エピローグ
あれから、三年が経ちました。
国は三年で一変しました。今や、世界屈指の幸福大国。だれも見捨てない福祉制度は画期的と評されて、私たちの真似をする国も現れ始めました。どれも、これも凛さんのおかげです。私はただ王として、絶対命令を下すだけ。どうにもならない問題を王の権力で解決するというのはやや強引な方法ではありますが、凛さん主導なので、実際のところ、私は傀儡の王だったのかもしれません。
全てのシステムを変更し、最後に、私たちは国の中心から下りました。とはいっても、私は国王として君臨し続け、凛さんは、実質的な最高権力者として国のトップに立ち続けています。しかし、民主主義のシステムを採用し、政府は国民の手によってつくられています。私たちはただ、道を踏み外さないように、見守るだけ。まだ、実験的なシステムですので、こういう方法を取っていますが、先の短い私たちなので、こういうのが今後続くことになるでしょう。
というわけで、私たちは都会から離れた閑静な場所で、二人で暮らしています。
農業をして、時々、二人で買い物に出かけて、っていうなんともない普通の暮らしです。けれど、そういう普通が最も幸せだなって最近、心の底から思うようになりました。
いえ、本当は凛さんと二人なら、なんでも幸せなのかもしれません。
ええ、そうでしょう。だって、凛さんの笑う顔は本当にかわいくて。凛さんが幸せでいてくれると私も嬉しくて、幸せで。
きっと、凛さんも、私が幸せでいることが嬉しくて、幸せなんでしょう。
そういう二人の日々が愛おしくてたまりません。
これからも、ずっと続いていければいいかなあって。そう思うのです。
「……凛さん、まだ起きないんですか」
朝の陽ざしが気持ちいい午前七時。凛さんはまだ眠っていました。随分と幸せそうな寝顔です。そういう姿を見ていると、私もつい、頬が緩んでしまって、なんでも許したくなっちゃいます。
「凛さん」
頭を撫でてあげると、少し嬉しそうに体が反応しているのも、たまりません。
凛さん、本当に今までお疲れさまでした。
だから、今だけは、いいえ、これからもずっとゆっくりしてください。そして、ずっと、私のそばにいてください。
私も起きたばかりなのに、少し眠くなってきました。今日くらいはだらだらしたって、許してくれますよね。
「おやすみなさい」