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第1017話 バタークッキー袋を背負って大神殿に向かう

 さて、放課後である。

 女子寮に向かうカロルと一緒に行って、205号室からバタークッキー袋を持ってくる。


 どうしようかな、歩いても行けるけど……。


《いきたい》


 そうかそうか、というかヒューイとの念話はけっこう届くな。

 可愛い騎獣におねだりされては乗って行くしかあるまい。


 私はクッキー袋を背負ってサンタクロースみたいになって、女子寮から厩舎へと歩く。

 うーん、ヒューイが勝手に鞍を付けてくれると楽なんだが。


《むり》


 そうだよねえ。


 厩舎に着くといつも通りパスカル部長が仕事をしていた。


「いつもいるねえ」

「おう、ヒューイ号か、ちょっと待ってろ、鞍つけてやる」

「ありがとう、助かるよ」


 パスカル部長がヒューイを出して来てちゃっちゃと鞍を付けてくれた。

 ありがたいありがたい。


「クッキー食うか」

「いただく」


 袋からクッキーを一枚出して、パスカル部長の口に放り込んだ。


「お、うめえな、このクッキー」

「マルコアス修道院のやつよ」

「おお、名高いバタークッキーか、ごちそうさん」


 私は制服のままヒューイに跨がった。


「乗馬服はよ?」

「近所だから着替えるの面倒臭い」

「聖女のくせに無精だな、いってこい」

「おう、またなー」


 わりとパスカル部長とは雑に付き合えるので良いな。

 らくちんだ。


 ヒューイの脇腹をかるくかかとで蹴って、とっとこ走り出させる。

 ガタイが大きいからヒューイの上から見渡すと自分が大きくなった感じになるね。

 大男のリックさんがいつも見ている世界ってこんな感じなんだろうなあ。


 校舎の横を抜けて女子寮の前を通り過ぎる。

 雨上がりの景色はなんか緑がみずみずしくて良いね。


 校門を抜けて環状線を行く。

 とっとことっとこ。

 すぐにひよこ堂前だ。


「おーい兄ちゃん」

「おお、マコト、なんだい」

「マルコアス修道院からバタークッキーを貰って来た、一枚食べて勉強しろ」

「おおっ、マジか!」


 私はクリフ兄ちゃんの口にクッキーを放り込んだ。

 兄ちゃんは目を閉じてもぐもぐ食べている。


「これはこれは、すんげいコストが高いな。だが良いバランスだなあ」

「メイプルシロップとバターの塩梅が良いんだと思う」

「うん、うちでも高級クッキーとして真似してみるか、ありがとうよ、マコト」

「いやいや、じゃあねえ」


 クリフ兄ちゃんに手を振ってヒューイを歩かせた。

 真っ白な竜馬なんか誰も乗ってないから注目の的だな。

 うしし。


 とっとこ歩かせて大神殿に着いた。

 アンドレとルイゾンが掃除をしている。


「聖女さんちーっす」

「ちーっす」

「真面目にやってるみたいね、感心感心」

「えへへ」

「聖女さんに褒められると嬉しいですぜ」


 でっかい男どもがはにかむとなんかキモいな。


 大階段を弾丸のようにアダベルが駆け下りてきた。


「クッキークッキー」

「あとでね、孤児院の女官さんに渡してからね」

「くそうくそう」


 私はアダベルに手を出してヒューイの上にひっぱりあげた。


「おお、ヒューイ元気かー」

《げんきだ、姉上》

「そうかー、それはなによりだ」


 ヒューイに乗ったまま大階段を上がる。

 回廊にゴブ蔵とカマ吉が居た。

 子供にたかられているな。


「ゴブ蔵、カマ吉」

「聖女さま、ごきげんよう」

「ヂッヂッ」


 二人は私を見て挨拶をしてくれた。

 回廊をヒューイに乗ったまま進む。


 さすがに女神像の前では下りた。

 しゃがんでお祈りをすると。

 アダベルもお祈りをし始めた。

 ヒューイも首を下げて祈ってる、のかな?


――女神さま、皇弟がうっとおしいので天罰を与えてください。


 なんとなく女神さまの表情が曇った気がするが、まあ気のせいだ。

 祈りとは自然な気持ちの発露なのである。


 ヒューイを引いて大神殿の東側へと入る。

 孤児院では子供達が大暴れしていた。


「マコねえちゃんっ!!」

「マコトおねえちゃんっ!!」

「ぎゃー、なんか袋を持ってるっ!!」

「クッキークッキー、さっき話した奴」

「「「わーいわーい」」」


 孤児院の女官さんがいたので近づいてバタークッキーの袋を渡した。


「あらあら、聖女さま」

「マルコアス修道院のバタークッキーです、おやつにだして上げてください」

「まあ、それは結構な物を、ありがとうございます」

「「「「クッキークッキー、バタークッキー」」」」


 子供達は大暴れだ。

 というか、アダベルはしれっと混ざって暴れるんじゃありません。

 

「ヒューイはここで子供と遊んでいてもらっていい?」

《いいよ》


 ヒューイは意外に子供の事好きだからね。


「マコトはどっか行くのか」

「巨匠のところへ用事でね」

「巨匠は食堂の絵が終わったよー」

「次は本堂の天井画を描くって」

「マコねえちゃんが描きたいなあって言ってた」

「今は本堂でスケッチしてる」


 子供に聞くと大神殿の情報は全てわかるな。


 私はヒューイを孤児院の庭に置いて本堂に向かった。


 本堂というのは人を集めて説教とかするホールだね。

 大聖堂の東側の奧にある。

 聖夜祭とかでは、ここで特別説法を私がしたりするね。


 とことこと歩いて向かう。

 大神殿はなにしろ前世の後楽園ドームぐらいあるからめっちゃ広いのだ。


 さーて巨匠はどこかな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 広さは後楽園(または甲子園)基準で高さは東京タワーかスカイツリー(または通天閣)ですね
[良い点] ♪ とっとこ〜歩くよ ヒューイくん 聖女を〜乗せてる ヒューイくん♪ [一言] ♪大好きな主と〜 神殿までお散歩〜♪ ヒューイくん、永遠のショタなマヌエルが前主人だから、小さい子と親和性…
[一言] 女神様を曇らせる聖女のおねがい!  こうかは あまりなさそうだ! 皇弟とかどうでもいい、そんなことよりアダちゃんかわよ。 ひよこ堂はソバボウロにバタークッキーと着実にお菓子に手を出してるね。…
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