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第1022話 帰りの道でナージャを拾う

 私は皇帝の爺さんをその場に下ろし、ヒューイを回頭させた。

 ああ、今日も良く働いた。

 これで皇弟の謝罪なんて面倒なイベントは終了だぜ。


 正門に向けてトットコとヒューイを走らせる。


「あ、聖女マコトさまっ!!」

「もう帰ってきたぞっ!! 何しに行ったんだ」


 うるせいよ、門番さんたち。

 蹴散らすぞ。

 こちとら一仕事終えての帰りじゃい。


 トットコ走って王城正門を抜ける。


 そろそろ夕暮れだなあ。

 学園に戻ろうか、ヒューイ。


《そうだな》


 私は環状線に乗って南下していく。

 トットコトットコ。


 お、あいつも来ていたのか、ディーマーの警護は良いのか?


「おおい、ナージャ」


 ナージャはこちらをふり返り舌打ちをしおった。

 にゃろう、聖女さまになんだ、破門すっぞ。


「聖女マコト」

「何してんの? ディーマーの警護はしなくて良いの?」

「うるさいわね、関係無いでしょ、それよりも蛇メガネよ、再挑戦に来たの」

「あー、おー」


 コリンナちゃんと再戦に来たのかあ。


「じゃ、乗りなさいよ、私も学園に帰るから」

「ふふふ、良いの、あなたの側近が死ぬかも知れないのよ」


 私はナージャに手を出してヒューイの上に引っ張り上げた。


「それがさあ、コリンナちゃん練習さぼっててさあ」

「はっ?」

「あんたからカツを入れてくれないかな」

「え、あんな凄い才能なのにさぼってるのっ? エーミールはさ?」

「コリンナちゃんはエーミールのお弟子さんだけど、派閥は敵対だから常時指導はされてないよ」

「ゆ、ゆるせないっ!! 蛇メガネは私の一生のライバルと見込んだ奴なのよ、なに練習をさぼってるのよっ!!」

「その調子その調子」


 よしよし、コリンナちゃんにバクダンをぶつけてやれ。


 私はナージャを後ろにのせてトットコと学園に戻る。


 女子寮を通り過ぎ、図書館の脇に入って厩舎へと向かう。


「なんだか大きい学園ね」

「ナージャは学校は?」

「一昨年卒業したわよ。本当に時間の無駄だったわ」

「勉強は無駄にはならないよ」

「弓術に関係が無い勉強は嫌いなのよ」

「数学は得意そうね」

「弾道計算しないといけないから、あと大気の温度と膨張率とかでも使うし」


 これは興味があればどこまでも深く勉強するタイプだね。


「ナージャは彼氏とか居ないの」

「い、いないぞ、なんだよ、そんな話をするほどお前とは仲良く無いぞ」

「いやあ、結婚しても射手アーチャーを続けるのかなあ、とか思って」

「無論だ! 射手アーチャーこそ我が人生、未来の旦那様がやめろというなら家を出て行く、それが私だ」


 弓道を愛してるなあ。


 厩舎に着いた。


「おう、お帰り、お、美人さんだ」

「なんだ、馬丁風情が、気安く声をかけるでないわっ! これだからアップルトン男は駄目なんだ」

「おお? なんだか気性が荒いじゃじゃ馬だな」

「そこに直れ、下郎っ!! 無礼者めっ!!」

「ああ、ナージャ、こいつパスカル部長、騎乗部の部長で伯爵の息子、馬丁じゃないよ。部長、こいつはナージャ、ジーンの呪矢使い」

「おおっ!! 高名なキルヒナー家の一撃必殺のナージャさんか、初めまして、パスカル・ガトリングだ、会えて嬉しい」

「え、あ、え、伯爵令息?」


 ナージャは赤くなって困っていた。


「ご、ごめんなさい、き、貴族には見えませんでしたわ」

「ああ、俺がこんな格好をしているから悪いのであって、ナージャさんは悪く無いよ、平気平気」


 むむ、これはラブコメの波動。


「ナージャさんは弓道馬鹿、パスカル部長は騎獣馬鹿だから話も合うんじゃないか?」

「騎射とかもおできになる?」

「ええ、キルヒナー家では騎射も叩き込まれますわ」

「それは良いですね、今日は、ちょっと遅いか、明日、一緒に遠乗りをしませんか、キルヒナー家の騎射が見て見たいです」

「え、ええ、良いですわよ。喜んで」


 ナージャさん意外にちょろいな。

 あと、パスカル部長のくせに口説きが上手いな。

 さすが恋の国アップルトンの男だ。


「あ、ケルピーがおりますのね」

「俺の騎獣です、乗ってみたいですか?」

「え、ええ、是非」

「わたしは行くよー」


 ヒューイの手綱を馬丁姿のオノレさんに渡した。

 たのんだよー。


「おまかせください、聖女さま」


 盛りあがっている若い二人を置いて、私は厩舎を出た。

 くそう、コリンナちゃんにカツを入れてもらおうと思ったのに、失敗した。


 とことこと女子寮に向かう。

 ビリケムさまの祠の前にきた。

 依頼の紙包みは無いね。


――ビリケムさまも巻き込まれて大変でしたね、今後も生徒を見守ってくださいましね。


 私はビリケムさまの像に手を合わせてお祈りを捧げた。


 小さな白い光の球がふよふよと浮き、誘うように像の後ろに隠れた。

 な、なんぞ?

 ビリケムさまの像の後ろをのぞき込むと、なんかの蓋があった。

 蓋を開けると何か入っている。


 古びたホーリーシンボルだな。


「貰っていいんですか?」


 小さな光がうなずくように動いた。

 お礼かな?

 聖人さま由来のアイテムは縁起が良さそうだ。

 ありがたく頂きますね。


 私は再びビリケムさまの像に手を合わせた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そいや偽フランスだから、某マンガで「気をつけろ!(何歳でも)フランス男だぞ!」みたいに言われるような存在なのかこの作品の男子ども…w
[良い点] 愛の導き手・聖女マコトちゃん。 いい仕事しましたね。 ラブコメ波動!!ପ(♡̷ ॑꒳ ॑。)っ=͟͟͞͞ =͟͟͞͞⋆ ⑅✩。˚ [一言] おや、ビリケムさまからアイテムが? 恋の国ア…
[一言] 部長の子孫が将来回転式多砲身銃を開発するのだな
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