第1009話 ガドラガ大玄洞を見る
メイン操縦室行くと、アダベルが大人しく艇長席で座っていた。
おお、偉いなと思って近づくと寝ていた。
私は起こさないように副艇長席によじ登った。
【コントロールを副艇長席に移管します】
「ありがとう、エイダさん」
眼下の雲が切れて砂漠地帯が見えて来た。
あの、変な形の台地がガドラガかな。
【ガドラガから通信です】
【ザザザ、こちらはコールサイン000547、ガドラガ飛行場管制塔、所属不明の小型飛空艇、所属と船名をお伝え下さい】
「こちらはコールサイン547498、聖心教所属、蒼穹の覇者号です」
【教会の御座船でしたか、ようこそガドラガへ】
「ガドラガ飛行場への着陸許可を願います」
【ガドラガ飛行場管制塔、蒼穹の覇者号の着陸を許可します。西側からアプローチして第三駐機場へ着陸してください】
エイダさんがカメラをクローズアップしてくれて、駐機場が見えた。
あれ、なんかエキゾチックな形の舟が止まっているな。
「外国の舟の隣に駐めればいいですか?」
【芙蓉の武官が乗ってきた高鳥舟、青鳳凰号の隣にお願いします】
うへえ、遠く芙蓉から飛空艇が来てるのか。
とはいえ、他に飛空艇は無いな。
「おっ、おおお、でっかい穴だ」
アダベルが目覚めて、ガドラガ大玄洞を見て声を上げた。
台地の上に噴火口のような大きな穴が開いていて、階段状に下に続いている。
あの穴自体がダンジョンなのだろう。
そして穴の周りに細々とした建物がならんでいる。
あれがガドラガの街のようだね。
なんだか小さく見えるけど、あれは穴が馬鹿でかいせいだ。
すごいな、絶景だ。
私は操舵輪を回し、指示された第三駐機場へと着陸させた。
「おお、変な舟だ、なんだあれは」
「芙蓉国の高鳥舟よ」
「芙蓉というと、すっごく遠くだな、凄いな」
私は伝令管を開けた。
「お知らせします、こちらは艇長のマコト・キンボールです。本船は定刻通りにガドラガの街に到着しました。乗客のみなさんは押し合わず、係員に従って下船してください」
ラウンジにいた五本指が移動をはじめた。
「到着かあ、意外にすぐだったな」
そりゃあんた、寝てたからだ。
と、言いたかったが黙ってた。
五本指とマヌエルがラウンジから下りてきて、下船するのが聞こえた。
私も副艇長席を滑り降り、アダベルが艇長席から降りるのに手をかしてやった。
「ありがとう、一人で下りられたが、礼は言う、なぜなら守護竜は礼儀正しいからだ」
「はいはい」
私とアダベルとリンダさんがタラップを下りると、五本指とマヌエルが待っていた。
ここがガドラガかあ。
なんとなく、空気が硫黄臭い感じもするな。
温泉とか湧いてそうだな。
「飛空艇はすげえなあ、聖女さん、もうガドラガだ」
「旅の情緒ってもんがねえぜ」
「そういう事を言うもんじゃないわよ」
「へへ、ちげえねえ」
クヌートはミリヤムさんにたしなめられて笑った。
「じゃあ、クヌート、マヌエルをお願いね」
「こいつの装備とかはどうするね」
「立て替えておいて、後で払うわ」
「いらん、俺は自分の力で稼いで装備を買う」
「まあ、時間もねえから、聖女さんの言うとおりにしろや、マヌエル」
「くそうっ」
まったく意地っ張りだなあ。
「一週間ぐらいしたら、ヒルダさんを連れてくるから、影獣洞窟に行きましょう。そこまでに本格テイム技術を習得できていれば連れ帰るわ」
「まあ、こいつの才能しだいだな」
「失敬な、俺は……、才能はあると思うぞ、根拠は無いが」
そうか、ウエストン家だからとは言えなくなったんだな。
「まあ、実績でしめせや。聖女さん、俺らはたぶん冒険者ギルドに居るからよ、そこでさがしてくれ」
「そうね、じゃあ、頑張ってね」
「わかった、あんがとよ」
「じゃあ、キルギス、姉ちゃんは行ってくる」
「ああ、頑張ってな」
「まかせろ」
五本指とマヌエルは街に向かって歩いていった。
「さて、帰ろうか」
「え、来たばっかじゃん、なんか食わせろ」
えー、別れた奴らを追ってガドラガの街にはいるの?
それはなんだかみっともないな。
「アダベル殿、ガドラガの周りでは農作物は育たない」
「お、おう、そうだなリンダ」
アダベルはリンダさんに言われて頭をぐるりと回した。
なんだか近くの台地は乾ききって赤い岩砂漠だな。
「だから、食べ物は全部人が運んだ物だ」
「本当なのか、それは」
「本当だよ」
「従って、ガドラガに美味い物なぞ存在しないのだ」
「な、なんだって!! マコトに騙されたっ!!」
「騙してねえしっ」
アダベルはがっかりしてしょんぼりしたポーズを取った。
キルギスが苦笑しながらポンポンと背中を叩いた。
「どこか、名産品のある街無いかね」
「寄って行くのかっ!」
「そうしないとあんたは納得しないでしょ」
「しないぞっ」
リンダさんがうーんと唸った。
「マルコアス修道院にでも行きますか?」
「何が食える?」
「バタークッキーが名産の修道院です」
「おお、それだーっ!!」
アダベルは一瞬で元気になった。
君は現金守護竜だなあ。
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