卒業アルバムと違和感
「お待たせしました」
田中先生は職員室から卒業アルバムを取ってきた。
「わざわざありがとうございます」
田中先生はアルバムを開き白井君の写っている写真を見せてくれた。
「これが分かりやすいですかね。いつもこんな感じで明るく振舞っていました」
卒業アルバムの中には田中先生が言っていた通りの白井君が写っていた。
写っている写真のほとんどが満面の笑みで、学校生活を謳歌しているようだった。
友達と肩を組んでいる写真もあり微笑ましい光景だった。
「私の知る白井君はいつもこんな感じでしたね」
「この写真を見る限り本当に明るい子のようですね。これを見たら暗い子だなんて発言は出ませんね」
私は卒業アルバムを見ているとありえない写真が存在した。
「どうしたんですか?」
田中先生が急に私の表情が変わったのを見て声をかけた。
「いや、なんでもないです」
私は取り繕うようにそう返事した。
私は卒業アルバムに載っている一枚の写真に衝撃を受けたのだ。
白井君が中央におり友達5人と笑いながら肩を組んでいる写真。
それならさっきも見たので特段驚くことでもないのだがメンバーがおかしいのだ。
友達5人というのが、白井君をいじめている5人組なのである。
ここまで仲の良い5人が白井君をいじめているのだ。
現状からは一切想像つかないこの写真に思わず驚いてしまった。
「これっていつ頃の写真なんですか?」
「この写真?これは3年の始めの写真ですね。転校する2ヶ月くらい前のやつです」
2ヶ月前?別れる直前の話?と困惑していると田中先生が話を続けた。
「この6人は特に仲が良かったですよね。小学校から仲が良かったようで夏休みに入るたびに皆で海に行ったり山に行ったりしていたそうですね。他の人たちとも勿論仲良くしていましたがこの5人は特別って感じでしたね」
私は余計に混乱した。現実と真逆だからだ。
転校する直前までに何かがあったのか?それとも転校してから?
そうでなければ元々いじめられていた?うまく隠していただけなのか?
じゃあ今の見つけやすいいじめとは何なのか?
その後田中先生と彼について色々話したのだが、この一枚の写真のせいでその話は頭に殆ど入っていなかった。
私は直接この話を聞くべきなのか聞かない方が良いのか結論が出なかった。
ひとまず私は今日話してもらったことについて色々と考えてみることにした。




