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異世界チーレム主人公は私の敵です。  作者: ブロッコリー
第一章 リーベルテ
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第四十五話 アリシア

 リブルさんに言われた通り、人をある程度一極集中させなければ、毒を浴びせて、人を気絶させることにより犠牲者を出さないようにするという作戦を成功させることができない。ともすれば、手は一極集中させることしかないのだが、どうすればそのようなことができるのだろうか。こちらが毒を使っているという情報はそれを流す人がいないがために、まだ、知らないはずだ。それが多少なりのアドバンテージをもたらすであろうことはわかるのだが、それにより、何かが解決するとは到底思えない。

 一番後ろにアリシアがいて、その前のほうに兵士たちがばらばらに進んでいて、一気に集めるのは難しそうだ。いっそ、大声で呼んでみるか? ここに集まれーって。

 ふと浮かんだバカみたいな考えに自分が嫌になった。もっと真面目に考えろ。私。

 桜さんがこちらに視線を送ってくる。なにか案がないかということなのだろうか。私はそう思い、首を横に振る。それを見た彼女はたいして動揺もせずに、また、アンさん、シュワイヒナの順に視線を送る。

「ていうかリブルさんがいけばいいのに」

 とシュワイヒナが小声で不満を漏らした。

 確かにそうかもしれないが、マジックポイントが足りないのだろう。だが、そうだとしても、ここに彼がいたら楽なことに変わりはない。

 とは言いつつも、そんなことばかり考えていれば状況が進まないのも真実だ。

 数はざっと二百と少し。他の部隊と大差ない。

 リブルさんの言っていた「少しの間」とはどれくらいの間のことを指すのだろうか。それが分からない限りはどうしようもないような気がする。いや、一気に全員に浴びせれば、それで解決する問題ではあるのだが。

 やはり、先ほど浮かんだ大声で呼ぶ、が一番いいのかもしれない。やってみる価値はある。いや、でも、それに引っかかるようなバカばかりだろうか。

 いや、逆転の発想だ。来なければいけない状況を作るしかない。大声で呼ぶかのように注意をひくしかない。

「分かりました。行きましょう」

 そう桜さんに告げる。

「そう、信じるわ」

 アンさんは既に私の心を読んで、この方法が分かっているはずだ。

 アンさんのほうを見ると、彼は少し悩むような表情を浮かべたが、納得してくれたようだ。

 そして、私たちは飛び出した。その部隊の真ん前に。

「敵よ! 殺せ!」

 アリシアが叫び、それに合わせ、彼らが走ってくる。

「桜さん!」

「したいことはわかったわ!」

 そう言ってくれて、少し安心する。なんとか、なりそうだ。

 次々と襲い掛かってくる兵士の攻撃を避けながら、人を集めていく。すんでのところで攻撃を避けるのだが、さすがに一分もしないうちに無理が来る。しかし、そのうちにかなりの人数が集めってくるために、毒が使える。

「桜さん、毒の瓶、投げて!」

 そう叫ぶと、それにこたえて、瓶が宙を舞う。それを跳んでから、つかんで、空中で開けた。

「旋風!」

 そう叫びながら、瓶の中身を空中に放った。それらは風に乗って、空中を回転しながら回っていき、兵士たちの顔に直撃した。

「なんだ!」

 困惑の叫びを出すが、彼らはそれを浴びた時点ですでに運命が決していた。

 彼らは次々とその場に倒れ、異常事態に気づいた兵士たちは一目散に逃げだす。だが、彼らの走る速度よりも圧倒的に速い速度で吹く風から逃れることはできない。すぐに倒れて行き、その場に立っている人間が次第に減っていく。

 そして、周りに立つものがほぼいなくなったとき、私は風魔法を使い、毒をアリシアのほうへ向けた。

「あんたたち! 私を守りなさい!」

 とアリシアは叫んだが、わざわざ彼女の盾になるように動く兵士などいない。それに、そんなに忠誠を誓っているものたちは、すでに倒れている。ゆえに、彼女はもはやたった一人といっても過言ではない。

 次の作戦に影響するといけないので、逃げるほうから、先に毒を浴びせていった。おそらくそれが正しいのだろうと判断したがゆえの行動だったし、実際に最善手であることには変わりないのだろう。しかし、それをもってしても、アリシアには大きなアドバンテージがあった。

