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「ほぉ……ほおぉ!」
全身の感覚は今までのゲームより鮮明、既に技術力の高さがうかがえる。
手をグーパーとしながらもステータス画面を呼び出し、意識だけの操作を練習する。こちらもなかなかやりやすい、ストレージを開閉したりして感覚を覚えていく。
「あのー」
「……ん?」
「あ、やっと聞いてくれましたね」
「あんたは……えぇっと、チュートリアルAI、だっけか?」
「そうです、チュートリアル……やりますか?」
いつの間にか自身の目の前に居た光球を見る。やっと周りを見渡すとここはどうやら神殿っぽい。しかも周りには人がいないあたりこれあれか、隔離空間か。全プレイヤーにそんなもの使わせてんのか?なんつー無駄なことを……
んで、目の前の光の玉から聞こえた声はなんて言うか……合成音声と人の声を混ぜた感じ。
「一応概要だけは聞いておきたい」
「分かりました。まずこの世界の解説からしますね」
「前作とはほぼほぼ違うんだろ?」
「そうです。今作は前作とは別次元、別世界線と言った設定を元に作られており、前作とは一切関係ありません。アイテムが取れる位置も違いますし、そもそも存在しなかったりするものもあります」
これは前作からやり続けた人物にとっては辛いものがあるだろうな。多分地形とかも違うんだろう。
「それでこのゲームのストーリーですが、見つけ出してください」
「……ん?」
「このゲームにもちゃんとストーリーは存在しますが、それは公開情報では無いので探してください」
「つまり隠してると、それは……嫌がる人が多そうだな」
「この時点から厳選してるんですよ、我々はこの世界を楽しんでくれる人のみがこの世界にいて欲しい。なので文句を言うなら即座にやめてください、というのが開発陣の考えです」
「ぶっちゃけたなぁ……」
「あなた、どうせストーリーとか探さないでしょう?」
「分かっちゃった?」
「殺意パラメータとか設定してるんですが、その数値がちょっと異常ですよあなた」
ありゃりゃ、さすがに運営には隠せないか。殺意パラメータか、気になるなぁ……そういえばあれあるのかね。
「そういえばこのゲームには掲示板はあるのか?」
「あります、メニューの設定の上にあるはずです」
お、これか。スレ立ては既にされてるだと?早いなおい、ゲームやれよ。ちなみにメニュー画面の内容はこんな感じ。
─────
Player:ヒフミ
・ステータス
・装備
・スキル
・ストレージ
・クエスト
・マップ
・メール
・公式サイト
・掲示板
・設定
・ログアウト
─────
装備とかスキルが分かれているのはなぜわからないが、よくある感じになっている。
「それで、スキルの扱いや装備の仕方とかのチュートリアルはしますか?」
「戦闘は?」
「むしろあなた出来ないとか言わないですよね」
「まぁできるが」
「他でできるならここでも出来ますからご安心を、スキルの使い方や装備の仕方のチュートリアルを開始しますね」
チュートリアルはすぐ終わった。単にモンスターであるゴブリンを殺すだけだったからだ。
「いや、その後に集団戦やりたいって言って10体くらいいる群れを出させたでしょうが」
「うむ、楽しかった。久々にリアルなゲームに出逢えたよ」
「むぅ……あんな惨い殺し方あるんですねぇ」
「まぁ剣が途中で折れたからなぁ……」
30体くらいでチュートリアル用の剣が壊れたので素手で15体居る群れに突っ込んだのだ。
それで目玉が飛び出すくらい頭を圧縮したり、ゴブリンの攻撃をゴブリンで塞いだり、脳天を貫いて手に入れた脳みそをゴブリンにぶちまけたりと色々とやった。
「今後の参考になりますね、ありがとうございます……開発陣はどんまいですが」
「あっはっは、あんなリアルにしたやつが悪いんだ。内蔵掴めるようにしない方がいいぜ?」
「それはあなたが初期設定でリアル志向にしたからでしょうが」
「でもできるようにしたんだろ?」
「……ですね、開発陣は自業自得でしたか」
リアル志向というものはステータスの確認ができるが、数字が表示できないという矛盾の設定である。レベルとかも見れない、もう職業がせいぜい見れる程度。表示するとこう。
─────
ステータス
名前:ヒフミ
職業:剣士
─────
な?本来だったら数値とか見れるんだが見えないし、レベルも存在せず努力した分だけステータスが伸びていくという脳筋思考。
「正直これを選ぶ人がいるとは思いませんでした」
「大方ステータスに限界がないとかそういうことだろ?」
「いえ、本来のステータスは職業に合わせて一度にステータスポイントを振れる数が制限されているのですが、リアル志向はそんなものが存在せず鍛錬したとこが伸びていくのです。例えば腹筋や腕立て伏せをすればSTRが、走りまくればDEXが、攻撃を受け続ければDEFが伸びます」
「ゲーム内でそんなことする人居ないだろうなぁ……」
「なので選ばれるとは思わなかったのです。序盤はきついですが良いんですか?」
「リターンが大きいならそれでいい」
実際リアルすぎて批判食らうゲームもあるが、むしろそれがいいとか言う人もいる。このゲームのリアル志向はゲーム半分リアル半分というスタイルで結構バランスがいい。
「それよりもうプレイしたいんだが」
「あ、すいません。あなたのフレンドはもうゲーム開始してましたね……随分と個性的ですね……?」
「はは、あいつらはもう頭のネジがどっか行ってんだわ、気にしないでくれ」
「はぁ、分かりました。おっほん……それでは気を取り直して」
そういった光の玉は輝きを増し、思わず目をつぶる。そして目を開けるとそこには
「この世界の管理者たるターマニア・サンがあなたを歓迎しましょう」
俗に言う、絶世の美女とその後ろにある大きな扉が戸を開いて待っていた。
「ようこそ、『Fairy Fate Online』の世界へ」
そして楽しそうに彼女は笑った。