第1030話 爺を連れて王都へ帰る
そば茶と蕎麦クッキーを頂きながら、最近のホルボス村の状況をリーディア団長に聞いた。
特に大きい事件は無いようだ。
街道と村を繋ぐ道は石畳で舗装され、アシル親方は村の教会を作り直す準備に掛かっているらしい。
近所の民家の土地を買い上げ代替の家を建てている所らしい。
大教会と温泉のヘルスセンターを建てるので結構広く整地しないと駄目だろうな。
我が領地、ホルボス山は絶賛発展中のようだ。
なによりだな。
広場で、アダベルとトール王子、ティルダ王女、孤児たち、村の子供が遊んでいる声が聞こえる。
ここはいつまでも平和であって欲しいな。
共同浴場からホカホカになった爺さんが出て来た。
「さて、王都に帰るわ、またねリーディア団長」
「はい、行ってらっしゃいませ」
「うん」
ここは私の領地だから行ってきますなんだね。
私が宿屋から出ると爺さんがニコニコしながら近づいてきた。
「いやあ、良い湯だったわい、疲れがすっと抜けた」
「気に入って貰えて良かったわ、帰ろうか」
「そうじゃの、今晩はレセプションパーティだしな。しかし名残惜しい、ここには一週間ぐらい滞在したいもんじゃ」
「まあ、また今度来なよ」
「なかなか皇帝は外遊できんでの。出来たとしてもスケジュールがギチギチじゃわい」
そりゃそうだよな。
良い骨休めになったなら何よりだ。
私はヒューイの手綱を取って背に跨がった。
爺さんに手を伸ばして引っ張り上げる。
「帰りはヒューイ号か、贅沢だのう」
アダベルが鞠を持ってとことこと寄ってきた。
「おう、爺さん、帰るのか」
「ああ、背中に乗せてくれてありがとうなあ」
「なんか外国の爺だろ、また来たら乗せてやるよ」
「おお、それは嬉しいなあ」
アダベルはニッカリ笑った。
「守護竜さまも、気さくで良い子だのう」
「うん、善良で良い子よ」
《姉上はすばらしい》
みんなに褒められてアダベルはニコニコ顔でくねくねと照れた。
「じゃあ、暗くなる前に帰るのよ」
「わかったー」
私と爺さんを乗せてヒューイは空に舞い上がった。
「うむ、こちらも空を飛んでるという感じがするのう。次は蒼穹の覇者号に乗せてくれんかのう」
「いや、乗せる機会ねえから、また今度な」
「残念じゃ、ディーマーにさんざ自慢されてのう、素晴らしい内装だそうじゃな」
「あれは作った人の頭がおかしいのよ」
「そうであろうなあ」
ヒューイは羽ばたいて一路王都を目指す。
空を飛ぶとやっぱり早いね。
ヒューム川を飛び越せば、もう王都であるよ。
本当はいけないのだが、城壁を飛び越えて王城を目指す。
「王城でいいよね」
「かまわんぞ」
お堀上空を飛び、一昨日のように正門に着陸した。
「聖女である、皇帝陛下をまたお連れしたぞ」
「「は、ははあっ」」
門番さんが入れてくれた。
ジェラルドから話が行っていたかな。
そのままお城に入り、ヒューイを駆って坂を登って、エントランスへと侵入した。
今日は王様とか皇弟閣下とかはおらず、寂しい物だった。
爺さんはヒューイから下りた。
「今日は、ありがとうな」
「またな爺さん」
「今度、ジーンにも遊びに来ておくれ、歓迎するぞ」
「まあ、そのうちなあ」
「是非おいで」
まあ、週末には勝手にジーン皇国の領内の影魔物迷宮に行くけどな。
それは秘密なので黙っていた。
手を振ってエントランスを後にする。
さて、学園にもどろうかな。
《今日も楽しかった》
「またおねがいね」
《もちろん》
城門からヒューイを飛び立たせ、王城を巻くように学園へと入った。
自然公園上空から、廃教会を通って裏の方から学園に入ると障壁は無いようだ。
厩舎前へと着陸する。
今日はパスカル部長はいなくて、デュドネさんがお出迎えだ。
ケルピーも居ないから、ナージャと遠乗りに行ったっぽいな。
しめしめ。
「デュドネさん、ヒューイに鞍を付けてくれてありがとう」
「いえいえ、念話でお呼びになったのですか」
「そう、これからも、たまにそうするからその時はお願いね」
「かしこまりました、お心のままに」
うん、聖騎士あがりの馬丁さんは忠誠心が高そうで良いね。
私はヒューイから下りて、デュドネさんに手綱を預けた。
「じゃあ、またね、ヒューイ」
《うん、また》
私は厩舎から出た。
時刻はだいたい午後三時ごろだ。
集会室に行ってお茶でも飲もうかな。
集会室に行くと、お洒落組とヒルダさんがいてお茶を飲んでいた。
「マコトさま、お帰りなさい」
「皇帝めはアダベルさんに踏み潰されましたか」
「アダベルはそんな事しないよ」
ヒルダさんは口が悪いんだから。
ダルシーが現れて私にお茶を入れてくれた。
「そういや、ヒューイに乗って私が飛んでる時はダルシーどうしてるの?」
「それは、メイドの秘密でございます」
うむむ、謎だ。
ホルボス村でも呼べば来た気がするしな。
重拳で追っかけて来ているのだろうか。
コリンナちゃんが集会室に飛びこんできた。
「マコト! ホーリーシンボルが消えたぞ、ぎゃははは」
「ぎゃはははは」
私たちは爆笑した。
そうかそうか、チューしおったな。
お洒落組とヒルダさんはきょとんとしていた。
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