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ただいま、っと。
ふぅ……さすがに山奥だけあって町に降りるのは大変だ。ま、いい運動にはなったか。
「食料は1週間分あるから、しばらく降りなくていいな。発電機も問題なし、ネット回線も……よし」
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「あ、おはよう……なのかな?時間帯的にこんばんはだけど」
「おーう、俺には関係ねぇ話だな」
時間帯は夕方から夜になったばかり。てことはだいたい8時とか9時辺りか。そんでもって……なんだここ。森?
「ごめんね、寝ている間に連れてきちゃった」
え……プレイヤーがログアウト中ってNPCでも触れんの?え、まじで?
ちょっと待てつまり寝ている間に死ぬ可能性もあるというわけか?こ、これも検証案件だな。なんなんだこのゲーム。予想の斜め上を行ってくれる。
「はぁ、それで何故ここに俺を連れてきた?」
「鍛練のためだよ!」
「鍛練だと?」
「うん、今のままだとヒフミは上には行けないからね。ここで修行をしてもらいます」
なるほど、つまり強化イベントとかそう言った類のものか。
ならいいか、強くなりたいのはこっちもなんだ。
「てことで、ここから先は一人で生きてね!期間は1年間」
「は……?」
前言撤回。全然良くねぇ。まさかの地雷イベント……!?
「まずこの森の概要を説明するね」
「おいまて、人の了承を取らずに──」
「この森は世界的に見ても超危険な森なんだ。なぜなら冒険者ギルドで制定されているB級モンスターがうじゃうじゃいるんだよね。着いた名称は『原初の森』。この森だけは昔から環境が変わらなかった」
「おい!またか!またなのか──」
「でも安心して、この森は中心に行くほど強くなるんだ。つまり森の外周や入ったばかりの場所ならモンスターは弱いの。」
「…………はぁ」
「この森には結界があってね、許可された人物しか入れないようにしてるんだ。それを担ってるのはこの街の暗殺者ギルド、それが私達なんだよね」
「ふぅん」
「ちなみに暗殺ギルドの支部の中で私たちは上位の強さを誇るよ」
「なるほど」
話が終わったのか、こちらに様々な道具を投げ渡してくる。
火打石に数日分の非常食。短剣に新しい剣。何に使うか分からない石にポーション類。それらが詰め込まれた皮袋を渡された。
「それとこれも、これを腕に着けてね。これがないと森には入れないから」
銀色に輝く腕輪を腕に付ける。これがねぇ。確かになんか色々と書いてあるな。
「これは課題ね」
どっから出したその大量の本は。あん?『初級者向け魔法教本』だぁ?
えぇっと。待て、他の本にやばい文字が見えたぞ。禁忌?そんなものまでやらせる気か?
「全部覚えてね」
楽しそうに言うな。これやばいぞ。覚えきれるか?無理そうだな……
「そして最後にあなたにここで修行をさせる理由がひとつあります」
「なんだ?いきなり改まって」
「この森であなたには物理職と魔法職。両方担ってもらいます」
「……サブ職とかそういうことか?」
「いえ、どちらもメインです。言うなれば切り替えができるようになってもらいます」
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《レジェンドクエスト:戦神の寵愛》
クリア条件:戦神より寵愛を受けよ
報酬:暗殺ギルド上位の地位・専用装備・専用職
《受理しますか?YES/NO》
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「なるほど理解した。何かしら俺にやらせたいのか」
「まぁそうだね。内容はクリア出来てから教えるよ」
「分かった、やってやろうじゃねぇか」
久々に燃えるな。
しっかし1年以内か……いや、なるほど。そういうわけか。
この人の家、山奥でしかも道のない場所にあるんですよ。
それで森をノンストップで駆け下りるのを運動って言ってるんですよ、それ普通の人だったら拷問もいいところだぜ……
さぁ!ついに始まりました!この物語の最重要部分がこれより始まるぜ!
多分ダイジェストになると思う。




