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第1024話 弓の練習場を作ってから晩餐に向かう

 ナージャはぷりぷり怒りながら行ってしまった。

 青ざめたコリンナちゃんが残った。


「秋まで、死ぬ」

「死ぬ気で練習しろ」

「うえ~ん、弓の練習嫌だよう」

「黙れ、あきらめろ」


 弓道場までコリンナちゃんを引っ張って行き、弓道準備室にあった的を五本ほど収納袋に入れた。

 武術場の倉庫から地下に入り、待合室を抜けて地下道に出る。


 おー、意外に広くて一直線だな。

 人も来ないし良いんじゃないか。


「ここならエイダさんがコリンナちゃん一人でも入れてくれるし、弓を引き放題だ。磁力誘導矢とか大丈夫かな」

【魔力の導線にはシールドがありますので問題ありません、壁や床天井には鉄骨が入っておりますので磁力誘導も良く効く事でしょう】

「良く効いても二発しか撃てん」

「毎日二発うて」

「ぐぬぬ」


 さっそく的を置いた。

 せっかく五本あるんだから、いろいろな距離の的にしたいな。


「そこのラインを基準点にしよう」

「ここかあ」


 コリンナちゃんが魔導線が通路を横切る印であろう横線の上に立った。


「コリンナちゃん、メガネ機能で距離測ってよ」

「わかった、もうちょっと後ろで五十クレイドだ、そうそこ、そこに二本置いて、そうそう、そこから十クレイド下がって、うん、もうちょい、そこそこ、そこに二本、あと一本はもう十クレイド下げよう、うんうん、あ、そこ」


 距離計にもなるぐるぐるメガネはとても便利だぜ。


 コリンナちゃんの元に戻ると彼女は袋から弓を出して、矢をつがえた。


 シュパン。

 シュパン。


 一本は見事に当たり、もう一本は外れた。


「うーん、やっぱ鈍ってるなあ」

「練習しないからだ」

「うん、反省した。勉強に熱中してると弓とか面倒くさくてね」


 それは解るがさぼりすぎだ。


 コリンナちゃんはしばらくシパンシパンと矢を撃って、的に行って回収し、また撃った。

 だんだん熱中してきたようだ。

 端から見ても集中力が上がってきているのが解る。


「ああ、忘れていた何かを思い出しそうだ」

「忘れんな」


「そろそろ時間だ、磁気誘導矢を一回打っておわり」

「ヨシ!」


『それは地の力、鉄を引きつけ流星のごとく我が敵を討て、磁気誘導矢マグネットインダクションアロー


 コリンナちゃんが朗々と詠唱をすると足下に金色の魔法陣が広がった。


 シュパンと矢を放つと一度矢は地面に落ちるような軌道を取り、そして地を這うように飛ぶ。

 一番奥の的まで行くと浮き上がり中心を見事に射貫いた。


「ヨシ!」

「ヨシ!」


「さあ、晩餐に行こう」

「そうだな、マコト、ありがとう」

「何を言ってるのよ、お友達だから当然だよ」

「うん、マコトはそういう奴だ」

「そうなのだ」


 私はコリンナちゃんと顔を見あわせ笑い合った。


 さあ、晩餐だ。


「的は片付けなくていいのか」

「いいよ別に、わたしらしかこないし」

「楽でいいな」

「楽じゃないとやらないでしょ」

「それもそうだ」


 通路を歩いて、階段を上がり女子寮へと入る。

 大浴場の前を通り過ぎ、階段を上がって一階へ。


 エレベーターホールではみんなが待っていた。


「おまたせおまたせ」

「また飛空艇でおでかけしてたの?」

「うんにゃ、地下通路にコリンナちゃん用の矢場作ってた」

「ああ、練習用の、それは良いわね」

「楽に練習できる場所が無いと駄目だからね」

「そうね」


 カロルもにっこり笑った。

 コリンナちゃんはしかめっ面だ。


 みなでぞろぞろと食堂へ入る。


「クララ、今日のお献立は?」

「タラのソテーだよ、スープはオニオンベーコン、サラダは豆のサラダ」


 今日は魚か。

 タラは北海から塩漬けで来て、塩を抜かれてから焼く感じだな。

 あまり海の魚がこないから珍しい。


 わたしはトレイに料理をとって、カップにケトルから冷めたお茶をついだ。

 いつものテーブルに持っていく。

 あ、なんか良い匂いのソースが掛かってる、なにかななにかな。


 みなが席に付いたのでお食事のご挨拶。


「いただきます」

「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」


 パクリ。

 んーーー、いい塩梅の塩味だ。

 ソースはベリー系で甘酸っぱい感じ、タラの淡泊な味とよく合うね。

 スープはベーコンが入って味に厚みがある。

 うまいうまい。


 タラの甘塩っぱい味に黒パンの酸味が良い感じに合うねえ。

 豆のサラダも美味しい。


 あー、毎日の終わりにいつも美味しい物を食べられる幸せさよ。


「だけど、なんで急に弓の練習を再開したの?」

「皇弟の来訪に皇帝が一緒にきていて、ナージャも来ていたから」

「ああー、たしかにやってきそうね」

「やってきたぞ、つかまった」

「あら、大丈夫だったの?」

「いろいろあってごまかしたんだ、秋まで命が繋がった」

「そう、がんばってねコリンナ」

「もう、やるしかない」


 コリンナちゃんは固い決意を固めて黒パンを口に入れた。

 秋までに体力がもっと付けばいいんだけどなあ。

 水泳か? 地獄谷に温水プールとか作ってそこで泳がせるか?


 そういや、この世界、水泳とかしないのかな?

 水着スチルがあるから、水泳しないわけは無いんだが。

 マコトの古い記憶を探ってみてもあまり水泳した記憶が無いな。


 乙女ゲーム世界は謎に満ちているなあ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 日本ほど水泳が学校教育に入ってる国はないとか言いますからね。乙女ゲームとして水着イベントはあっても、普段の授業とか習い事とかで日本レベルで浸透してるわけではない、とかそんなところでしょうか。…
[一言] 水着回は…水着回はないのですか…
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