1 祭壇の秘宝と罠
「これ、本物か……?」
舟長が声を絞り出して言った。
仲間の誰もが言いたかった言葉である。
そして、もっとも答えを求めている言葉でもあった。
「ここが最深部かあ。ここで隠し部屋でも見つかれば、間違いなく偽物なんだけどね」
「この部屋には何故かトラップがない、つまり本物……!」
「ゲーム的に言えばアタリなんだけど、現実的に考えると本物がむき出しで置いてあるって変だよな」
「ここに来るまでの罠の多さからして、何かあると思うのが普通だが……。潔く諦めたのか? どこの侍ソウルだよ」
スカイアドベンチャーをここまで恐れさせているお宝の名は、ミスティックオーブ。
見た目は黒い球体で、伝聞が正しければ両手で抱えられる程度の大きさであるらしい。
なるほど、目の前に安置されているミスティックオーブ(仮)はかなりの大きさがあった。
「こうして待っていても始まらんな」
「いざという時のためにリバイブを唱えておくから、舟長取ってみて」
「オレが死ぬこと前提かよ。まあ、トラップがあるとすればそれだろうが」
リバイブは、死者を死の淵から呼び覚ます呪文である。
本気の魔法使いがリバイブを唱えれば、新鮮な死体も一瞬でぴんぴんしゃんしゃん。
それを知っているからか、舟長の手は迷いなくミスティックオーブ(仮)に伸ばされる。
それから無造作にオーブを掴み、何事もなく仲間の元へ戻ってきた。
「黒真珠、ゲットだぜ!」
「おまえ、リバイブ唱えてたんじゃなかったのか」
はしゃぐ魔法使いを一瞥して、舟長はコードネーム:黒真珠を道具袋に入れた。
ただの布袋に見えるが、この道具袋は非常に優秀で、中に入れたものは決して壊れなかったり、同じものが99個入っても破れなかったりする。
因みに、ちゃんと限界はある。
異なるアイテムが201種類入るとパンクしてしまう。
つまり、同じものとしてみなされない装備品や、汎用アイテム、敵からドロップした素材が200種類まで入る袋なのだ。
無限に入る袋よりはロマンがないが、スカイアドベンチャーはこれを愛用している。
「じゃあ、脱出するか」
「舟長、ここにあからさまに怪しい扉があるんだが」
「どれどれ……うわ、なんだこのフツーの扉は」
「一般的な民家とかにありそう」
「カギとか掛かってるの?」
「かかってねーみたいだ。どうする? 舟長」
罠が満載の来た道を戻るか、罠が満載かもしれない怪しい扉の向こうから脱出するか。
舟長は答えを要求された。
「来た道はさんざん探索したし、まだ見ぬお宝があるかもしれない。せっかくだからオレはこの茶色の扉を選ぶぜ!」
「茶番お疲れ様です」
「そりゃおまえらがプラカード持って脅迫してくるからだろ!」
プラカード担当の魔法使いと、脅迫担当の斧戦士は顔を見合わせた。
「だってぴったりの状況があるんだもの」
「魔法使いさんがこう言うので」
「言うので、じゃねーよ、めっちゃいい笑顔で斧押し付けてきただろ!」
「ははは、なんのことやら」
まだ言い足りない舟長を残して、斧戦士と魔法使いは先に行ってしまった。
剣士とアサシンも二人のあとを追う。
後ろから舟長が慌てて追ってくる音が聞こえた。