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第1015話 遅れて午前の授業を受ける

 タウンハウスに行ってくるというカメリアさんを女子寮口まで見送った瞬間、私たちは我に返った。


「授業!!」

「あら、二時限目までさぼってしまったわ」

「貴重な歴史と国語の授業があっ」

「はやく登校しましょう」


 私たちは地下通路を逆走、図書館通路を使って図書館二階まで上がった。

 カウンターではルカッちがさぼって本を読んでいた。


「なんだねえ?」

「事情で遅刻、またね」


 図書館の入り口は二階にあって、校舎まで空中渡り廊下で繋がっている。

 二時限目終了の鐘がなるなか、私とカロルはA組の教室にすべりこんだ。

 コリンナちゃんはB組まで走っていった。


「今日はどうした?」


 ジェラルドが話しかけてきた。


「毒殺未遂の捜査をしていて遅れたの」

「うん? 毒飼い令嬢かい、犯人は捕まった?」

「にがしたよ」


 もともと小さなペット毒殺事件と、阿呆な令嬢に怒ったプロの毒殺メイドの事件の複合体で、毒飼い令嬢は居なかったんや。

 でも王家にしられるとゲッド家が偉い事になるから、逃がしたことにするのだ。


「まあ、キンボールが良いというなら良いのだろう」

「そうか、事件は収束したんだね」

「たぶんね」


 おっと、数学の先生が来た。


 午前の授業は、数学と魔術理論であった。

 うーん、魔力の発生理論が間違っているような気がするのだが、他に証拠が無いのでこれで通っているのだろうなあ。

 あまり考えてもテストで良い点は取れないので妥協して覚える。

 テストは真実を追究する場ではなく、みなが信じている情報を知っているか確認する場なのだ。

 うんうん。


 終業の鐘がなり私は背を伸ばした。


「なんか二時限吹っ飛ばすと変な感じね」

「ジェラルド、ノート見せて」

「いいぞ」


 ジェラルドの癖に快く一限目と二限目のノートを見せてくれた。

 羊皮紙に几帳面な字でびっちり書いてあるな。


 歴史は、ああ、王国国家が分裂して戦国時代みたいになる所か、国語は歌劇オペラの解説授業だったか。


「ありがと、助かった」

「きにするな」


 ジェラルドがにっこり笑った。

 こいつも最初の頃とは違ってなんだか当たりが柔らかくなったな。


「ういーっす、今日はどうする?」


 カーチス兄ちゃんたちB組チームがやってきた。


「ひよこ堂でパン買って自然公園に行こうか」

「そうだな」


 私たちが席を立つと、王家主従も当然のように付いて来た。

 いいけどよ。


 ぞろぞろと列を作って階段を下り、二年生と合流、玄関で三年生を吸収して私たちは校門を出てひよこ堂に向かった。


「また毒殺未遂だって? 多いな最近」

「まあ、もうやむでしょ」

「そうか、なんかやったな」

「なんかした」


 カーチス兄ちゃんはうんうんとうなずいてそれ以上聞いてこなかった。


 さてさて、懐かしの実家だ。


「お、マコト、いらっしゃい」

「兄ちゃん、景気はどうだい」

「ああ、守護竜洗礼式からお客が増えたな」

「そうか、それは何より」


 わたしたちは列に並んだ。

 今日は、わりと早く店内に入れた。


「今日は何を食べるかな」

「いろいろ選ぶのが楽しいのよね」

「お、新作だ」


 みなでわいわいしながらパンを選ぶ。

 私の今日のお昼は、聖女パンと卵サンドにした。

 父ちゃんにお金を払ってソーダと一緒に亜麻袋にいれてもらう。


 そういや、朝は雨だったのに上がったね。

 なので、自然公園の芝生はしっとりと濡れていた。


「ふふふ、こんな事もあろうかと、防水シートを持って来ているわ」

「おお、カロル、でかした」


 カロルが収納袋から防水シートを三枚出して濡れた芝生の上に引いた。

 防水シートは麻布にスライムの体液を塗り込めて干した物だ。

 耐水性が高く、船にも使われる優れものだ。

 もうすぐ梅雨でもあるしね。


 青い防水シートの上に腰掛けて、パンを食べ始める。

 まだ曇っているけど、空はどんどん明るくなってきているね。


「ああ、楽しいねえ」

「そうね、楽しいわ」

「ずっとこんなに平和ならいいねえ」

「そうね」

「むりだろ、マコトは事件を呼ぶ体質だから」


 それを言うなよコリンナちゃん。


 ああ、午後は何をするかな。

 絵でも描くかなあ。

 カロルの絵は完成したから、次はダルシーの絵だ。

 そろそろ額装してカロルに絵をあげようかな。


 もぐもぐ。

 聖女パンうめえ。


 放課後はクッキーを孤児院に届けなくては。

 腹ぺこドラゴンに大分食べられたが、みんなに当たるくらいは残ったし。


 頭上を覇軍の直線号が通り過ぎた。

 げげ、ジーン皇国の皇弟ご一行がきおったか。


「一日早いですね」

「早く破門を解いてほしいのかな」


 王家主従が飛空艇を見上げて暢気な事を言った。


 覇軍の直線号は王城の西に回り込み、主塔のあたりで姿を隠した。

 大ホールの横の着陸スペースに降りたかな。


「キンボールとの面会は明日以降になるだろうな、ゆるしてやるのだろう?」

「やだ、三日間雪の庭に立たせて待たせる」

「教会とジーン皇国の戦争になっちゃうよ」


 この世界ではカノッサの屈辱が起こってないからジョークは通じなかったか。

 それはそうだな。


 ちなみに前世のカノッサの屈辱であるが、ローマ王が謝ってきたので教会の勝ちみたいに思われるが、実は勝ったのはローマ王だったらしい。

 素直に謝れたローマ王の株があがり、三日間も雪の庭に立たせておいた教皇の心が狭いという感じになって、ローマ王の権威は大いにあがって願いを通した、らしい。

 何事もやり過ぎはいけない、という事だな。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ジェラルド、どうした!?Σ(゜д゜lll) スライム防水布?蝋引き帆布ではなくスライム防水布?ファンタジー!! [一言] マコトちゃんは江戸っ子でしたか。 解説ありがとうございますm(_…
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