 彼女は逃げ出した兵士に見切りをつけ、弓を持つ。そこで、私たちは明らかにおかしい点に気づいた。彼女は矢を持っていなかったのだ。

 そのことに驚いたが、私は集中していなければならなかった。風の吹く方向を間違えてしまえば、兵士を取り逃がしてしまうかもしれない。だから、アリシアの矢について考えながらも、意識のほとんどは、兵士たちのほうへ向けられた。

「チェイスアロー!」

 アリシアはそう叫んだ。それとともに、光の粒子が彼女の右手に集まっていき、「矢」を形成していく。

 あれが彼女の固有スキルであろう。だが、ただ、矢を出すだけの能力であるものか?

 そう考えながら、風魔法を使う。兵士は全て倒れ、残すはアリシア一人。

 もうあまり残っていない毒がアリシアのほうへ飛んでいく。それを彼女は矢をつがえながら、走り、避けていく。体が小さく、彼女は小さく動くことができるために当てづらい。そして、木の後ろに隠れた。風を細かく動かして木の後ろへ飛ばそうとするが、できない。毒は木にあたってしまった。それほどまでに小回りがきくようなものではないのだ。そして、木の陰から出てきたアリシアは矢をまっすぐこちらへ向けていた。

 まずい。彼女は既に手を離していた。だが、それは視認可能である。そして、距離もかなり離れているのだ。

 まっすぐ飛ぶ矢は軌道を読みやすい。だから、私はたいしてその軌道を疑いもせず、横へ身を動かした。そこで、あの矢が光の粒子から作り出されたことを思い出す。その光の粒子はおそらくマジックポイント。順当に考えれば、あの矢にも特殊効果が存在している――

 気づくのが遅かった。

 私のいた場所を通り抜けるはずの矢は、私のほうへ軌道を急激に変えた。

「なっ――!」

 視界の端の方でアリシアが続けざまに三本の矢を放ったのが見える。それらは、途中で軌道を変え、それぞれ、シュワイヒナ、アンさん、桜さんのほうへ飛んで行っているのだ。

 そんなことよりも、まずは自らのほうへ飛んできている矢への対処が先だった。矢は間違いなく、胸を狙っていた。「チェイスアロー」追跡する矢。それが彼女の固有スキル。

 私は剣を抜き、矢を斬った。自分でもびっくりするくらいのスピードで剣を引き抜いていた。それで、飛んできていた矢をすぐに斬ることができたのだ。

 だが、真っ二つに斬れた矢は後ろ半分を落としたまま、前部分だけは速度を落とさずに、こちらへ向かっていた。

 剣を胸の前に持ってきて、矢を防ごうとする。しかし、矢はすぐに軌道を変えた。あれほどのスピードを保ちながら、変えれる軌道ではなかった。だから、おそらく、それもその固有スキルの効果。私に当たるまでは止まらないと言うことなのか?

 それを意識したとたんに、体が恐怖に震え、頭がパニック状態になる。私は剣を胸の前においたまま、動けなかった。

 そして、大きく方向を転換した矢は私の顔へ一直線に向かってくる。

 その時だった。私の頭にこの状況を最善の形ではないにしろ、回避する方法が頭に浮かんだ。そして、もはや考える間もない。すぐに私は行動へ移した。

 手に激痛が走った。だが、それは私の命を助かったことを示している。

 私は手を貫かれることにより、それを受け止めたのだ。

 手から滴る血の雫が、私の顔に落ちた。

 矢の先はもう目と鼻の先。あと少しで触れそうだった。

 それでも助かったという安堵からか、私は気が抜けて、その場に座り込んでしまった。しかし、すぐにアリシアの追撃が来る。

 私は矢を引き抜いてから、乱立している木をうまく使いながら、それを走ってよけ、状況を確認する。

 アンさんは腕に矢が刺さっている。回復魔法を使えば、このくらいの傷はどうにかなる。そういう判断だったのだろう。

 また桜さんは足に矢が刺さっている。そこから動けないようで、アリシアは彼女に今、標的をつけたようだった。

 そして、シュワイヒナはというと、彼女は速度を緩めない矢をつかんでいた。その美しい髪を暴れさせながら、なんとか耐えている。それでも限界のようだった。

 早く助けに行きたい。だが、かくいう私も限界だった。左手から滴る血は留まることを知らない。それだけなら、まだいいのだが、私も矢に追われている状況。しかも、地面は兵士が大量に倒れており、足の踏み場に困る。

