第1001話 いつも通りの学園生活が始まる
「うおーい、コリンナちゃん、起きろ、走るぞ」
「ぐぬぬ」
ベッドの中からコリンナちゃんが恨めしそうな目で睨んでくるが、しらぬ。
毎朝のランニングが心肺機能を鍛え、明日の健康を作るのだ。
私は運動着に着替えて運動靴を履いている。
コリンナちゃんはのろのろと運動着に着替えた。
「なぜ、雨は降らないのだ」
「梅雨はもうちょっと後だな」
コリンナちゃんを追い立てて寮の玄関まで走って行くと、体操着姿のカロルが待っていた。
うん、いつも可愛いねえ。
うしし。
「おはよう、マコト、コリンナ」
「おっはよー」
「おはよう……」
テンションが低いコリンナちゃんを追い立てて、校庭をランニングする。
わっせわっせ。
体が温まって汗が出て、気分が爽快になるね。
今日も良い天気だ。
コリンナちゃんはこれまで培ってきた体力がリセットされたようで、校庭半周であごを上げた。
まったく筋金入りの体力の無さだなあ。
「もう、一、二周走りたい所ね」
「コリンナちゃんが死んでしまうのでやめよう」
「うう、勘弁して~」
武術場の水場でコリンナちゃんは水をがぶがぶ飲んだ。
その後は武術倉庫の奥の階段から地下へ、そして格納庫の中の蒼穹の覇者号へ。
「おはよー、エイダさん」
【おはようございます、マスターマコト、オルブライトさま、ケーベロスさま】
シャワー室でざっとシャワーを浴びた後、制服に着替えてラウンジへ。
ダルシーがお茶を入れてくれた。
「また、地獄の日々が始まるのか」
「大げさな」
「大げさよ」
校庭を半周走っただけじゃんか。
「今日から平常の授業ね」
「そうだねえ」
「何か懸念の事は?」
「ジーン皇国の皇弟が正式に謝りにくるらしい」
正直面倒臭い。
ディーマー皇子は来るのかな。
帰ったばかりだが。
「聖女候補も大変よね」
「派閥的には協力出来る事は無いな」
「派閥的には、毒飼い令嬢かな、ちょっと気になる」
「学園内の問題か、でも、まあ、小物だろ」
「そうだけどね」
「ディラハンも、暗殺者も片づいたから、しばらくは平穏かもしれないわね」
「マコトの行く所が平穏であるわけがない」
「う、それはそうかも」
失敬な。
人を嵐を呼ぶ女みたいに言うなや。
とりあえず、火急の問題は無さそうだね。
落ち着いて学園生活を楽しもうではないか。
お茶を飲み終わったので、地下通路を通って女子寮に戻る。
エレベーターホールで派閥のみんなと合流して食堂で朝ご飯。
今日はナッツポリッジを頼んだ。
朝ご飯が終わったら、登校である。
一週間ぶりだね。
校舎に入ると玄関に人だかり、壁新聞の更新かな。
どれどれ。
『守護竜アダベルさまの洗礼式に女神さまが三百年ぶりのご降臨』
ああ、そんな事もあったねえ。
歴史に残る大事件だと興奮気味に記事は書かれていた。
階段を上がって、カロルと一緒にA組に入る。
やれやれなんだか久しぶりだぜ。
「キンボール、放課後、ジーン皇国の皇弟を迎え入れるための会議がある。出るか?」
ジェラルドが話しかけて来た。
「んー、特に希望は無いから、教会側と適当に打ち合わせてよ」
「そうか、解った。あと、アライド王国のウエストン家から竜馬を返せと抗議が来ている」
「は?」
何言ってるんだ、ウエストン家は?
「ヒューイを返すなんて嫌だけど」
「ウエストン家の言い分だと、犯罪者であるマヌエル・ウエストンがウエストン家の財産である竜馬を盗み出したものであるから、返還の義務がある、そうだ」
「国際法としてはどうなの?」
「盗まれた物の規定は無いなあ。普通は勝利した側が没収する」
「そうだよね」
さすがにヒューイを返す訳にはいかない。
あの子はもう、私の家族だし。
「今日の午後、ウエストン家の関係者が来るようだ、対応を頼む」
「めんどくせえなあ」
まあ、しょうが無いか。
しかし、迷惑を掛けられた側なのに、金をはらったりは業腹だな。
なんとかしてロハで通したい。
おっと、アンソニー先生が来た。
ホームルームがはじまった。
「みなさん、黄金週間はどうでしたか、学園に入って最初の長期休暇で楽しい思い出を作った人も多かったのでは無いでしょうか。今日からは、また普通の授業だから気を引き締めてくださいね」
うん、なんかホームルームも久しぶりで良いね。
どうやらテストの結果は水曜日に張り出されるようだ。
どれくらいの順位にいるかなあ。
楽しみだな。
月曜日の授業の、国語、数学、魔術理論、を無難にこなした。
そして武術場に行って、武道のお稽古である。
コイシちゃんと打ち合ったり、カトレアさんと試合したりした。
なんだか、カトレアさんがまた上手くなってるなあ。
カロルのモーニングスター術も精度が上がっている感じ。
私の双剣はなかなか上手くならない。
小太刀一本の方が良いんだけど、盾剣も捨てがたいのだなあ。
ちょっと伸び悩んで難しいところであるよ。
「悩んでいるみょんか」
「あ、うん、まあ」
「盾剣を捨てるみょんよ、動きはシンプルな方が良いみょん」
「ああ、でもさあ」
「感情と技術は別みょん。今でも命を賭ける戦闘だと、子狐丸一本みょん」
……。
あ、そういえばそうだ。
盾剣は、お義兄様が買ってくれたからって感傷で腰に下げていただけなのか。
「メインで使う武器はこれからも変わって行くみょん、思い切った方がいいみょんよ」
「そうだね……」
そうかー、盾剣は男爵家に飾って置くかな。
うん、ちょっと寂しいけどね。
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