第1025話 水曜日はランニングから
「おーら、とっとと起きろっ」
「ぐぬうう、昨日は魔力を使って眠いんだ~~」
「さあ、今日は良い天気だ、ランニングに行くぞっ、コリンナ二等兵!」
「ニトウヘイってなんだ?」
「一番下の兵隊だ」
「ぐぬぬ」
コリンナちゃんはやっと起きてきて着替え始めた。
私はというともう完璧な運動スタイルである。
チョリと音を立ててビリケムホーリーシンボルをコリンナちゃんは首に掛けた。
相変わらす光が動いておるなあ。
なんなんだろうなこれ。
ま、いいや。
さて、着替え終わったコリンナちゃんを押すようにして205室を出る。
階段を下りて玄関に行くと体操着姿のカロルが居た。
うーん、いつも可愛いねえ。
さすがは私の嫁。
「あら、綺麗なホーリーシンボルね」
「うん、ビリケムさんがくれた」
「そ、そう」
カロルの、またマコトが変な事を言っている、という表情をいただきました。
ごちそうさまです、私の業界ではご褒美です。
寮の玄関を出てグラウンドでのんびりとした速度で走る。
やっぱり朝走るとしゃっきりするね。
「ぜいはあ」
校庭半周でもうコリンナちゃんの息が上がった。
なんか退化してないだろうか。
まあ、そういう時もあるね。
武術場の方へ折れて水飲み場で休憩、コリンナちゃんはがぶがぶ水を飲んでいる。
「なかなかコリンナは体力がつかないわね」
「地獄谷に温水プールを作って泳がそうとかも思ってるのだけど。そういやコリンナちゃん、泳げるの?」
「何がかなしくて水の中に入らないといけない。これまで一度も泳いだ事は無い」
「私も無いわね、王都周辺だとあまり泳ぐところもないし」
意外に不人気スポーツなのか、水泳って。
コリンナちゃんの息が整ったので、地下道に下りて、格納庫へ。
蒼穹の覇者号に乗り込んで、シャワー室で汗を流す。
三つブースがあるからいっぺんに浴びれて能率的だな。
さっぱりして出て来てダルシーに制服を着せてもらう。
ラウンジに出てお茶をのんびりと飲む。
「今日はなにか予定があるの?」
「特にない」
「特にない」
「弓を引け」
「よ、夜に引く」
「カロルは?」
「錬金よ」
まあ、今日は平凡で退屈な水曜日という事だ。
お茶を飲み干して、蒼穹の覇者号を出て地下道を通り女子寮へ。
途中カロルが的の所で引っかかったが、まあ的なのですぐすんだ。
階段を上がり、カロルが居るのでエレベーター、チンと音がしてドアが開くと派閥員は集まっていた。
おはようおはようと挨拶をして、みんなで食堂へ。
塩ポリッジを頼んでオマケのハムエッグと共に食べる。
うまうま。
その後学校へ登校。
玄関に人だかりがしていたので、なんだろうと見ると中間テストの順位が張り出されていた。
「お、コリンナちゃん五位だ、さすが」
「マコトは八位、カロルは七位か、ふ、勝ったな」
「にゃろー」
メリッサさんとか、マリリンとかのお洒落組も中の上ぐらいの位置にいるね。
一位はイヤミメガネのジェラルドであった、ケビン王子は第三位。
エルマーが四位だな。
カーチス兄ちゃんがいないぞ。
あった、真ん中だなあ。
凡庸な成績だ。
カトレアさん、コイシちゃんも三十位以内でA組圏内だな。
ジェラルドがやってきた。
「おお、コリンナくん、良い成績だったね」
「あ、ありがとうございます、マクナイトさま……」
コリンナちゃんが頬を赤らめて返事をすると、ジェラルドは驚いたようにコリンナちゃんを凝視した。
ん、なんだ?
エヘンとジェラルドは空咳を一つした。
「このままの調子なら二年生でA組に入れるだろう」
「そんな、私なんかが」
「平気だとも、偶然で五位の結果は残せない」
ジェラルドの視線はコリンナちゃんの胸元に釘付けだ。
もしもしポリスメン、と言いそうになったが、奴の視線はコリンナちゃんのちっぱいではなくて、ホーリーシンボルに向いているな。
「コリンナくん、そのホーリーシンボルは?」
「え、マコトからのもらい物ですけれども……」
「キンボールか、アレをどこで手に入れた」
「ビリケムさまの像の後ろの扉に入ってた。なんかヤバイ物?」
「ビリケムさまか、なるほどなあ」
「なんだよ」
「それは一度だけ願いが叶うという有名な伝説のシンボルだ、ときどきこの学園に現れると伝わっている」
「そりゃ、お得アイテムだなあ」
「願いを一つ叶えると消え失せて、またどこかで誰かの手にわたるという。コリンナくん、しっかり考えて願いを叶えたまえよ」
「わ、わかりました、ありがとうございます」
なんだよ、ジェラルドの癖に物知りだなあ。
「わあ、良いわね、何を願うの、コリンナ」
「願った」
「そういや願ったな」
「何を願ったの」
「……パスカル部長とナージャの恋が上手くいきますようにって」
「……」
「……」
「……」
私はコリンナちゃんの胸元のホーリーシンボルを掴んだ。
「無しで、先のお願いはキャンセルで」
「ノーカン、ノーカンっ!」
「いや、貴方たち、それは無理じゃ無いかしら」
私とコリンナちゃんは床に膝を付いた。
「なんというどうでもいい願いを……」
「まったくもって無駄願いを……」
そして立ち上がった。
「「まあいいや」」
アップルトンの下町っ子は切り替えが早いのだ。
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