 また、桜さんにも矢が刺さっているのを見ると、ワープですら避けられないと言うことなのだろう。やはり、マジックポイントが切れるのを待つか、アリシアに固有スキルを解除させるしか、完全によけきる方法はないようだ。

 矢を無視して、突っ切ったとしても、それは心臓などの急所を狙ってくる上に、スピードは私の走る速度よりも速い。

 接近した上に、後ろに回り込めば、とどめを刺すことはできそうだが、一体どうすればそんなことが可能だというのだろうか。

 毒を当てられなかったことを後悔する。しかし、後悔したところでなにも生まれない。それならば、早く解決法を探さなければ。

 そこで、バランスを崩し、矢は私の右腕に突き刺さった。手のほうを滑る血が生暖かい。少しだけ遅れてやってきた激痛に身もだえしそうになるが、歯を食いしばって、木の陰に隠れた。腕に刺さっている矢を引き抜くと、ごぼっとさらに血が溢れだす。そこをこれまた穴が開いた左手で押さえながら、頭を冷やす。

 出血は多い。だが、まだ戦える。

 先ほどの矢は私に刺さると、動きを止めた。それから察するに、相手に刺されば、動きを止める矢のようだ。それが分かったところでと言われると、確かにそうではあるのだが、知ってて損はないはず。

 シュワイヒナは手に矢が刺さっていたが、傷は深くないのか、血はあまり出ていない。だから、どちらかというと状況が大変なのは桜さんとアンさんだ。桜さんに関しては回復魔法があるから、まだなんとかなるが、アンさんとアリシアは相性が悪すぎる。遠距離戦はアンさんに向いていないのだろう。しかも回避不能ともなれば、状況はさらに深刻化する。

 三人とも木の後ろに隠れていた。そこにアリシアが

「なーに隠れているのさ。私を倒すんでしょう?」

 と楽しそうな声を上げながら言った。だが、隠れている人を引っ張りだす必要があるということは、アリシアが視認した相手にしか、矢を放つことができないということなのだろう。

 情報がかなり、集まってきた。これなら、まだ可能性はある。

 アリシアは木の上に飛び乗り、そこで、矢をつがえた。

「ほーら、出てこなかったら、いつまんでも終わらないよお。出てきてよお」

 こちらからは、矢を出したところが見えているのだから、出たら、矢で撃たれることはわかっている。だから、こんな中で出るわけにはいかない。

 しかし、それでは直に失血で気を失ってしまう。そしたら、抵抗すらできずに、殺される。そのため、どこかで決着をつけなければならない。

 我慢比べか。しかも、相手のほうに圧倒的アドバンテージがある。

 アリシアはさらに、三本の矢を出す。

 もはや、手は一つしかない。四人同時で、飛び出すしか。

 いかに、相手の能力に追跡機能が携えてあったとしても、数の有利は変わらない。

 視認される前に、誰かが、アリシア本人のところまで到着しなければ。

「うわあああああ!」

 私は叫びながら、走り出した。大声で叫びながら、走れば、人は注目する。

 そんな私の姿を見て、シュワイヒナも走り出す。アンさんも、桜さんも。

 私がアリシアの正面に、そして、残りの三人が、後ろへ。

「チェイスアロー」

 アリシアが矢を放つ。それは、私の胸を目指して、一直線に飛び出す。だが、ここで怯んで、立ち止まるわけにはいかない。

 左手で剣を持ち上げ、矢を防ぐ体制をとりながら、走る。

「そんなのに意味ないのに」

 アリシアが嘆息するが、こちらとて、時間が稼げればそれでいいのだ。

「肉体強化!」

「アースロック!」

 シュワイヒナとアンさんの叫びはほぼ同時だった。そして、アリシアの真後ろからは桜さんが蹴りかかかる。

 これで決まりだ。私に矢が刺さるよりも前に、決着がつく。

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