第1032話 コリンナちゃんの弓術の練習と晩餐
お風呂から上がって時間もあるので、コリンナちゃんを引きずって地下通路弓道練習場へ行く。
お洒落組とヒルダさんも付いて来た。
「弓矢とか無い」
「ほい」
こんなこともあろうかと、収納袋に入れていたコリンナちゃんの銀の弓と矢壺を渡した。
「い、いつの間に!」
「ふふーん」
コリンナちゃんはしぶしぶ、弓矢の練習を始めた。
昨日よりはフォームが良くなっているね。
シュパンシュパンリズミカルにコリンナちゃんは矢を射る。
「すごいですわ」
「本物の射手ですわ」
「そういや、あんたたちは武術は?」
「……鉄扇ですわ」
「……同じくですわ」
メリッサさんとマリリンは懐から鉄扇を出してビシリと振った。
うーん、鉄扇もエルザさんとか凄腕の人が使うと必殺武器なんだけど、素人が使うとただの棍棒だからなあ。
「私は糸ですわ」
「まあ、そうよね」
ヒルダさんは糸で凶悪に強いからな。
「メリッサさんはともかく、マリリンはせっかく体格が良いんだから、もっと重い武器でも良いんじゃ無いかな」
「長剣ですか?」
「メイス……」
「領袖、スレッジハンマーが良いかと思います」
「い、いやですわ、そんな野蛮な武器」
あんたは野蛮なガタイしてるからしょうがねえじゃんよ。
コリンナちゃんが的に歩いて、矢を回収しに行った。
「騎士の家なんだから、何か使えないの?」
「槍とか大剣はその、ちょっと使えますけれども、野蛮ですわ」
なんだ使えるんじゃん。
「何か良い武器があったらマリリンにあげるわ」
「スレッジハンマー一択ですわ」
スレッジハンマーというのは、でっかい砕石用のハンマーで、確かにマリリンが振ったら格好良さそう。
マリリンは性格が女の子だけど、ガタイは重戦士だからなあ。
「マコトさまが解ってくださらないわっ」
「元気を出して、マリリン」
まあ、普段のマリリンも可愛いから良いんだけどね。
お洒落センスも凄いし。
『それは地の力、鉄を引きつけ流星のごとく我が敵を討て、磁気誘導矢』
コリンナちゃんが呪文を唱えて矢を放つと、矢は蛇のようにくねって一番遠い的を打ち抜いた。
「やっぱり、磁気誘導矢は素晴らしいですわね。要人暗殺に使えそうです」
「し、しないからねっ!」
「残念です」
ヒルダさんは物騒だなあ。
私は待合室から腰掛けを出して来て座った。
お洒落組とヒルダさんも腰掛けに座った。
「いろいろな練習に使えそうですわね。楽器の演奏とか」
「多分避難所を兼ねているんだと思うけどね」
「なにか、天変地異が起こるのかしら」
まあ、シナリオ通りだったら二年生の秋とかにゾンビが王都にあふれたり、大悪魔が攻めてきたり、邪竜アダベルトが攻めてきたりで、この地下道も大活躍だったろうが、大悪魔以外は潰してしまったからなあ。
先のシナリオを知っているのはでかかった。
二年になったらプリシラ嬢を手なずけて大悪魔フラグも潰そう。
大災害は王都民に迷惑だしな。
こんな地下道は使われない方が平和でいいんだ。
そんな感じで、お洒落組とヒルダさんとおしゃべりをしながら、コリンナちゃんの弓の練習を監視していた。
「ああ、もう、疲れた」
「お疲れ様」
「とてもかっこ良かったですわ」
「素敵ですわあ」
「そう? えへへ、ありがとう」
まあ、ギャラリーが居たほうが励みになる感じだね。
これからも、私だけでも見ていてあげよう。
うん。
暇な時だけだけどね。
収納袋に弓矢をしまって、みんなで女子寮に向かう。
いつのまにか晩餐の時間だ。
エレベーターホールには派閥のみんなが待っていて、全員で食堂に入る。
「今日のお献立は?」
「本日の下級貴族食は、ビーフカツレツ、タマネギのサラダ、コーンスープ、黒パンだよ」
「おお、ビーフカツ!」
それは美味しそうだな。
お料理をトレイに取って、ケトルからカップにお茶を注いでテーブルに持っていく。
良い匂い、デミグラス系のソースがかかっているね。
お?
いや、匂いからすると中濃ソースだ。
ツバメ食堂のかあ。
いいなあ。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
パクリ。
うん、うん、うん。
ああー、美味しい。
外側はパリパリで、中はみっちり牛肉。
そして、中濃ソースの甘塩っぱさ。
いいねえ、いいねえ。
「あら、美味しいわ、ツバメ食堂のソースね」
「また食堂スタッフが行ったんじゃないかな」
「これは美味い」
「カトレアしゃん、お塩とってみょん」
みんなにもビーフカツレツは好評のようだ。
あー、美味しいなあ。
オニオンサラダはシャキシャキで辛いし、コーンスープは甘くて美味しい。
ああ、美味しい晩餐を食べると充実するなあ。
ちょっと酸味のある黒パンに味があうなあ。
夢中になって食べてしまうね。
ああ、美味しかった。
食器を返却口に持って行ってテーブルに帰るとダルシーがお茶を入れてくれていた。
ありがとうありがとう。
ジーン皇国の連中は今頃王城でレセプションパーティかな。
早く皇国に帰りやがれ、だな。
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