第1004話 ウエストン家の奴がきおったぞ
A組に戻って終わりのホームルームである。
二三の連絡ぐらいだね。
立ち上がって起立礼、チャイムが鳴り響いて放課後になりにける。
と、思ったら護衛女騎士のソフィさんがA組までやってきた。
「聖女さま、お忙しい所申し訳ありません」
「ん、なんですかソフィさん」
「アライド王国のウエストン家と名乗る方が面会にきています」
げーっ。
まあ、しょうがないか。
ヒューイは絶対に返さないけどな。
「一緒に行こうか?」
「あ、それは嬉しい」
カロルが来てくれるとなんだか謎の安心感があるからな。
カロルと一緒に女子寮へと向かう。
ウエストン家の人が待ってるのは寮の面会室だな。
ソフィさんの先導で部屋の中に入ると、髭の大柄なおじさんと、ケンリントン百貨店の店長さんが居た。
なんでや?
「私はウエストン侯爵家の当主、チェスターという、お見知りおきを聖女さま」
「こんにちは、マコト・キンボールです、こちらはオルブライト家のカロリーヌさまです」
「これはこれは、錬金の名家の、お目にかかれて嬉しいですよ」
百貨店の店長は自己紹介しないね。
居ない者として扱えってか?
私たちは対面のソファーに座った。
ソフィさんがお茶を持って来てくれた。
ありがとうありがとう。
「さて、いきなり本題に入らせてもらうが、わがウエストン家の財産である竜馬を返還ねがいたい、あれは盗み出された物だ」
「……只でですか?」
「ぐっ、い、幾らなら返還に応じてくれるのか、迷惑料として二百万程度なら出せるが」
「現在、竜馬のヒューイは私のテイムによって従魔になっています、お分かりですか?」
「首輪を取り替えればいいだろうっ」
あ、だめだこいつ。
馬鹿だ。
「古式テイムにて、テイムいたしました。ウエストン家のお方ならご存じでしょうがテイミング技術は勇者発祥です、ですので聖女の私も古式テイムが使えます」
「ばっ、古式テイムなぞ、うちの従魔の首輪に押されて滅び去ったはずだ」
ほそぼそと生きていたんだなあ、それが。
クヌートと知り合って、一から開発しなくてすんでよかったよ。
「ですので、もう私の物です、お返しする気はもうとうございません」
「教会は我がウエストン家と事を構えるというのかっ!!」
むかっ。
「おい」
「な、なんだ」
「まず、謝るのが先じゃねえのか、おい」
私は声を低め、下町訛りで恫喝してみた。
「そ、それは……」
「お前んちの一族の奴が、アップルトンの守護竜をかっぱらいかけたんだぞ、あやまる気はねえのか」
「い、いや、あいつはもう勘当されていて……」
「守護竜をテイムできてたら受け入れてたんだろ?」
「や、そ、それはそうだが、その、いや」
「謝罪はしねえ、だが竜馬を返せって、むしが良過ぎじゃねえのか」
「……」
「交渉の余地なんかねえよ、帰れ」
「く、くそう、覚えていろよ、お前は我がウエストン侯爵家を敵にまわしたぞっ!」
憤然と怒鳴ってチェスター・ウエストンは席を立ち、面会室を出て行った。
向かいの席には店長さんだけが残っていた。
「ええと、なんで帰らないんですか?」
「用事があるからですよ、聖女さま」
「な、なんですか?」
「女王さまからの伝言です、ウエストン侯爵家はこちらでよろしくやるので、竜馬の方は迷惑料として差し上げます。返却不要です。こんど竜馬でアライドに来て下さいね。との事です」
ああ、女王陛下のメッセンジャーとして来ていたのか。
店長さんは出されたお茶を一口飲んだ。
この人も食えない人だなあ。
「あのディラハンの人は返さなくて良いんですか?」
「要らないそうです、アップルトンでいかようにもしてくださいとの事です」
「優秀そうなのに」
「隷属の首輪事業がいささか大きくなりすぎでしてね。女王陛下は少し力を削ぐ事をお考えなのですよ」
「そうなんだ」
百貨店の店長さんは立ち上がった。
「というわけで、聖女さまとアライド王国には貸し借り無しという事でおねがいしますね。お騒がせいたしました」
そう言って、百貨店の店長さんは面会室を出て行った。
「ふーー」
「良かったわね、正式にヒューイちゃんがマコトの物になったわ」
「うん、それはめでたい。あの子は可愛いからなあ」
「うふふ、マコトは手に入れたものは大事にするからね」
「うん、大事」
ずずっとお茶を飲んだ。
わりと良いお茶だね。
「ソフィさん、毒飼いの被害はどうですか?」
「今はありませんね、ケリーさんの黒豹も元気になりましたよ」
「それは良かった」
黄金週間の途中で黒豹を狙ったということは、帰省してないって事よね。
とりあえず、こっちの捜査も始めないとなあ。
毒薬でサーチすべきかな。
んでも、無関係な人のプライバシーを探るのもなあ。
毒物が一番あるのはカロルの部屋だろうし。
毒と薬は紙一重だからね。
影ワンコがいればビリケムさまの祠を見張ってもらうのだけれど。
長耳さん……。
は、駄目だな。
どうも、複数で相談してやっている感じじゃない。
単独犯っぽいからね。
長耳さんは音だから一人でやってる事に感知力が低い。
なかなか痛しかゆしだなあ。
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