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時刻は夜、待つのは暇だった。
忍び足でゆっくりと、鉤爪を使い塀を越え、壁の突起に手を添えながらそろりそろりと音を消して登る。何時ぶりだ、侵入することなんてしばらくぶりだから鈍ってるかと思ったがそこまでではなかったようだ。まぁそれもそうだろうな、『サタン・ゲーム』というゲームで培った技術だからな。
名前が安直なくせに中身がえぐい脱出協力型のオンラインゲームだった。そのタイトル通り悪魔が俺たちプレイヤーで│お遊戯を楽しむといった外道的な発想なゲームだ。四肢に紐つけて操ったり、もいだりするのはもちろんマグマにつけたり肉を一切れずつ丁寧に切ったり、虫に食べられるところを採点したりと中々にヤバいやつだった。痛覚とか軽減してないリアルのそのまんまなので自殺者が出たり、SAN値が無くなり通り魔になったり。オマケには自身から悪魔に身を委ねる狂信者まで発生した。
んで、クリア条件は八階からなる地獄の最下層にある扉をくぐり天へと登ることでな。なんで地獄の下にあるかと言うと上下が反転してるからだな。つまり地上が地獄からすると下にあるって感覚だな。そして脱出するためには命懸けのステルスをしなければならなく、普通に死ぬ分にはセーブポイントからだが悪魔に遊ばれて死んだ場合は最初からやり直しと言う鬼畜ゲーでもあった……
いやいや、今はそんなことはどうでもいいんだ、あんな悪魔共の拷問はもう二度と喰らいたくないわ。サービス終了したゲームの話はやめだやめ。
「……なんとも呆気ない……」
今目の前でぐっすり寝ているのはこの邸の主である男爵である。名前は知らなくてもいい、すぐ死ぬからな。んで寝てる理由だが首を絞めただけでして、お食事中すいませんね……まぁそのおかげで食いすぎで死んだってなるからいいべ。
注射針を使い取り込んだら致死量ぽい量の2倍ぶち込んで、スッー……と邸から逃げます。
「│仕事│完了」
「まさかあの小瓶の麻痺毒全部入れるなんてねー」
「……ん?多かったか?」
「多すぎだよ、あれの半分でも過剰だったんだよ?」
思ったより麻痺毒が強力だった模様。ちょいと戦慄するわ、一体どんな素材使ってんだか……
「とりあえず死亡は……確認出来たよ」
「ほー、こっからそんなこと確認出来んのか」
「暗殺ギルドでは必須スキルだよ、はいこれ。暗殺ギルドのバッジね」
渡されたバッジは丸い形をしており、マークは血塗られたナイフって猟奇的だなおい。
「それと500万エテラ」
ポンと手渡されたそれをストレージにぶち込むと、お財布の欄の所に入る。おぉ……一気に増えた。
「おっほん……これにより最終試験を達成したヒフミさん、条件は既に達成されました。ようこそ、暗殺ギルドへ!」
覆面をずっと被っていたコーネがそれを外し、満面の笑みでこちらに向かって両腕を左右に思いっきり開いていた。
ここ、路地裏だぜ?
なおサタン・ゲームの重要な人物が昼寝(おおよそ数年間寝る)してたせいかプレイヤーたちは5階から7階まで超絶スキップできたので、クリア者は続出した模様。それでも50人程度というのだからどんだけ酷いかわかるだろう。むしろ恐怖に脅えたプレイヤーがログアウトしようとした瞬間に「遊ぼ」ってくる小悪魔が居た1階の方がやばい模様。
物理と魔法でステータス分けるのは暫くお待ちください、暗殺ギルドで特殊なクエストをクリアする必要があるのです。なのであと数話はなりません、はい。