランスかな。
「ベロナ先輩、俺が前衛に入る。聖剣ホウズを持つ戦士、カーチス・ブロウライトだ」
「おおお、聖剣?」
カーチスの背中でホウズがぴょこりと抜けた。
『さようさよう、レアキメラなぞ恐るるに足らん、わが切れ味を見せてやろう』
というかさあ、あんま出しゃばるなよカーチス兄ちゃん。
ベロナ先輩の敵討ちの狩りなんだから。
手柄を取ってしまうのは違うだろ。
後でたしなめてやらねば。
ここでウエイトレスさんがお料理を運んできた。
あー、ブラウンシチューの良い匂いがするなあ。
川鱒のフライのプレートも運ばれて来た。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
パクリ。
うんうん、美味しい美味しい。
ブロウライト牛の良い所を使っているなあ。
これは食が進むぞ。
「川鱒はどう?」
「美味しいわよ、脂がのっているわね」
まさかマーラー領産ではあるまいな。
と、思ったがあそこからだと飛空艇でも使わないと鮮度的に持たないか。
「で、ベロナ先輩、スーザン先輩、イルッカ先輩、迷宮にまた入れるんですか?」
三人はびくりと体を震わせた。
「一度お二人は死にかけたし、ベロナ先輩は全てを失いかけましたよね。それでも迷宮に入れますか」
「お、俺は、正直に言うと、こ、怖い、今でも夜に悪夢で飛び起きる」
「イルッカ……」
「だ、だけど、このままじゃいけないんだ、俺は一歩も進めなくなっちまう。俺だけじゃない、スーザンも、ベロナも、あの日のダンジョンに大事な物を置いてきた。取りに帰らないと、だ、駄目なんだ……」
そうかー。
「意地悪な言い方をしましたね、ごめんなさい」
「い、いや、良い、聖女さまは悪く無い」
「私も正直怖いわ、今度はみんなで全滅するかもしれない、そう考えてしまうの、でも、行きたいの。行って、ボルヘとコリンヌの墓前にあいつの首を供えたいの」
うーむ、コリンヌさんとコリンナちゃんの名前が似ているので、コリンナちゃんがきょどるぜ。
「解りました、私が治療面と防御面で全力を尽くします」
「そうか、助かる、かならずや、あのレアキメラを倒す、それが僕らの今の願いだ」
もう半年休んでからの方が良いとは思うのだけれども、行きたいんだろうなあ。
気持ちは解るよ。
友達が二人も死んでるんだしなあ。
しかし、ベロナ先輩、イルッカ先輩、スーザン先輩、私、カロル、カーチス兄ちゃんか。
一見、六人パーティに見えるじゃん。
ここに、ダルシーとアンヌさんが入り、チェーン君が入り、ヒューイも来る、そしてガイドのプロの斥候で、11人パーティだな。
まあ、一人はヒューイだから十人とも言えるが。
わりと大所帯だな。
とりあえず、最悪の時はホウズを使ってレアキメラを真っ二つにする感じだな。
まあ、敵討ちとしては台無しだから、なるべくベロナパーティの人にとどめをさしてほしいけどね。
「あまり無茶をしては駄目だよキンボールさん、あなたはアップルトンの宝なんだから」
「無理だと思ったら引き返して来たまえ、また次のチャンスはあるだろうからな」
まったく王家主従は余計な事を言う。
んな事は重々承知だよっ。
ああ、美味しかった。
お、デザートにチーズケーキとコーヒーが出るのか。
うまうま。
「とりあえず、死んでさえいなければ私が必ず回復してあげますから、思いっきりやっちゃってください」
「心強い、聖女さま、恩にきます、この恩はかならず」
「良いんですよ、領地の教会とかを大事にしてくださいよ」
「そんな事で良いんですか?」
「私は聖女候補ですからね、スーザン先輩」
この大陸隅々まで女神さまの慈愛が広がれば、私はそれでかまわないのだ。
現世の利益とか追求するとキリが無いしね。
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