第1000話 晩餐を食べてお風呂に入り黄金週間が終わる
暗い学園内の夜道をポトポトと歩く。
光球打ち上げてるから支障は無いけどね。
ビリケムさまの祠には蝋燭が灯って怪しい雰囲気だ。
紙包みが何個か像の前に置かれているけど、取りに来る人は居なさそう。
影ワンコを一匹張り込みに、と思ったのだが、返しちゃった事を思いだした。
毒飼い令嬢、誰なんだろうなあ。
夜の小道を歩く。
空には月、ああ、黄金週間も終わって明日から授業か。
早く夏休みが来ないかなあ。
ひっそりとした校舎の横を通って女子寮にたどり着いた。
入り口の詰め所に居る護衛女騎士さんに黙礼する。
ソフィさんの当番みたいだね。
「ソフィさん、寮に変わりは無かったですか?」
「はい、聖女様がいらっしゃらない間に特に事件は無かったですね」
ふむ、毒飼い令嬢は動きを止めているのかな。
命令さんの黒豹を殺すのに失敗したから警戒してるかな。
「ありがとう、よろしくお願いしますね」
「はい、もちろんです」
ソフィさんに頭を下げて私は女子寮に入った。
エレベーターホールまで行くと派閥のみんなが待っていた。
「お待たせ~」
「そんなに待ってないわよ、さあ、行きましょう」
みんなで食堂になだれこむ。
「いやあ、来たねえ、旅行はどうだった?」
カウンターのクララが聞いてきた。
「楽しかったよ、今日のお献立はなに?」
「黄金週間最後だからね、下級貴族食はビーフシチューだよ」
「おお、張り込みましたね」
下級貴族食の料金でビーフシチューは大変だったろうに、黄金週間で生徒の数が減ってたので最後は豪華にしたんだろうね。
たしかに連休最終日だけあって生徒の数がいつもと同じぐらいになっている。
さっそくトレイに料理を乗せていく。
今日のメニューは、ビーフシチュー、シーザーサラダ、小皿にコロッケ、そして黒パンであった。
ああ、良い匂いだなあ。
ケトルからカップにお茶を注いでテーブルに持っていって皆が揃うのを待つ。
旅行で色々ご馳走を食べたけど、やっぱり私は女子寮の食事が好きだな。
ほどほどに贅沢で凄く美味しいのが良いね。
皆が席に付いたのでお食事のご挨拶である。
「いただきます」
「「「「「日々の粮を女神に感謝します」」」」」
パクリ。
ん~~~、美味しい、肉質は確かに安っぽいんだけど、それを美味に変えるイルダさんマジックよ。
うんうん、ジャガイモも人参も美味しい。
幸せ。
「ああ、黄金週間も終わりかあ」
コリンナちゃんがしかめっ面で言うので笑ってしまった。
「今年の黄金週間は盛りだくさんで楽しかったわ」
「カロルって去年までは黄金週間何してたの」
「錬金よ」
まあ、そうだろうなあ。
カロル父よ、黄金週間ぐらい帰ってやれよ。
「女神さまも見れましたし」
「旅行もしましたわ」
「沢山思い出が作れましたわね」
「アンドレア家に寄って頂いて嬉しかったですわ」
旅の感想を言い合うのも楽しいね。
「そう言えばエルザさんのご両親は帰らなくて良かったの?」
「ああ、ごめんなさい、隣の領との境界争いが長引いてしまいまして、両親はまだしばらく王都におりますの」
貴族の領の境界争いは根深そうだねえ。
「終わったら教えて、週末にでも送って行くから」
「ありがとうございます、両親に伝えておきますわ」
派閥員の家族といえば、家族も同然だからねえ。
ブロウライト領の隣だと、王都から帰るだけでも結構時間が掛かるだろうね。
「本当に、領地から一週間掛けて旅していた距離を飛空艇だと二時間ほどですものねえっ」
「早くて楽ですわあ」
まったく飛空艇さまさまだよねえ。
さて、晩餐を完食したので、食器を返却口に持って行く。
テーブルに帰ってくるとダルシーがお茶を入れてくれていた。
ありがとうね。
「夏にはみんなで海に行こうか」
「あら、良いわね」
「ふむ、飛空艇に宿泊も出来るし安上がりだな」
蒼穹の覇者号はホテルにもなるからなあ。
便利便利。
「まあ、私、水着を買いませんと」
「今度、百貨店に買いに参りましょう」
お洒落組は水着を新調かあ、やるなあ。
ちなみに、このヒカソラ世界、中世なのに水着は普通にビキニとかセパレーツとかである。
おパンツはドロワースなのに、水着だけきわどいのは平気なんだよな。
不思議不思議。
食事が終わったので、みんなで連れ立って大浴場へと向かった。
旅の疲れを大浴場で落とすぜ。
服を脱いでいると、影犬とか影フクロウが居ないので何となく寂しい。
「さびしいですわ」
「そうね」
ヒルダさんもポーポーちゃんが居ないので寂しそうな顔をしている。
大浴場に入りかけ湯をして湯船に入る。
ふうううううっ、やっぱりお風呂は良いねえ。
疲れが溶けていくようだよ。
っても、この体は聖女ボディなんで、そんなには疲れ無いんだけどね。
でものんびりのんびり。
「明日から授業かあ」
「朝ランニングも復活じゃ」
「げえっ!」
げえじゃないよ。
コリンナちゃんは体力付けないとなあ。
「毎日」
「ん?」
「毎日が楽しいわ」
「わたしもー」
色々と事件が起こるけどさ、気の合う仲間が居て、好きな人が隣にいて、毎日が楽しくて良いよねえ。
そんな感じで、私の一年生の黄金週間は去って行ったのである。
第四章 中間テストとアダベルの洗礼式、おわり。
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