最悪の現実
私は彼の帰りに付き添った後学校に戻った。
もう五時を過ぎており帰ってもいい時間だったが、一年一組の担任は残っていたので先ほどの話をすることにした。
「遠藤先生。ちょっといいですか」
「卯園先生か。何かあったんですか?」
「はい。先程忘れ物を教室に取りに行っていた時のことなんですが、あなたのクラスの生徒がいじめが行われていました」
「いじめか。被害者は白井君かな」
「知っていたんですか」
「いや、白井君を見ててそうなんじゃないかと疑いを持ってただけだよ。君の話のおかげで確証に変わった」
「じゃあ一緒にいじめを止めましょう」
「そんなことする必要はない」
「どうしてですか」
「いじめを止めるってことはいじめの存在を認めるってことだ。そんなことが明るみに出てしまったらこの学校がどうなってしまうか」
「そんなことのためにいじめを放置しろってことですか」
「そんなことではない。学校の評判が下がると我々教師陣の生活に関わる。この学校が無くなってしまえば私達の仕事が無くなるんだ。それに私のクラスでいじめが出たなんて広まれば私の評価が下がる。それなのに止めるだなんて馬鹿馬鹿しい。たかが一生徒のために自分の身を削るなんて馬鹿馬鹿しい。君も金輪際この話には関わらないことだね」
「それでも止めるのが教師の仕事でしょう!」
「そもそも止めたところで無駄だよ。逆にいじめが酷くなるのが関の山だ。そもそもいじめを完全に止められたとしても次のターゲットが生まれるだけだ。高校生なんて誰かをいじめる人といじめられる人、そしてそれを傍観する人間しかいないんだから。それに、いじめはいじめられる側にも問題があるんだよ」
「もうあなたでは話にならない。校長に直接話をしてきます!」
私は遠藤先生に話したところで何もかわらないと感じ校長の元へ話に行った。
しかし、結果無駄だった。
校長も遠藤先生側だった。いじめは解決する必要はないと。
この件には関わるなと話を切り上げられた。
教師は生徒を守るためのものではないのか。
いじめは全力で止めるものではないのか。
私は今まで憧れていた教師とは何だったのか。
自分の生活を守るために働いているというのは分かる。しかしそのために誰かを犠牲にしていいものではない。
私は教師生活2週間目に大きな決断を迫られた。
今後教師として正しい行動をとるか、自分の保身だけを考えて行動するのか。
しかし私は迷うことはなかった。
教師として正しい行動をするべきだ。




